2019年4月6日土曜日

Batgirl and the Birds of Prey (2016-) Vol. 3: Full Circle 感想

※このシリーズの各巻感想は以下です。

Vol. 2の続きです。

【基本情報】
Writers: Shawna Benson, Julie Benson
Artists: Marcio Takara, Roge Antonio
Cover: Yanick Paquette
発行年 2018年

公式サイトはこちら



この巻では、
1. ヘレナ(ハントレス)とダイナ(ブラックキャナリー)が課外授業のためゴッサム市中心部を離れ、バーバラ・ゴードン(バットガール)が一人で活動する話
2. ゴッサム市の男性たちが謎の感染症で倒れ、女性ヒーローが集結して事態を解決する話
3. 莫大なエネルギーを生み出す新型バッテリーを使用して気象を操る敵と対峙する話
4. Calculatorが再び現れ、オラクルの正体を知るために残酷な手を打つ話

が収録されています。1、3は短編、2、4は中編です。


まず筆者として第一に取り上げなければいけないのは2番目の話、集結する女性ヒーローの中にレニー・モントーヤがいます! この話にレニーが登場しているとは知らなかったので完全に不意打ちでした。
お話としては、ゴッサム市の男性たちが次々と倒れたのでゴッサム市の女性ヒーロー(ハーレイ・クインなど、普段はヒーローたちと敵対している人も含む)が協力する――という展開です。当然バットウーマンも登場します。
そんなところにレニーがまたバットウーマンに捜査情報を流し(この点、もう突っ込むのが無意味という気がしてきました。)、ヒーローたちに重要な情報を与えるとともにレニーも敵と戦い、さらにはゴッサム市警の女性警官たちを率いてヒーローをサポートします。

考えてみるとこのRebirth世界では"Gotham Central" (感想はこちら)でゴッサム市警のキャプテンを勤めていたマギー・ソーヤー (Maggie Sawyer)がメトロポリス市警にお勤めのようですから、ゴッサム市警でそこそこ実力のある女性刑事はレニーしかいないのかもしれません。Gotham Centralの頃には女性刑事としてMacDonald刑事もいましたが、Rebirth世界では見ませんし……。

それにしても当たり前みたいにゴッサム市警の女性警官たちの指揮をとったり、敵と戦ったりしているレニーに感涙です。バットウーマンとの信頼関係もDetective Comics (2016-)で描かれているのと変わらないようで、本当にRebirth世界は刑事としてのレニーに優しい世界だと思います。
この話、ゴッサム市で活躍する女性ヒーローはほとんど登場していると思いますのでファンの人気も高そうです。


さて、次に取り上げたいのは1番目の話、バーバラ・ゴードン(バットガール)が一晩、一人でゴッサム市を守る話です。ここで出てくるバーバラの活躍が、バットファミリーをピンチから救うことだったり、杖をついたお年寄りに腕を貸して一緒に歩くことだったりします。これは完全に筆者の好みなのですが、こうした小さなことをしているヒーローを見るとなんだか安心します。そんな中、一人ではちょっと解決できそうにない厄介な事態に遭遇した時バーバラが呼ぶのが、ポイズン・アイビーとキャットウーマンです。
Vol. 2でのことがあるので二人も快く協力してくれます――バーバラ、リーダーとしての素質がかなりあるような気がします。

そして、事態を解決した後でアイビーとキャットウーマンが立ち去るときのセリフがとてもかわいいです。

"WELL, SELINA AND I ARE GONNA BINGE-WATCH SOME TV AT HER PLACE, WANNA JOIN?"
"I PROMISED IVY WE COULD WATH THAT EARTH PLANET SHOW AGAIN."


「ねえ、セリーナ(キャットウーマンのこと)と私はセリーナの家でTVシリーズを一気に見るつもりなんだけど一緒に来る?」
「アイビーに『アース・プラネット』をまた観れるって約束したのよ」

……可愛すぎます。バットガールはこの誘いを断るのですが、ぜひついて行ってもらいたかったです。アイビーは『アース・プラネット』(「プラネットアース」のことでしょうね)をとても真面目に見て、キャットウーマンはお菓子でも片手にながら見しているんだろうな……と想像が膨らみます。

レニー・モントーヤの件も含め、Birds of Preyレギュラーメンバーの3人以外の描写も楽しめた巻でした。 


以下、4番目の話についてネタバレを含む感想です。

***ここからネタバレ*** 


4番目の話は打って変わって深刻でした。

Vol. 2でオラクルの正体を知りたがりGusを追い詰めるも、別の事件に巻き込まれたことでBirds of Preyに協力を仰ぎ、Gusから手を引くことを認めたCalculatorですが、彼の話は終わっていませんでした。

彼の裏の職業はビルのセキュリティ情報など犯罪者たちに必要な情報を売ることだったので、バーバラは彼のシステムをハッキングしてどんな情報が売られているかをつかみ、先回りして犯罪を止めることにします。しかしそのことが彼に気づかれ、「オラクルが活動している」という確信を彼に与えます。
そこで彼はオラクルの正体を知るためにBirds of Prey、さらにはGusに近づき――というストーリーです。

オラクルの正体を知るためにCalculatorは手段を選びません。結果、Gusは殺され、バーバラは「オラクルなんて存在を生み出さなければ良かった」と後悔に苛まれることになります。また、ヘレナやダイナもバーバラのハッキングのことは知らされていなかったのでチームの信頼関係も崩れます。さらに、CalculatorはVol. 2で登場したBlackbirdを自分の配下に収め、Vol. 1で収監されたヘレナのお母さんを利用してBirds of Preyに迫ります。

このあたりの展開は、三巻分の集大成であると同時に各キャラクターの深みをより増していると感じました。チームの信頼関係が崩れる描写はもうちょっと長く描写してもいいのではと思いましたが、ヒーローものとしての爽快感を出すためにはあまり長くできないのかもしれません。


このVol. 3の終わりは一見さわやかなエンディングなのですがハッピーエンドかと問われると必ずしもそうでもなく、Birds of Preyの3人に苦い記憶を残した物語であることは間違いないと思います。それでも明日に向かって進む、という3人の姿が印象的な作品でした。