2019年7月31日水曜日

Birds of Prey (2011-2014) Vol. 1-5 感想

 New52期のBirds of Preyは単行本(TPB)が5冊出版されています。Birds of Preyは昔から人気のあるチームだったのだろうと思いますが、New52という大規模リランチに合わせて経路を変えてみたかったのだろうなと思わせる作品でした。ただ、その挑戦がうまくいっているかというとあまり成功していないのではないかなというのが正直な感想です。

【基本情報】
Writer: Duane Swierczynski, Gail Simone, James T Tynion IV, Christy Marx

Artists: Javier Pina, Jesús Saíz, Travel Foreman, Jeff Huet, Vicente Cifuentes, Romano Molenaar, Admira Wijayadi, Daniel Sampere, Juan Jose Ryp, Jonathan Glapion, Vicente Cifuentes, Miguel A Sepulveda, Daniel Sampere, Scott McDaniel, Oclair Albert, Marc Deering, Jordi Tarragona, Robson Rocha

Cover by: Jesús Saíz, Travel Foreman, Romano Molenaar, Emanuela Lupacchino, Jorge Molina
発行年 2012-2015年

公式サイトはこちら (Vol. 1)。



Black Canary (ブラックキャナリー、ダイナ・ランス)がリーダーとなって新しくチームBirds of Preyを立ち上げます。そのメンバーは、ブラックキャナリーとBatgirl (バットガール、バーバラ・ゴードン)のほかに、

・Starling (Ev):ペンギンへの潜入捜査時にダイナと出会う。ダイナに信頼され友人となり、今回チームに誘われた。格闘・銃撃に優れている。

・Poison Ivy:毒物、薬品の扱いのプロフェッショナルとしてダイナにスカウトされた。チームの一員として自己犠牲的な働きを見せる。

・Katana:その戦闘能力に期待してスカウトされた。横浜からわざわざアメリカに来る。死んだ夫の魂が宿っている(と信じている)日本刀"Soultaker"で戦う。メンタル面が不安定だと他のメンバーには思われている。敵を切り殺すことへのハードルが低いため、ダイナとは衝突する。


というものです。かなりばらばらのメンバーなのでぎくしゃくした感じでスタートします。そのぎくしゃく感がユーモアにつながっているかというとそうではなく、リアルに気まずい感じを想起させて読んでいていたたまれなくなることがあります。

また、この時期のダイナは夫のKurt Lanceを殺したという疑いがかかっているらしく、「Birds of Preyのリーダーになっている場合なのか……?」という疑念を読者に抱かせます。活動している間に夫殺しの真相にたどり着くので結果的には間違っていなかったということにはなるのですけれど。

なお、Vol. 5の巻末に収録してあるイベント"Future's End"のエピソードはBatgirl Vol. 5 (感想はこちら)の"Future's End"とリンクしていますので、合わせて読むのがお勧めです。

以下、ネタバレを含む感想です。重要なネタバレもしています。

***ここからネタバレ***

裏切りが多すぎます。

ダイナとバーバラの他の3人のメンバーの名前を上で挙げていますが、3人とも途中でチームから離れていきます。ホームタウン(横浜)でやることがあるKatanaさんはいいとして、他の2人は裏切りです。

百歩譲ってPoison Ivyも良しとしましょう。チームのためにかなり身体を張って頑張っていましたが、彼女の元々の信念を考えれば植物がらみのことでチームを裏切るのはやむを得ないかもしれません。もう少し葛藤してほしかったとは思うのですが。
(なお、このPoison IvyをフォローするかのようなエピソードがBatgirl Vol. 5 (感想はこちら)に収録されています。)

問題はStarlingです。最初から「ダイナの友達で信頼できるメンバーです」という顔をして登場しつつも、チームメンバーに隠れてアマンダ・ウォラーに連絡をとっている描写はあるのでいずれダイナとは対立するのだろうなとは思っていました。アマンダ・ウォラーはダイナの夫の死の真相を知っているので、その真相が明らかになる過程でStarlingが絡んでくるのだろうと予想していました。

ところが実際に裏切ったときにはアマンダ・ウォラーもダイナの夫も何の関係もなく、突然登場したヴィランのMr. Freezeに味方をしてしまいました。その後行方が分からなくなります。

StarlingはこのBirds of Preyが初登場のキャラクターなので、Poison Ivyのように「元々こういう信念のキャラクターだから……」と思えるような手掛かりが一切ないのですよね。突然「実はMr. Freezeには借りがある」と言われても読者としては「そうなの」としか反応のしようがないわけで……。
意外性はありましたが、納得できる展開ではありませんでした。

しかもStarlingが離脱してしばらくしてからダイナとアマンダ・ウォラーが対決するのですが、そこでStarlingへの言及は一切ありません。彼女は何のためにアマンダ・ウォラーに情報を伝えていたのでしょうか……。せっかく登場した新キャラクター、しかも序盤から中盤までかなり活躍したキャラクターを使い捨てにしているなと思いました。もったいないです。


なお、New52期後半のBatgirlシリーズVol. 1 (感想はこちら)で語られる「バーバラとダイナが仲たがいした」というエピソードはこのBirds of Preyのものでした。