2019年9月4日水曜日

Lois Lane: A Celebration of 75 Years 感想

 Lois Lane: A Celebration of 75 Yearsを読みました。デイリー・プラネット社の敏腕記者にしてSuperman (スーパーマン、クラーク・ケント)の恋人、後に妻となるLois Lane (ロイス・レーン)が活躍する作品を収めた一冊になります。
 
【基本情報】
Writers: Greg Rucka, Grant Morrison, John Byrne, Jerry Siegel, Various
Artists: John Byrne, Frank Quitely, Phil Jimenez, Joe Shuster, Various
発行年 2013年

公式サイトはこちら。



 1938年(!)のAction Comicsから、2010年の作品までが収録されています。まず最初に思ったのは1938年の作品でもそんなに古さは感じないということでした。これはカラー印刷の色遣いがこの頃と1960年代頃でそんなに大きく変わらないということが一つあります。また、日本語の作品の場合戦前と戦後で仮名遣いが変わるので、戦前の作品を読んでいると否応なく昔の作品ということを意識してしまいますが英語の作品の場合そういうことはないのだなと思いました。もっとも、これは筆者が英語の細かい表現を読み取る力がないということの表れかもしれません。作中の英語表現は「最近の人はこんな言い回しはしないよ」というものかもしれないのですが、それを感じ取るだけの力はないもので。

 ロイス・レーンははじめは「スーパーマンには憧れているがクラーク・ケントのことは嫌っている」というスタンスで描かれています。これは何か大事件が起きるとクラークはいなくなってしまうので、彼のことを臆病だとロイスが思っているからです。……納得はできる理由ですね。そんなわけで、彼女の名前をタイトルに冠した雑誌も"Superman's Girlfriend Lois Lane"というものです。あくまでスーパーマンの恋人というポジションでした。
 
 ここからどうやってスーパーマン=クラーク・ケントだと明かされるのかな? と思って読んでいたら、途中で設定が変わったようで1991年の作品ではクラーク・ケントと恋人になっていました。そして二人が結婚するため、彼がロイスにスーパーマンの正体を明かすという展開になっていました。
 
 ロイス・レーンはヒーローの周りの重要人物ではありますがヒーロー本人ではないからか、長い歴史の中でもそれほど大きくキャラクター性が変わっているわけではないのだな――という感じはします。常に危険を顧みず取材をする記者として描かれています。これは1938年の当時から彼女が進歩的な女性として設定されていたということが大きいのかもしれません。
 
 さて、この本の中にはロイス・レーンとバットマンの話、ロイス・レーンとワンダーウーマンの話(ワンダーウーマンは何かとスーパーマンをめぐる恋敵的に描かれがち)などいろいろ収録されていますが、一連のエピソードの導入部しか紹介されていない作品もあり「どうせ収録するならもう少し収録して!」という気持ちになりました。あるストーリーでは戦場を取材しているロイス・レーンが撃たれたところで終わります。もう一話くらい収録して、と思ってしまうのもやむを得ないところではないでしょうか。
 
 筆者が一番好きなのは、この本の最後に収録されているスーパーウーマンの話です。
 ある年のロイスの誕生日、スーパーマンがロイスに渡したプレゼントは一日だけスーパーパワーを得られる薬だった――というもの。一緒に飛んでデートする二人が眩しいです。
 前後のエピソードが分からないのですが、スーパーマンがそんな特別なプレゼントをした理由にはなにやら悲しい経緯がありそうで切ない気持ちになりました。