2019年4月10日水曜日

Batwoman (2011-2015) Vol. 1 Hydrology 感想

※このシリーズの各巻感想は以下です。

Batwoman (2011-2015) Vol. 1 Hydrologyを読みました。New52世界でのバットウーマンの第一巻です。とはいっても、実質的には"Batwoman by Greg Rucka and J. H. Williams III" (感想はこちら)の続きなので、まずそちらをお読みになることをお薦めします。

このバットウーマンシリーズですが、まず何といっても絵が素晴らしいです。凝ったコマ割りで展開されるバットウーマンの戦い。キャラクターのテーマカラーが赤であるということもあり、鮮やかな色合いで描かれます。
筆者は漫画を読むとき、物語を追いかけるほうに夢中になってあまり絵の良さに気が回らないタイプなのですが、それでもこの作品の絵は素晴らしいと感じました。

【基本情報】
Writers: W. Haden Blackman, J.H. Williams III
Artist: J.H. Williams III
Cover: J.H. Williams III
発行年 2012年

公式サイトはこちら。


はじめにざっとバットウーマン(ケイト・ケイン)についておさらいをし、その後本筋の物語に入っていく構成です。この冒頭で語られるケイトの情報は、

・バットマンとは別にバットウーマンとしてヴィジランテ活動をしている
・その身体能力は極めて高い

です。バットマンが新しく現れたヴィジランテの様子を観察しその正体を分析していく、という形でケイトのことを語っていく展開が楽しいです。


本筋の事件では、子供たちを誘拐する幽霊のような謎の存在が現れ、ケイトはその事件の解決に奔走します。ゴッサム市警でその事件を担当するのはMaggie Sawyer (マギー・ソーヤー)です。"Gotham Central" (感想はこちら)や"Batwoman by Greg Rucka and J. H. Williams III"ではゴッサム市警重犯罪課の管理職だった彼女ですが、このNew52世界では一刑事になっている模様です。
Captainとしてゴッサム市警重犯罪課の猛者たちを指揮する猛獣使いみたいなマギーが好きだっただけに少し残念ですが、より事件に深く関わっていくようなので今後の展開を見守ることにします。

以下、ネタバレを含む感想です。重大なネタバレもしています。

***ここからネタバレ***

日本の怪談ようなテイストの話だなと思いました。
子供たちを誘拐していた幽霊の正体はかつて自分の子供を亡くして自殺したお母さんだったというのは、「えらいお坊さんがお祓いしたら幽霊が現れることはなくなりました」というオチをつけたら日本昔話にもなりそうです。

もっともこれは日本昔話ではなくバットウーマンなので、バットウーマンが割と物理的に除霊――というか、霊を追い払います。単なる怪談話ではなく、この幽霊を利用していた存在がいるようなのでこれはVol. 2以降の展開に期待ですね。
作品の見どころとしては、幽霊と対峙するたびにケイトが自分のトラウマを見つめなければならなくなることが挙げられると思います。
幼少期に母と妹が殺され、妹は生きていたのに助けることができず、犯罪者集団の黒幕として現れた(そして死んだ)というのは、ケイトにとっては拭い去ることのできない強烈なトラウマであることが何度も描かれます。
こんな経験をすれば誰しもトラウマを抱えて当然ですが、ヴィジランテとして戦うケイトの強さと不安定さを同時に表しているような気がしました。


もう一つ気になることとしては、ケイトの従妹、Betteへのケイトの対応がとても辛辣なことです。Bette Kaneはヒーローとしてバットウーマンの相棒になることを希望するのですが、ケイトは「まだそれだけの実力がないから」と認めず、彼女のコスチュームを勝手に焼いています。いくらなんでもそれはちょっと。

他のことも重なり、ケイトにまともに扱われていないと感じたベッテは一人で活動し、戦いの末に意識不明の重態となり、バットウーマンの正体を調べていたDEO (Department of Extranormal Operations)にバットウーマンの正体を教える手がかりを与えることになります。

……これはもう、仕方がない。ケイトの自業自得としか思えないです。軍隊で鍛えられたケイトですから、軍隊風の鍛え方になってしまうのかもしれないですが、もう少し従妹には優しく接してもらいたいものです。