※このシリーズの各巻感想は以下をご覧ください。
【基本情報】
Writer: Francis Manapul
Artists: Emanuela Lupacchino, Clay Mann, Francis Manapul, Ray McCarthy
Cover by: Francis Manapul
発行年 2017年
公式サイトはこちら。
まず何が驚いたといって、ポイズン・アイビーがどうこうという話の前にNew52期からRebirth期にリランチするにあたってのスーパーマンの変化が語られることでした。
これまで読んだ作品でまとめて語られていなかったのでよく知らなかったのですが、New52期からRebirth期にスーパーマンの設定が大きく変わったのですね。
New52期のスーパーマンはワンダーウーマンと恋人でしたが、その本人はいなくなって、別の世界から妻のLois Lane(ロイス・レーン)と息子のジョン君と共にやってきたスーパーマンがRebirth期のスーパーマンになっているようです。
一般市民からするとスーパーマンが入れ替わっているかどうかは分からないのでしょうが、このRebirth期スーパーマンとバットマン、ワンダーウーマンはこのTrinity Vol. 1が初対面ということになるのだそうです。
そういえばRebirth期のスーパーガール誌(感想はこちら)で、「スーパーマンはいない」とか「スーパーマンが戻ってきた」とか語られていたり、Titans誌(感想はこちら)ではスーパーマンだけが他の人の持っていない記憶があるという話になっていたりしましたが、この辺の事情を反映していたのだなと思いました。
それにしても。Better Together というサブタイトルからして、三人が集まって友情を確認しながら敵と戦う話になるのだろう――と予想していましたが、まずお互いの状況確認から始まるとは、まさかという展開でした。
そんなわけで、物語はバットマンとワンダーウーマンがスーパーマン一家の住む農場を訪れるところから始まります。これはロイスが、スーパーマンはバットマンたちと交流を深めるべきだということで招待したのだそうです。
ということで二人がやってくるのですが、お土産にイノシシ一頭持ってくるワンダーウーマンに大笑いです。誰かを招待した時にイノシシ持ってこられても困る、本当に困る、と思いましたが劇中ではスーパーマン一家はそれほど困っていなかったようです。やはり農場経営をしているとイノシシをさばく道具と技術ぐらいは普通に持っているものなのでしょうか。
この後の展開で、中にジョン君がいる納屋の扉が開かないのでロイス・レーンが車で扉をぶち破るという話も出てきます。時折豪快な行動を見せる女性陣。
そして食事を共にしながら、三人で交流を深めていたはずがなぜか三人の子供時代に行くことになり――というのがあらすじです。
ポイズン・アイビーは事件全体に関わっていることもあり、中盤から登場し始めます。そして彼女の母性が印象的な作品です。
以下、ネタバレを含む感想です。物語の核心部分もネタバレしています。
三人は自分たちの子供時代を訪れていたように見えましたが、実はそれはMongulというスーパーマンの敵が作り上げた夢の世界の中の出来事でした。
Mongul自身も異世界に囚われていたのですが、その異世界の存在には魔力を持った植物が関係していたこともあり、かつてポイズン・アイビーがこの世界を訪れMongulの子供と接し娘のように思っていたというのがこの作品の前段階のエピソードになります。
ポイズン・アイビーはその娘に再会するため、スーパーマンたち三人の力を利用しようと彼らを夢の世界へと送り込みます。しかしそれは、異世界から現実世界に行こうとするMongulの罠なのでした――というのが真相になります。
Poison Ivyの自己認識としては、
「私は『グリーン』と呼ばれる何者かに選ばれた守護者」"I AM A CHOSEN PROTECTOR FOR SOMETHING CALLED GREEN."
なのだそうです。……うーむ。Swamp Thingならこの自称も納得できるのですが、Poison Ivyはそもそもグリーンの守護者なのでしょうか。グリーンとつながっているのは確かですし、植物を守るために様々な行動をとっているのも確かですが、結構しょうもないこともしているような……。
まあ、本人の自称がそうならそうなんでしょう。たぶん。
話としては、スーパーマンたち三人はMongulの異世界に閉じ込められ、Mongulが現実世界へと脱出します。スーパーマンたち三人が現実世界に戻ってくるためのカギとなるのがMongulの子供の存在です。
Mongulの子供はスーパーマンたち三人の子供時代の世界で様々な感情を体験したことが原因で彼らを助けようとするのですが、そもそもこの子供はポイズン・アイビーと接したときに"Love"を教わっています。
ポイズン・アイビーはこの子供のことを娘のように思い、植物の育て方を教えているのですね。命への愛、というある種根源的な愛を教えています。
物語がハッピーエンドに落ち着いたのは、ポイズン・アイビーが母親としての愛情をもってMongulの子供に接していたことが大きいです。
スーパーマンたち三人を異世界に呼ぶ、というMongulの陰謀に騙された格好のポイズン・アイビーは愚かで哀しくはあっても、邪悪ではないと感じさせる作品でした。