ちなみにこの作品ですが、2020年1月ごろに単行本が再販予定のようです。Amazonではすでに予約可能になっています。筆者は6話分をバラで買いましたが、単行本化を待つのもありだと思います。
【基本情報】
Writer: Greg Rucka
Penciller: Rick Burchett
Inker: Terry Beatty, Rick Burchett
Colorist: Rick Burchett
Cover by: Rick Burchett
発行年 2000年
公式サイトはこちら。
No Man's Land(感想はこちら)で重傷を負ったハントレス(ヘレナ・ベルティネリ)だったが、回復し元の生活に復帰していた。そんな中、ハントレスのクロスボウと同タイプの矢を使った連続殺人事件が起きる。ハントレスは警察やバットファミリーに追われる中、探偵クエスチョンと共に真実を探り自らの家族に関わる事実を発見するのだった――というのがあらすじです。
サブタイトルの"Cry for the Blood"は、「家族が殺されたならば復讐しなければならない」というイタリアマフィアの掟を指す言葉として劇中で使用されています。
ハントレスはイタリア系のゴッサム市マフィア一家に生まれましたが、8歳の時に自分以外の家族が全員殺されその後はイタリアの親族のもとで育っています。大人になってから家族の復讐のために再びゴッサム市に戻ってきたという設定です。
この話の以前に、家族の復讐はすでに果たされたということになっています。というわけで今回の連続殺人は彼女の家族のことには直接関係ないと思われるのですが、しかしそこには意外な真実が――という展開です。
探偵クエスチョン(Vic Sage)は、警察からもバットファミリーからも追い詰められたハントレスに救いの手を差し伸べるようにして登場します。そしてゴッサムを共に脱出し、彼はハントレスを友人のRichard Dragonのところに置いて生き方について考えさせます。
"52" (感想はこちら)でどん底のレニー・モントーヤに救いの手を差し伸べた時もそうでしたが、どうしてクエスチョンはこうも困っている人のもとにいいタイミングで現れてうまく人生を軌道修正させることができるのでしょう。探偵だからでしょうか、こんな友達が欲しいです。
さて、ハントレスのことを犯人かもしれないと疑っているバットファミリーの面々ですが、
・バットマン:犯人かもしれないと思っている
・ナイトウィング:犯人ではないだろうと思っている
・ロビン:犯人ではないだろうと思っている
・オラクル:犯人であっておかしくないと思っている
……と、メンバー間に微妙な温度差が存在するのが楽しかったです。バットマンとロビンはともかく、ナイトウィングとオラクルは完全にハントレスに対する好感度の差が犯人かどうかの推測に影響しています。
まあ、一般的に言って嫌いな人間は犯人だと思いたいですし好きな人間は犯人だと思いたくないですよね。
とはいっても、そこはこれまで数々の犯罪を捜査してきたバットファミリーですので、最終的にはオラクルが集めた情報から真実が明らかになってきます。
以下、ネタバレを含む感想です。
***ここからネタバレ***
最初にヘレナの家族の事件にまつわる真相を読んだとき、"Batgirl and the Birds of Prey" (感想はこちら)で描かれたエピソードと比べてなんてえげつないんだろう、と思いました。しかし考えようによっては、"Batgirl and the Birds of Prey"のほうが数段ひどいかもしれません。
いずれにしてもヘレナの家族の過去はヘレナが「そういうことがあった」として受けいれて、彼女自身は前に進むしかないのですが。
それにしても、本作の中で最大のジレンマに陥ったヘレナがとった解決策は「そうするしかないだろうな」と思わせるものの、倫理的にみて褒められたものではないのも確かです。彼女が実質的にヒーローとして活動しているにも関わらず、バットマンたちから要注意人物扱いされている理由もわかるような気がしました。