2019年8月18日日曜日

Wonder Woman (2011-2016) Vol. 7 War-torn 感想

※このシリーズの各巻感想は以下です。



New52期Wonder Woman誌のVol. 7を読みました。Vol. 6までのストーリー(感想はこちら)を踏襲しながらも雰囲気はがらっと変わり、現実の厳しさを感じるお話になっていました。

【基本情報】
Writer: Meredith Finch
Artists: Richard Friend, David Finch, Various, Jonathan Glapion, Matt Banning
Cover by: Richard Friend, David Finch
発行年 2016年

公式サイトはこちら。



アマゾンの女王として、ジャスティスリーグのワンダーウーマンとして、オリュンポスの戦神として、そしてダイアナとして――。ダイアナは様々な肩書を持つようになった。一つ一つのことに割ける時間は当然短くなる。また、セミッシラに変革をもたらそうとするダイアナのやり方はアマゾン族の一部から反発を受けるようになっていった。ダイアナがパラダイス島に住まわせることにしたアマゾン族の兄弟(かつて捨てられたアマゾン族の息子たち)の存在に不満は集まり、土から生み出されたドナ・トロイ (Donna Troy)をダイアナに代わる新しい女王として受け入ける一派がアマゾン族に生まれるのだった――というのがあらすじです。

とにかくダイアナが忙しすぎる話です。忙しすぎていろいろなことがおろそかになり、あちこちから問題が噴出するという、誰にでも起きそうで読んでいて身につまされる話です。
ダイアナは非常に能力が高いですし、人を思いやる心も強いので仕事を断ることができないタイプなのかなと思いました。

以下、ネタバレを含む感想です。

***ここからネタバレ***

前巻までの流れで、ダイアナの母、アマゾン族の女王ヒポリタは石になってしまい元に戻っていません。結果的にダイアナがアマゾンの女王を継ぐことになりました。
さらに前巻までの流れで、ダイアナはオリュンポスの戦神の地位を継いだためかつての戦神アレスがペット(?)にしていた怪獣たちがパラダイス島にやってきて暴れるようになります。
さらに、ジャスティスリーグもダイアナを頼りにします。

これは、無理です。一人の人がこなすには限界があります。スーパーマンをはじめとするジャスティスリーグのメンバーもダイアナの異変に気付いています。
アマゾン族から見れば、これまではヒッポリタという女王がいたからこそダイアナが外の世界に行っても許容できていたところですが、女王になったにもかかわらずほとんど島に帰ってこないダイアナには不満もたまるでしょう。

しかも、ダイアナは変革を急ぎすぎます。ダイアナは外の世界をいろいろ見ているので柔軟な思考も可能でしょうが、生まれてからずっとセミッシラ島にいて外の世界の人とはほぼ交流したことのないアマゾン族の多くの人々にとっては、ダイアナが起こそうとする変革(=アマゾン族の兄弟を島に受け入れること)はそれがどれだけ人道的なものであっても、なかなか受け入れることはできないでしょう。

結果として、ドナ・トロイを中心としてセミッシラに悲劇が巻き起こることになりますが、これは起きるべくして起きた悲劇という気がします。ダイアナはもうちょっと様々なことのペースを落として、スローダウンしましょう。


さて、この巻で非常に印象が強いのがドナ・トロイの存在です。
この作品でのドナ・トロイはダイアナを憎むあるアマゾンが魔法で命を吹き込んだ土から生まれています。この土ですが、かつての女王ヒッポリタがもとになっている土ですのでそのうちこの設定がどこかで効いてくるのかもしれません。

ドナ・トロイは憎しみと恐怖を植え付けられ、女王の座をダイアナから奪い、そして負ける――という展開になるのですが、彼女の設定としてこれで良かったのでしょうか。彼女の出てくる話をほとんど読んでいないので分かりませんが、結構な人気キャラクターのような気がしますしこの設定には不満な人もいたのでは――と思います。

とはいっても、彼女の出番がこの巻で終わったわけではなさそうなので今後も活躍してくれるのかもしれません。次回以降の展開に期待したいです。
今のままですとダイアナが忙しすぎるので、ダイアナの右腕的に働く存在になるといいなと思うのですが。どうなるでしょう。