2019年9月21日土曜日

Batgirl (2000-2006) Vol. 1-3 感想

 Cassandra Cainがバットガールとして活躍するシリーズのVol. 1 ~ Vol. 3を読みました。このシリーズ、73話まで続いたようなのですが現在電子書籍で買える単行本のVol. 1 ~ Vol. 3は37話まで収録されています。大体半分くらいが収録されていることになりますね。

【基本情報】
Writers: Scott Peterson, Kelley Puckett, Chuck Dixon
Artists: Robert Campanella, Damion Scott, John Lowe, Vince Giarrano, Phil Noto, Various
Cover by: Damion Scott, Robert Campanella
発行年 2016年~2017年(連載されていたのは2000年~2006年)

公式サイトはこちら。

アメリカ政府によってゴッサム市が見捨てられ無法地帯となったNo Man's Land事件(感想はこちら)の時にバットガールのコスチュームを受け継いでバットガールとなったカサンドラ・ケイン (Cassandra Cain)の活躍を描く物語です。

No Man's Land事件ののち、ゴッサム市はアメリカ政府のもとに復帰し、カサンドラは通常の状況でバットガールとして活躍することになります。
彼女の特徴は、世界的に有名な暗殺者、David Cainの娘として育ち、暗殺術を子供のころから鍛えられた。父親に言葉は教えられなかったためうまく話すことができない――というものです。

本シリーズではバットマン(ブルース・ウェイン)に新しい戦い方を教わり、またオラクル(Oracle、バーバラ・ゴードン)にサポートを受けながら日常を過ごすカサンドラの姿が描かれます。

またVol. 2からはスポイラー(Spoiler、ステファニー・ブラウン)も登場し、彼女と共に行動し(時に足を引っ張り)、なにより友達として彼女と過ごしてくれます。
ここでかつてのバットガールのバーバラ、この本のバットガールであるカサンドラ、後にバットガールであるステファニーの三人が協力する展開も出てくるのですが、チーム・バットガールという感じで楽しく読むことができました。
カサンドラは格闘の技術は申し分ないものの、人間らしい暮らし――太陽を浴びるとか、人と穏やかに話すとか――はこれまで不足していたところがありますので、バーバラやステファニーがカサンドラのことを心配していたり思いやったりしている場面を読んでいるだけでほのぼのとした気持ちになることができます。

バーバラのことを「お母さんみたいだ」というカサンドラのシーンは印象的です。カサンドラ自身がバーバラやステファニーの心配や思いやりを理解できていない場面もありますが、それは仕方ないですね。

ステファニー・ブラウンのバットガール誌(感想はこちら)の冒頭で、カサンドラがステファニーにバットガールのコスチュームを渡すとき確かに友達っぽかったのですが、なるほどこれだけの付き合いがあれば友達だなと思いました。


また、この1~3巻でもっとも印象的だったのはLady Shivaとカサンドラのエピソードです。以下、ネタバレを含む感想で書きます。


 

カサンドラの父はデビット・ケインです。カサンドラは彼のもとで育ち、8歳の時に言われるままに人を殺しています。それが嫌でカサンドラは逃げ出しバットマンに救いを求めるのですが、彼女の罪悪感は消えるものではありません。

一方、言葉をしゃべれないはずのカサンドラでしたがある不思議な力を持った男性と出会ったことで拙いながらも言葉を話せるようになります。しかし結果として、彼女の格闘の技術は落ちます。
そんな状況の中、彼女はレディ・シヴァに出会います。彼女はカサンドラの母であり、彼女も素手で人を殺せる暗殺者です。
カサンドラがうまく戦えないのを見た彼女は、ある提案をします。ここですぐに彼女の体を元通りに動かせるようにする代わりに、一年後、互いの命を懸けて殺し合いをするというものです。――カサンドラはその提案に乗りました。

筆者としては、カサンドラがこれまでのように戦えなくなった代わりにバットマンたちの戦い方を学んでいくのだろうなと思っていたのでこの選択には驚きました。また、バットマンもバーバラもカサンドラのこの提案のことは知らないままでしたのでどうなることかと思っていましたが、後にバットマンたちはこの提案を知っていたことが明らかになります。

一年の月日が経ち、シヴァとの決闘の日が近づいてくるとバットマンとバーバラはある論争をします。彼女がシヴァと決闘をするのを止めるべきではないかというバーバラに対し、彼女はシヴァを使って自殺しようとしていると答えるバットマン。彼女は罪悪感から死を望んでおり、シヴァと対決することでその死への思いから解放されるのではないかとバットマンは考えています。
しかし、シヴァとの対決ではなくバットマンがもっと説得すべきだというバーバラ。ところがここでバットマンの身に大変なことが起こり、バットマンによる説得という話はなくなってしまいます。

結局カサンドラはシヴァと対決するのですが、決闘はどのように決着するのか。また、そもそもシヴァは何を思って命を懸けた決闘なんてことを言いだしたのか。こういった点が見どころになっているエピソードです。