2019年7月1日月曜日

Wonder Woman (2011-2016) Vol. 4 War 感想

※このシリーズの各巻感想は以下です。


New52期Wonder Woman誌のVol. 3 (感想はこちら)に引き続き、Vol. 4を読みました。Vol. 3までで話の構図はほぼ固まり、主要登場人物たちの立場もはっきりしてきました。

【基本情報】
Writer: Brian Azzarello
Artists: Tony Akins, Goran Sudzuka, Cliff Chiang, Dan Green
Cover by: Cliff Chiang
発行年 2014年

公式サイトはこちら。


Vol.3までに固まった各陣営について簡単にまとめておきます。

・アポロ&アルテミス陣営
オリュンポスの大神であったゼウスが姿を消したのち、ゼウスの正妻である女神ヘラをうまく追い出して現在オリュンポスのトップに君臨している。しかし、First Born、Last Bornによってその地位を追われるのではないかと警戒している。


・First Born&カサンドラ(ゼウスの娘の半神)陣営
ゼウスとヘラの間に最初に生まれた子でありながら、ゼウスの地位を脅かすとして殺されそうになったFirst Bornはずっと封印されていたが、カサンドラの手助けもありよみがえる。オリュンポスの大神となるべくアポロ、Last Bornを敵視している。

・ワンダーウーマン他の皆さんの陣営
ワンダーウーマン(ダイアナ)がこれまでずっと保護していたゾラのもとに生まれたLast Born (ゼウスとゾラの間の子。ゼウスの最後の子) を守ることを目的とし、他の陣営からやってくる敵を追い払い続けている。

ギリシア神話の主要な神々の中でまだ登場していないのはゼウスとアテナですが、ゼウスはともかくアテナは登場しないのかな……と思います。武芸の神にして知恵の神、ワンダーウーマンと少しキャラクターがかぶっている気がするので仕方ないかもしれません。

さて。
物語としては上記の三陣営が三つ巴になって戦いを繰り広げる(ワンダーウーマンたちはゾラとその子供のZekeを守って逃げ回る)のですが、印象的なのはワンダーウーマン陣営の多様性です。
ワンダーウーマンとゾラを中心にして、そもそもは敵だった女神ヘラ、半神のLennox、オリオン(※このオリオンはギリシア神話のオリオンではなく、New Genesis という世界の人らしいです)、戦神Warとこれまでの流れで集まったバラエティーに富んだメンバーになっています。
Warがこのチームを評して

"THEY SHOULD ALL BE AT EACH OTHER'S THROATS, YET THEY'RE NOT. THAT'S THE SIGN OF A STRONG LEADER."
「みんな互いに争っていておかしくないのに、そうしていない。これは強いリーダーがいることの証だ」
と言っているのが印象的でした。女神ヘラがいつの間にかワンダーウーマンのチームに加わっていた時のヘラとゾラの喧嘩ぶりは記憶に新しいですが、いつの間にかお互いの存在を認めるようになっています。こうしてチームをまとめあげることができるのがワンダーウーマンの一番の強味なのかな、と思いました。

以下、ネタバレを含む感想です。この巻の最後の展開までネタバレしています。

***ここからネタバレ*** 

この巻で一番のトピックは戦神Warが死ぬことです。思えば幼少期のワンダーウーマンを鍛え、ゾラを守る展開になってからも肝心のところでワンダーウーマンを守ってくれたWarでした。

この作品では一貫してWarと呼ばれている彼ですが、戦神である以上名前はアレスなのだろうと思います。アレスと言えば碌なイメージがないのでずっとWar呼びだったのでしょうか。

厳しくも優しいおじいちゃんというイメージのアレス像はギリシア神話においてもなかなか見ることがありません。アレスはギリシア神話の中で、戦争の血なまぐさい部分を担当しています。戦争の勝者に与えられる栄光はアテナの担当ですので、アレスはあまり良い印象の話がありません。あまり賢さを感じさせる神話もありませんし、優しさを感じさせることもありませんし……。というわけで、アレスの描き方として新鮮でした。Warの死が今後どういう展開を生み出すのか期待したいです。