2019年4月21日日曜日

Birds of Prey (1999-2009) Vol. 2感想

※このシリーズの各巻感想はこちらをご覧ください。


1999年~2009年まで連載されていたBirds of PreyのVol. 1に引き続き(感想はこちら)、Vol. 2を読みました。相変わらず、Barbara Gordon(バーバラ・ゴードン、 オラクル)とDinah Lance (ダイナ・ランス、ブラックキャナリー)のコンビで戦っています。Helena Bertinelli (ヘレナ・ベルティネリ、ハントレス)はいつBirds of Preyに加入したのでしょう。

【基本情報】
Writers: Chuck Dixon
Artists: Various, Drew Geraci, Greg Land
Cover by: Greg Land, Brian Stelfreeze

発行年2016年(※単行本の発行年です)

公式サイトはこちら。




前巻に引き続いての短編集で、ダイナがバーバラの指示であちこちに出向いては活躍する姿が描かれます。Birds of Preyのライバルチーム的なレイブンという女性チームも登場しますが、タイムスリップしていたりしてなんだか良く分からない……といいますか、肝心のBirds of Preyとの絡みが少なくてもったいない……という感じになっています。マンモスや海龍との絡みは格好いいのですが。

ダイナはこのVol. 2においても、オラクルの正体もわからず、会ったこともないという状態です。このシリーズはこのままいくんでしょうか。特殊能力のキャナリークライを使えないという話も出てきましたので、そのうちダイナ自身についても何か話が展開するのかもしれません。

この巻で一番好きなのはバーバラとDick Grayson(ディック・グレイソン、ナイトウィング)のエピソードでした。Killing Joke事件(感想はこちら)でバーバラが下半身麻痺になるまでは恋人関係だったようですが、その後は少しぎくしゃくしていた模様です。

Vol. 1でもそうでしたが、Killing Joke事件後下半身を動かせなくなったバーバラの思いについてくどくどと語ることはなく、短編エピソードで丁寧に描いていくというこの構成は大変すばらしいと思います。

以下、ネタバレを含む感想です。

***ここからネタバレ*** 

バーバラとディックの話は、若い二人の感情が繊細に表現されている良いエピソードだと思いました。
バーバラは精神的に非常に強い人です。下半身が動かなくなったことも、乗り越えたと思っていますし、新しい生活を楽しんでいます。
バーバラの車いすには後ろの人が押すためのハンドルもついていません。自分の力でどこでも行けるので、押してもらう必要がないからです。非常時に備えてハンドルをつけておいたら? と筆者は思いますが、バーバラはそう考えるタイプではないらしいです。
むしろディックのほうが、そんなバーバラについていけず戸惑っていて、結果的に関係がぎくしゃくしていたというのが良く分かります。

撃たれたことでバーバラが失ったものは何か、もうできなくなってしまったことは何か、とディックは尋ねます。バーバラから「何かを失った」といってもらえたほうが、ディックとしては自分の心が落ち着くのかもしれません。
――この時のディックの気持ちは解釈が難しいです。
ディックはバーバラが無理していると思っているのか、何か喪失感を持っていないとおかしいと思っているのか、自分に手助けできるようなことを何か言ってほしいと思っているのか。
ディック・グレイソンという人物の性格をよく知らないと判断が難しいですね。

バーバラは「昔できていたけれど今はできない、そしてできないことを残念に思っている」ことをようやく思いつき、ディックはそれを実現します。この時の二人の様子がとても楽しそうでいいので、ぜひ読んでいただきたいです。

大きな悲劇に直面した時、その当事者はそれをどうにか乗り越えて先に進んでいくけれども、周りの人のほうがなかなか乗り越えられず当事者との間に距離ができてしまう、というのはリアルだなと思いました。