2019年6月23日日曜日

Wonder Woman (2011-2016) Vol. 1 Blood 感想

※このシリーズの各巻感想は以下です。



New52期ワンダーウーマンの1巻を読んでみました。ギリシア神話を踏まえた、サスペンスフルな話になっています。

【基本情報】
Writer: Brian Azzarello
Artists: Tony Akins, Cliff Chiang
Cover by: Cliff Chiang
発行年 2013年

公式サイトはこちら。



ワンダーウーマン(ダイアナ)の部屋に、Zolaという女性が転がり込んでくる。実は彼女はギリシア神話の大神、ゼウスの子供を身ごもっているのだった。ゼウスの正妻、ヘラは彼女に嫉妬しあの手この手で彼女を襲おうとする。ダイアナはゾラを守るため彼女と共に故郷へと帰るのだったが、そこで自分の出生の真実を知るのだった――というのがあらすじです。

ギリシア神話を多少読んだことのある人なら知っている通りの「よくある」話になっています。なにしろギリシア神話の本を読むと体感で7割くらいは「ゼウスが浮気してヘラが嫉妬して相手の女性やその子供が大変なことになる話」ですから。

ということで、ギリシア神話の二次創作を読んでいる気持ちで楽しむことができます。ダイアナとゾラには、伝令神ヘルメスが協力してくれます。一方、ヘラの憎しみを代行するのはStrifeという女神です。Strifeという神様は知らないな、オリジナルキャラクターかなと思っていたら海外ファンサイトによると争いの女神エリスのことのようです。これは納得でした。

終盤には海神ポセイドンや冥府の神ハデスも現れ、元凶のヘラもその場にやってくるものですから神様たちで話し合ってうまく落としどころを探ってくれ――と思って読んでいたらそれらしい終わり方にはなったものの、ラストで思いもよらない展開を迎えて2巻へと続いていきます。

ギリシア神話のファンには特におすすめの作品だと思います。

以下、ネタバレを含む感想です。


 
話の本筋はゾラをヘラから守る話なのですが、この巻で一番大事なエピソードはワンダーウーマンの出生の秘密が明らかになるところだと思います。

この話でのダイアナは、母であるアマゾンの女王Hippolyta (ヒポリタ)が土をこねて神に願ったところ、命が与えられて生まれた子である――ということになっていました。
しかし実際は、ヒポリタが大神ゼウスとの間にもうけた子がダイアナでした。ヒポリタもまたヘラの嫉妬を恐れ、ゼウスの子であるという事実を隠すために「土をこねて~」という伝説を作り出したということになっています。

事実を知ったダイアナはショックを受け、母と故郷を捨てて出ていきます。入れ替わるように事実を知ったヘラが訪れ、ヒポリタと他のアマゾン族に呪いをかけていきます。
ダイアナは後悔して再び故郷を訪れるのですが、その時には母も故郷も変わり果てた姿になっていたという展開になります。


ヘラの恐ろしさを分かりやすく示すとともに、ダイアナのタイミングの悪さを示すエピソードでもあると思います。
ショックを受けたダイアナがいったん故郷を離れるのは自然なのですが、ちょうどそこにヘラが来てしまうというのがいかにも間が悪いです。せめてダイアナがいるときにヘラが来ていればまだ何とかなったかもしれないのに――と感じさせます。運が回っていないときはこうしていろいろなことが後手後手に回るのだなあ、と思いました。