2019年11月4日月曜日

Titans (2016-) Vol. 3: A Judas Among Us 感想

※このシリーズの各巻感想は以下をご覧ください。

以前読んだTitans Vol. 2(感想はこちら)の次に当たるVol. 3でもなんだかDonna Troy(ドナ・トロイ)が大変なことになっていそうだということで、読んでみました。

【基本情報】
Writer:Dan Abnett
Artists: Brett Booth, V Ken Marion, Kenneth Rocafort, Various
Cover by: Kenneth Rocafort
発行年 2018年

公式サイトはこちら。



前巻の事件の影響で記憶を失ったBumblebee(バンブルビー、カレン・ダンカン)の記憶を取り戻すため、Omen (オーメン、リリス・クレイ)は前巻の敵だったPsimonを訪ねる。彼女は彼からTitansの中に裏切り者が一人いること、巨大な脅威が迫っていることを知らされるのだった。一方、Titansメンバー内での恋愛関係は複雑に絡み合い、またFlash (フラッシュ、ウォーリー・ウェスト)は超スピードにより心臓に悪影響が出始めており、ある決断をするのだったが――。

というのがあらすじです。

何と言っても、「若いっていいな」という気持ちになれる作品でした。この巻でのTitansのメンバーは女性3人(うちバンブルビーは既婚者なので恋愛関係には参加しませんが)、男性4人という組み合わせなので恋模様も盛り上がるというものです。メンバー内であれこれ恋愛関係を深めつつみんなで共通した活動を行うという、大学のサークルの話を読んでいるかのようでした。

と、ゴシップネタを読むようにメンバーの恋愛模様を楽しんでいるとウォーリー・ウェストの体調問題が非常に不穏な雰囲気になってきます。超スピードで動き回るのは心臓に悪影響……というのはこれまで深く考えていませんでしたが、言われてみれば確かに健康に悪そうです。心臓どころか身体の何もかもに悪そうです。

そんな状態だったらしばらくヒーローとしての活動は休んだ方がいいのでは? と思っていたら、前巻の感想の際に書いたようにウォーリー・ウェストはNew52、Rebirthの設定リセットで消えたり再登場したりした影響で周りの人たちにウォーリーの記憶がないようなので
「フラッシュであることをやめたら何もなくなってしまう」
と恐れている様子。
なるほど、設定リセットにまつわる不連続性をこういう風に物語の中で活かすことができるのか――と思いました。

似たようなことはドナ・トロイにも言えて、彼女は前巻でこれまで持っていた自分の記憶がすべて捏造されたものであったと判明したため、
「タイタンズのメンバーとの日々だけが自分が持っている真実」
となってしまっています。このことが終盤の展開で彼女を悩ませることになるのですが、これ以上については以下のネタバレを含む感想で書きます。


 


リリス・クレイが見た「迫りくる脅威」は未来のドナ・トロイでした。ドナは兵器として作られた存在であるため不老不死であり、今後数十年の時をかけてTitansのメンバーが一人ずつ亡くなっていくのを目撃することになります。絶望した彼女は兵器としての自分に立ち返り、宇宙のあらゆる敵を倒して自分が支配しようと目論むのでした――という話になっています。
未来のドナ・トロイの語る話を聞いて一瞬納得しかけたのですが、
「ドナにはTitansのメンバー以外に友達はできないの?」
というのは少し疑問でした。もちろん、昔の話を懐かしく語りあう友達がいなくなるのが寂しいのは分かります。
とはいってもドナは不老不死なので、感性もきっと柔軟なままでしょうし体力だってあるわけで、普通のお年寄りが「若い人とは話が合わないし身体もついていかないしねえ」という話とは少し違うはずです。Titansよりも若い人と友達になることはないのだろうか――と思いましたが。なかったようです。

未来のドナ・トロイは現在のドナ・トロイにTitansにいるような無駄なことはさっさとやめて自分と共に本来の仕事(兵器としての)をするよう迫るのですが、ドナはそれに抵抗します。その抵抗を助けるのは、この巻で描かれてきたTitansの恋愛事情です。果たしてドナを助けるのは誰なのか――というところも、見所になる作品です。