2019年4月15日月曜日

Batwoman (2011-2015) Vol. 3 World's Finest 感想

※このシリーズの各巻感想は以下です。

Vol. 2に続き、Vol. 3を読みました。

【基本情報】
Writers: W. Haden Blackman, J.H. Williams III
Artists: Trevor McCarthy, J.H. Williams, III
Cover: J.H. Williams III
発行年 2014年

公式サイトはこちら。



Vol. 1から続く、児童大量誘拐事件の決着がつく話です。この巻のポイントは、なんといってもワンダーウーマンが登場して共闘することだと思います。
Vol. 2で明らかになった児童誘拐事件の黒幕の目的は、児童を誘拐して得た血で巨大な怪物を復活させることでした。この黒幕の組織名がMedusa(メデューサ)でありギリシア神話っぽいところもありました。
そこで、ワンダーウーマンの登場となります。ワンダーウーマンもギリシア神話の神の娘で半神という設定ですから、この登場は納得がいきます。
ギリシア神話ファンにはおなじみの怪物が登場し、ワンダーウーマンとバットウーマンがこの怪物たちをどう倒すのか、ワクワクしながら読むことができました。神話通りだったり、違っていたりと楽しいです。

以下、ネタバレを含む感想です。

***ここからネタバレ***
 
筆者にとっての一番の見どころはケイト・ケインが過去を回想するシーンがあったことでした。

ケイトの過去は大まかに言って、

小学生のころ、母と双子の妹と三人で外出した時にテロリストに誘拐される。ケイトは救出されるがほかの二人は死亡する。

父に憧れ、軍人を目指す。軍の学校で優秀な成績を修めるが、レズビアンであることが密告され退学。人生の目標を見失う。

ゴッサム市でパーティーと女性に溺れる日々を過ごす。レニー・モントーヤと出会うが喧嘩別れし、強盗に襲われそうになるが撃退する。ちょうど駆け付けたバットマンの姿を見て、ヴィジランテとしてゴッサム市を守ることを目標とする。

バットウーマンとして活躍する。

という流れになります。
ゴッサム市でパーティーと女性に現を抜かしていたのは人生の目標を見失ったから、とずっと思っていました。しかしこの巻に描かれていたことからすると、母と妹を失った事件があってから、ケイトはずっと愛を求めてさまよっていた(だから身近にいる父に強く憧れたし、軍隊でもすぐに恋人ができた)ということになります。
これまで筆者の中でうすぼんやりとしていたケイト・ケインの人物像がこの描写のおかげで急にピントが合って見えてきたような気がしました。

愛を求めるといっても、母と妹の話はそう簡単に他人にできるものでもないし、恋人をとっかえひっかえしていても中々ケイトの求めていたものが得られなかったであろうことは想像に難くありません。そう考えると、Vol. 2でマギー・ソーヤーに昔の写真を見せながら母と妹の話をしたのは「ケイトがここまで心を許した相手」であることを示していたのだなと思います。

この巻ではほかに、Vol. 2まででいろいろ大変な目に遭ったベッテ・ケイン(ケイトの従妹)が回復してHawkfireとして活躍する姿も見ることができます。
Vol. 1からひたすら可哀そうだったWeeping Womanの物語にもきっちりと決着をつけますし、ワンダーウーマンというDCの看板キャラクターを出しながらも、Vol. 1からのストーリーや各キャラクターにきちんとそれぞれの結末を与えた作品だと思います。