2019年6月5日水曜日

Nightwing/Huntress 感想

 Huntress (ハントレス、ヘレナ・ベルティネリ)が登場する話を読んでいると、いかにも仲が良さそうにNightwing (ナイトウィング、ディック・グレイソン)が絡んでくることがあります。
果たしてこの二人の関係はどうなっているのか――と思っていたら、ストレートなタイトルの作品があったので読んでみました。全4話のミニシリーズです。

【基本情報】
Writer: Devin Grayson
Penciller: Greg Land
Inker: Bill Sienkiewicz
Colorist: Noelle Giddings
Cover by Greg Land
発行年 1998年

Amazonのページはこちら。


お話としては、
バットマンがしばらくゴッサム市を空けるため、市の治安はナイトウィングに託されていた。そんな中、殺人事件が起こりナイトウィングはハントレスと共にその犯人を追う。状況からみてマフィアの一員が犯人と思われ、ハントレスはその容疑者が犯人だと強く主張するのだったが――というのがあらすじです。

バットマンは登場しないのですが、
・元々はバットマンの相棒だったナイトウィングのバットマンからの自立
・ハントレスはバットファミリーに入れないのか
といったことが何度も語られるため、バットマンの存在感は強いです。主な登場人物はナイトウィングとハントレス、それにバーバラ・ゴードン(オラクル、元々はバットガールとしてバットマンたちと共に戦っていた)なのですが会話の端々にバットマンのことが出てくるため

「君たちバットマンのことを語らずにいられないの……?」
という気持ちになる作品でした。

以下、ネタバレを含む感想です。

***ここからネタバレ***
 
"lonely"という言葉がテーマになっている作品でした。真犯人が殺人を犯したのも、寂しさを感じたから。ナイトウィングとハントレスが共に行動したのも、ハントレスがバットファミリーに入りたがっているのも、寂しさを感じているから。という風にまとめられています。

なんとなく、ヒーローは孤独なものだと思っていたのでナイトウィングやハントレスが孤独感を感じてそれを何とかしたいと思っているのは意外でしたが、そういうものかもしれません。そして寂しさのあまり、二人で一夜を共に過ごしたりします。もっともナイトウィングは別にハントレスのことを恋人とは思っていないようで(この辺のアメリカの文化が良く分かりません、最初から身体だけの関係と約束していたならともかく)、しばらくするとハントレスも

 "WHAT HAPPENED--IT DOESN'T MEAN WE'RE IN A RELATIONSHIP."

「あの夜のことは――私たちがそういう関係だということにはならないわ」
と言い始めたりします。もっとぶつかっていってもいいんじゃないかなと思いますが。

そんな二人の様子に気づき、ナイトウィングと共にバットファミリーとして戦うバーバラ・ゴードンは彼に

 "LOOK, I GET IT THAT SHE REMINDS YOU OF -- I GET IT THAT SHE FEELS FAMILIAR, HONEY. (中略) YOU GREW UP THINKING BRUCE WAS NORMAL. I RESPECT HIM MUCH AS YOU DO, BUT HE'S NOT-- HE'S NOT A COMFORTABLE MAN, YOU HAVE TO SEE IT!"


「ねえ、彼女(ハントレスのこと)はあなたにとって……懐かしい気持ちになるのは分かるけど。(中略)あなたはブルースが普通だと思って育ったんでしょう。私も彼のことは尊敬しているけど、でも彼は――彼は、一緒にいて落ち着く人じゃない、それは分からないと!」
と注意します。

つまり、ハントレスはバットマンに似ているのでナイトウィングがハントレスに惹かれるのは分かるけれど、そもそもバットマンは一緒にいて気持ちのいい人ではないと言っています。……バットマンもハントレスも、二人がこんな会話をしていると知ったらどんな顔をするやら。


ハントレスとナイトウィングが登場する話ではしばしば、バーバラを加えた三角関係が描写されます。この話もそうです。オラクルとして活動している頃のバーバラはナイトウィングからのアプローチを断っているので、彼の恋愛関係にバーバラがどうこう言うことには「放っておいてあげたら?」という気持ちになります。一方、ハントレスとバーバラ、どちらにも愛想のいいナイトウィングにも「調子いいなあ」と思います。……要するに、ハントレスは誰か別の人を探した方がいいと思います。


ちなみにこの三角関係ですが、2017年発売のBatgirls and the Birds of Prey Vol.2 (感想はこちら)ではハントレスがバーバラに

"IT'S CLEAR HE LOVES YOU."

「彼があなたを愛しているのは明らか」
と言っていて、一応の決着がついている模様です。この巻でナイトウィングが病気になったとき、看病に行くのはハントレスなんですけどね(※バーバラのお父さんも同時期に病気になって入院しているのでバーバラはそちらの看病です)。