2019年9月1日日曜日

Titans (2016-) Vol. 2: Made in Manhattan 感想

※このシリーズの各巻感想は以下をご覧ください。

New52期Wonder Woman誌Vol. 7(感想はこちら)でそこに登場したDonna Troy(ドナ・トロイ)のことを書いたところ、Twitterでフォロワーさんから「Rebirth期のドナ・トロイの出自はTitansに描かれている」と教えていただきました。

ドナ・トロイについては海外ファンサイトで「設定が曖昧」と書かれているので何から読んだらいいかよく分からないでいたのですが、Rebirth期の設定が分かるということで早速読んでみました。

【基本情報】
Writer: Dan Abnett
Artists: Norm Rapmund, Brett Booth, Minkyu Jung
Cover by: Norm Rapmund, Brett Booth
発行年 2017年

公式サイトはこちら。



Titansは、バットマン(ブルース・ウェイン)やワンダーウーマン(ダイアナ)といった偉大なヒーローたち――の弟子世代にあたる若手ヒーローたちのチームです。本作でTitansに入っているのは以下のようなメンバーになります。
なお、DCコミックス社のヒーローコミックは2011年と2016年に大規模な設定のリセットがありました。このブログでは2011年-2016年の間をNew52期、2016年から現在までをRebirth期と呼んでいます。二回の設定リセットでも実際にはほとんど設定が変化しなかったキャラクターもいますが、大きく変化したキャラクターもいます。

Nightwing (Dick Grayson): かつてはバットマンの初代相棒、ロビンだった。現在はヒーロー、ナイトウィングとして独り立ちしている。

Donna Troy: かつて(2011年の設定リセット以前)はワンダーガールとして、アマゾン族の一員として戦っていた。2016年以降のRebirth期における設定は本作で明らかになる。

Flash (Wally West): 2011年の設定リセット以前は超高速で活動できるフラッシュとして活躍していた。2011年の設定リセットに伴い(?)存在が消えてしまったようである。2016年の設定リセットにより、Rebirth期では存在が復活した。

Garth: かつてはAqualadと名乗り、アトランティスの王、アクアマンの相棒として戦っていた。現在はTitansの一員として戦っている。

Arsenal (Roy Harper): かつてはSpeedyと名乗り、Green Arrowの相棒として戦っていた。現在は独り立ちしTitansの一員として戦っている。

Omen (Lilth Clay): テレパシーを操り、人の心を読んだり人の感情の高ぶりを検知したりすることができるようである。

といったメンバーが活躍する話が収録されていますが、印象的なのはとにかく彼らの仲が良いことです。人数が多いわりに、全員が全員のことを思いやっていて特に警戒もしていない様子です。
そんな中、Flash (Wally West)はみんなの中から存在が一度消えていて、復活した今も彼の抱いている記憶とみんなの抱いている記憶は違っていて――という複雑な事情を抱えています。この本に収録されている話によると、スーパーマンだけは以前の彼のことを知っているようです。
このWally Westの話は、Titansのシリーズを通しての軸になっているのだろうなと思いました。幸せな着地をすることを望みたいです。

さて、ドナ・トロイの出自の話はこの本の終盤に収録されています。以下、ネタバレを含む感想です。話の核心部までネタバレしています。

***ここからネタバレ***


この本の終盤では、
Batman - Nightwing
Auaman - Tempest
Flash (Barry Allen) - Flash (Wally West)
Wonder Woman - Donna Troy

の8人が誘拐されるという事件が起きます。この8人、指導者とその弟子という組み合わせです。どうも犯人は8人を1室に閉じ込めて脱出できないようにすることで精神的に壊し、その破壊エネルギーを何かに利用することを考えている様子です。しかしこの犯人の意図はこの話においてはあまり重要ではありません。重要なのは、1室に閉じ込められて疑心暗鬼に陥った彼らが何を言い出すかです。

アクアマンやフラッシュは、すぐに彼らの弟子と協力しようとします。一方、ワンダーウーマンはドナに対して
"I DO NOT TRUST YOU. I DON'T KNOW WHAT YOU ARE."
「私はあなたを信じない。私はあなたが何者か知らない」
と言い放ちます。これはドナに限らず、こんな状況で周りにいるメンバーが本当に自分の知る相手かどうかわからない、という意味らしいのですが。

確かに誰のことも信用できないにしても、何でそんなことを言われるのか分からずに戸惑うドナ。バットマンはそんな様子に
"FIRST INTELLIGENT THING ANYBODY'S SAID."
「初めて知的な発言が出たな」
というのですが、ワンダーウーマンのキャラクターにしてはドナに冷たすぎませんか、と思いました。こういう時にメンバーを疑って雰囲気を悪くするのはバットマンに任せておけばいいのであって。バットマンは探偵なので疑うのも仕事の一つですから。
ワンダーウーマンは、メンバー間の信頼を高めつつ見るところを見て敵方の人間(もしいれば)を見抜く、といったあたりがキャラクターに合っているような気がします。なにかこの時、いらいらするようなことでもあったのでしょうか。

ともあれ、一同はお互いを疑いつつも協力し合って手掛かりを探っていきます。そんな中、バットマンがドナに生物としての反応がないことを知ります。
当然、ドナは疑われることになりますがここでワンダーウーマンがドナをかばいます。

なぜ、彼女には生物としての反応がないのか。それは彼女が魔法によって土から作られた存在だから――というわけで、「生物としての反応がない」ことがワンダーウーマンには逆に、「彼女が自分の知るドナ・トロイである」ことを証明することになったようです。

この作品でのドナ・トロイは「ワンダーウーマンを攻撃する武器として土から作られた存在」だそうで、この設定自体はNew52期でのドナ・トロイの設定を踏襲しています。New52期ではダイアナの母、ヒッポリタが石像と化したのちに壊れた土から作られたことになっていましたが、たぶんその辺りの設定は変わっていることと思います。

とにかく、ドナ・トロイの出自がこうしてショッキングな形で明らかになり、しかも彼女自身は「孤児だったがダイアナに助けられ、アマゾン族のもとで育てられた」という偽の記憶が与えられていたことが明らかになります。これは彼女が安定した人生を送れるように、そうした記憶をダイアナが与えたようです。

ショックで崩れ落ちるドナに、Titansのチームメンバーはどう対応するのか。若者たちの友情のすがすがしさを感じることのできる作品でした。


それにしても。New52期の「ドナ・トロイはワンダーウーマンを倒すために土から作られた」という設定がRebirth期になっても継続しているとは思いませんでした。この設定を続けるのであれば、ワンダーウーマンがどういう気持ちでドナに接してきたのかを描くエピソードがあると嬉しいのですが。
正直に言いいましてNew52期のワンダーウーマンとドナの関係は、ワンダーウーマンが敵として現れたドナを倒すところまでは良くてもそのあとの対応がうまくいっていたとはいいがたいと思っています(詳しくはこちらの感想をお読みください)。この設定を続けるなら、ワンダーウーマンがドナに偽の記憶を与えるまでの経緯やその時の気持ちについてどこかで描かれることを期待したいです。

……要するに、ワンダーウーマンがドナに対してもう少し優しく接するところを見たいなと思うのでありました。