2019年8月20日火曜日

Wonder Woman (2011-2016) Vol. 8 A Twist of Fate 感想

※このシリーズの各巻感想は以下です。



Vol. 7に引き続き、New52期Wonder Woman誌のVol. 8を読みました。Vol. 7で描かれた「ワンダーウーマン(ダイアナ)さんいろんな肩書が増えて忙しすぎ問題」は一定の解決を見たことになっているようで(根本的に解決はしていない気がするのですが……)、この巻では3つほどの別のエピソードを描いていきます。


【基本情報】
Writer: Meredith Finch
Artists: Jonathan Glapion, David Finch, Various, Ian Churchill
Cover by: Jonathan Glapion, David Finch
発行年 2016年

公式サイトはこちら。



序盤~中盤ではDonna Troy (ドナ・トロイ)の自分探しの話と戦神であるワンダーウーマンを殺そうとするAegeusの話が並行して描かれます。二つの事件が解決した後、最終盤でチーターが登場する話が描かれますが、これは短く終わります。

前巻からの続きということもあって、ドナ・トロイのエピソードが印象的でした。憎しみと恐れから生み出されたと自分で思い込んでいるドナをダイアナはオリュンポスの牢獄に入れます。これは罰としてではなく、自分を見つめなおしてほしいからなのでした――って、それなら何らかの医療機関に入れた方が良くないですか。
アマゾン族のもとにドナを置いておくわけにはいかないのは分かりますが、それこそジャスティスリーグに相談してどこかの世界のしかるべき医療機関に入れてもらうとか、手はありそうに思うのですが。ともあれ、ドナは一人でじっと自分の存在について考え続けます。これ、すでに結構な罰になっている気がします。

ダイアナはたまにドナのもとを訪れては、彼女に自分のことをよく考えてほしいと伝えるのですが、次第にドナは「ダイアナの求めるような存在にはなれない」という答えにたどり着いていきます。この気持ちは分かります。
前の巻でダイアナの考えた変革がアマゾン族の拒否反応を引き起こしたこともそうなのですが、ダイアナは自分の周りの人間も自分と同じくらいの能力を持つと無意識に考えている節があるように思います。こういう優秀な人が上司になると困るよね、と思いました。

そんな状況の中、余計なことをすることにかけては人後に落ちない争いの神エリス(Strife)がドナに牢獄の鍵を与え、ドナはそこからロンドンに移動します。
この巻の中でドナ・トロイの本来の姿がわかるのですが、彼女は本来Fate (運命)を司る存在として生まれてきたのだそうです。……すみません、具体的に何をする存在なのかはよく分かりませんでした。

以下、ネタバレを含む感想です。

***ここからネタバレ***

ドナがロンドンであれこれさまよったりロンドンの少女と交流を持つところは大変楽しく読めました。しかし、肝心のドナが本来の自分(呪いによって隠されているのでない自分)を取り戻すところがですね……。
多くは書きませんが、そこはドナの力でどうにかしてもらいたかったです。自分探しモードの時のドナが

"... AND ONCE MORE, I'VE ALLOWED MYSELF TO BE USED AS A PAWN IN SOMEONE ELSE'S GAME."

「……それにまた、誰かのゲームの駒になってしまった」
というようなことを言っているので尚更です。

Aegeusの話では、戦神のダイアナを殺すべく裏で糸を引いているのは平和の神Eireneで、彼女はダイアナが戦神としてなすべきことをしていないので平和にも悪影響が起きているといいます。
ダイアナが戦神になってからは戦争が少なくなっているようなのですが、同時に人間が本来持つ闘争心といったものも薄れてしまっている模様です。これはこれで、人間社会にとっては悪影響ともなります――と、なかなか考えさせられる展開になっているのですがこの問題についてもうやむやになってしまっているような気がします。

ダイアナの戦神としての役割についてはもしかすると次の巻で語られるかもしれないのでそこに期待したいです。