2019年1月14日月曜日

Batwoman by Greg Rucka and J. H. Williams III

 ケイト・ケイン (Batwoman)とレニー・モントーヤのなれそめが書いてあるというBatwoman by Greg Rucka and J. H. Williams IIIを読みました。もともとはDetective Comicsで2009年ごろに連載されていたバットウーマン関係のエピソードなどをまとめたものになります。ということで、基本的にはNew52での設定リセット以前の作品です。New52でのBatwomanシリーズと表紙の絵柄が似ているので少し分かりにくいですが。

【基本情報】
Writer: Greg Rucka
Artists: Scott Kolins, Jock, J.H. Williams, III
Cover: J.H. Williams, III

発行年 2017年

公式サイトはこちら。



確かにケイトとレニーのなれそめは描かれていますが、レニーの出番はそれほど多くありません。やはり主人公はバットウーマンであり、ケイトがバットウーマンになるまでの経緯や強力な敵との戦いぶりを楽しむことができる作品です。この本を読むと、バットウーマンについて必要な情報は一通り押さえられそうな気がします。
ただちょっと感想が書きにくい、というのは「……ここで終わり? もうちょっと続くんじゃないの?」と思わせるところで終わるエピソードが多いからです。序章的な作品のように感じます。
特に、強力な敵の正体が衝撃的だっただけに、どうしてそんなことになってしまったのかその事情を知りたいと思ったのですがそのあたりのことは語られませんでした。残念。もしかするとNew52のBatwoman誌の話に本当に続いていくのでしょうか。


ケイト・ケインというキャラクターは子供のころに母と双子の妹を亡くし、軍人になろうとしたもののレズビアンであることが軍の規範に反していたためなれず、人生の目的を失って遊びに明け暮れていた、というバックグラウンドを持つキャラクターです。その後暴漢に襲われそうになったものの撃退し、そこに登場したバットマンの姿を見て自らもヒーローとして戦うことを人生の目標にしていきます。

人生の迷走期の享楽的な暮らしぶりと、いざ目標が決まった時のストイックさの対比が印象的です。ケイトは目標さえあればいくらでも努力できる代わりに、目標がない時期でもなんとなく無難に日々を過ごしていくということができないタイプに見えます。その不安定さはキャラクターとして魅力的です。

お金持ち(お父さんの再婚相手が大金持ち)で女性にとてももてるため、人生の迷走期にもお金欲しさに危険なバイトにはまるようなことはなく、愛情欲しさに変な人に捕まえられることもなく迷走できています。安全な環境で迷えるのはいいですね。
しかしその分、人生から逃げ続けることができるというところもあって、なかなか難しいものだなと感じさせられました。


以下、ネタバレを含む感想です。主にケイトの女性関係について。

***ここからネタバレ***

この話の中のケイトはレニーにかなり未練を残しています。話としては"52"(感想はこちら)の後の話なので、一度レニーと付き合った後別れ、10年の後に再会して和解している時期のはずなのですが。ケイトから連絡を取って会える状態ではなさそうです。ケイン家の財力を駆使すればレニーの居場所は見つけられそうな気もしますが、レニーもこの頃は探偵のはずですからそんな簡単に尻尾は掴ませないのかもしれません。
レニーとのなれそめはケイトのナンパでした。この時のケイトはどう見ても「関わり合いになってはいけない人」という雰囲気ですので良くレニーは付き合う気になったなと思いました。
しかしそちらよりも、別れ方の方が印象的でした。描写から見て、朝に喧嘩をした後レニーは家を出てそのまま帰らず、電話にも出ないという対応を取って別れたようです。……うん、ケイトが傷つくのは当然のような気がします。せめて電話には出ましょう。
もっとも、ケイトの言ったことは相当ひどいことなので別れること自体は仕方がないと思います。
話の中でケイトは今度はマギー・ソーヤー(ゴッサム市警の警部)といい雰囲気になりますが、彼女はかつてゴッサム市警刑事だったレニーの元上司にあたります。……元恋人の元上司と付き合うと人間関係がややこしくなりそうなので避ける、みたいなことはケイトは考えないタイプなのでしょうね。心の赴くままに恋愛を楽しむタイプなんだろうと思います。その姿勢はおそらく、心で決めた目標がないと日々を過ごすことができないという姿勢ともつながっているように感じました。