2020年2月19日水曜日

Titans (2016-) Vol. 4: Titans Apart 感想

※このシリーズの各巻感想は以下をご覧ください。

TitansはNightwing(ナイトウィング)、Donna Troy (ドナ・トロイ)など、DCコミックスの世界で看板ヒーローとなっているバットマン、ワンダーウーマンたちの弟子にあたる若手ヒーローチームの活躍を描く作品です。
2016年から始まったRebirth期Titans誌はこれまでVol. 2、Vol. 3と読んできましたがVol. 4はタイトル、表紙ともに不穏ということで読んでみました。

【基本情報】
Writer: Dan Abnett
Artists: Andrew Hennessy, Paul Pelletier, Minkyu Jung
Cover by: Andrew Hennessy, Paul Pelletier
発行年 2018年

公式サイトはこちら。




前巻の戦いで未来のDonna Troy (ドナ・トロイ)の姿であるTroiaを退けたTitans。しかしバットマン、ワンダーウーマン、スーパーマンなどのヒーローからなるJustice Leagueは、Titansの判断がまずかった結果世界を危険にさらしたとしてTitansの解散を通告するとともにドナをJustice Leagueの保護下に置くと通達する。当然反発するメンバーだったが、リーダーであるDick Grayson(ディック・グレイソン)は解散を受け入れる。
一人一人になったメンバーたちはそれぞれの活動をはじめ、Arsenalとして活躍するRoy Harper(ロイ・ハーパー)はある危機の前兆に気づくのだったが彼の話を信じる人は彼のそばにはいないのだった――というのがあらすじです。


ともかく、Justice Leagueの好感度が大暴落する一冊です。
バットマンの若手との接し方があまりうまくないのはバットファミリーを描いた作品を読んで何となく察していましたが、この作品ではワンダーウーマンのやり方もいただけません。……といいますか、New52期のWonder Woman誌で「元々ワンダーウーマンを倒すための兵器だった」という設定のドナ・トロイが登場してから(感想はこちら)、ワンダーウーマンのドナ・トロイへの対応は一貫して冷たい気がします。

Titans Vol. 3で未来のドナ・トロイであるトロイアが襲来した時にワンダーウーマンが助けに来ていたら、まだTitansに解散を告げに来ても納得のしようがあったのではないかと思いますし、あるいはVol. 2でもうちょっとドナに優しい対応をしていたらまた話は変わってきたように思うのですが……。

ドナ・トロイを含め、Titansの他のメンバーも事件が終わった後にやってきたJustice Leagueに解散を命じられてもそれは納得できないだろうなと思いました。

さて、ドナ・トロイはJustice Leagueが基地にしている衛星上のWatch Towerというところに保護されるわけですが――うーん、まあ、軟禁ですね。自由に地上に行けるようにもなっていませんし。ワンダーウーマンはそれなりにドナのことを気にしている様子を見せるものの、忙しくてあまり相手ができません。……何か、仕事に追われて子育てに向き合えていなかったことを自覚した親が慌てて子供とちゃんと接しようとするもののやっぱり忙しくてうまくできない、という風景に見えました。

そうこうするうちに、地上ではある陰謀が進行しそれに最初に気づいたのがArsenal (ロイ・ハーパー)だった……という流れになるのですが、ここでロイが過去にアルコール依存症だったということが効いてきます。
Titansのメンバーですら、「ロイはいつかまた何かの中毒になってしまうのではないか」と恐れているので、ロイの様子がおかしいと「また何か変なものを摂取したのでは……」と思ってしまうという問題があります。そばにいて一緒に調査していればそんなことを疑うことはなくても、少し話を聞いただけだと疑ってしまう、という現象が発生してしまっていました。
そばにいて、ゆっくり話すというのは信頼関係の維持のためにはやはり大切なことです。ロイには指導者がいない(かつての指導者だったGreen Arrow(オリバー・クィーン)とは疎遠)なので、本当に一人になってしまっているのもつらいですね。

やはりJustice LeagueがTitansを解散させた後、メンバーたちのフォローをきちんとすべきだったのでは……唐突に介入してきて後は放置していただけなのでは……それって無責任なのでは……という疑念がぬぐえません。
話の主眼としては、師匠世代を乗り越えていこうとするTitans、ということだと思うのでJustice Leagueが今回ある意味敵役になっていたのだろうなと思うのですが、Justice Leagueにも少し格好いい見せ場を作ってあげてほしかったなと思います。本当にこの巻ではいいところがありません。その対比効果もあってか、Titansのメンバーにはとても格好いい見せ場が用意されていますのでTitansファンにはお勧めの作品です。

以下、ネタバレを含む感想です。話の核心までネタバレしています。



話の終盤に至って、ドナ・トロイはバットマンを振り切りピンチに陥っているロイ・ハーパーのもとに駆け付けます。その場面、ロイの危機を颯爽と救うドナが本当に格好いいです。といっても、ドナの一撃だけでピンチが過ぎ去るわけではなくその後も敵と戦うために背中合わせになる二人。信頼している二人が背中を預けるのは燃えますね!

そして、二人が死をも覚悟した時にやってくるTitansメンバー、NightwingとFlash (Wally West)。ベタといえばベタですが、最高のタイミングで現れてくれました。
……ちょっと残念なのは、他三人のTitansメンバーが現れなかったことですが。ここは全員集合してほしかったです。

敵側も敵側で、友情と野望のはざまに揺れながらも最後は友情が勝利するという熱い展開になっています。
Titans Vol. 2でジャスティスリーグのFlash (Barry Allen)がTitansのメンバーを見ながら「友情っていいよね」と言っているセリフがあるのですが(なお、この言葉を投げかけられたバットマンは他のことに夢中で真面目に聞いていませんでした。バットマンは仲間の言葉をちゃんと聞いてあげましょう)、プロフェッショナルの集団といった感じのあるJustice Leagueとは違い、友情で結びついているのがTitansというチームの魅力なのかなと思います。
ということで今まで一緒に頑張ってきたGarthとOmen、Bumblebeeにも見せ場が欲しかったところですが、これはなかったです。残念。

なお、ストーリーはこのあとJustice League: No Justice(感想はこちら)へと続いていくようなのですが、Titansのメンバーが作中でクローズアップされたというわけではありません。No Justiceによって起きた何らかの変化がTitansという作品にも影響を与えるということかなと思います。