2019年1月16日水曜日

Detective Comics (2016-) Vol. 2: The Victim Syndicate 感想

※Rebirth世界のDetective Comics各巻の感想はこちらをご覧ください。


Renee Montoyaが出ているということで、Detective Comics Vol. 2を読んでみました。Vol. 1では見開き1ページのみの登場でしたが、今回はだいぶ登場シーンが増えています。

【基本情報】
Writers: Marguerite Bennett, James T Tynion IV
Artists: Ben Oliver, Alvaro Martinez, Eddy Barrows
Cover by: Jason Fabok
発行年 2017年

公式サイトはこちら。



Vol. 1 (感想はこちら)で起きた悲劇の後、ゴッサム市の人々はバットマンたちを恐れるようになっていた。警官が殺された後に大書される"NO MORE BAT (※BATは実際にはバットマーク)"の落書き。やがて犯人たちがバットファミリーの前に姿を現し――というのがあらすじです。

バットマンの存在は果たして人々のためになっているのかどうか、というのが問われる話です。これはゴッサム市の人々のためという意味でもあり、バットファミリーの人々のためという意味でもあります。
この点についてはネタバレを含むので後述します。


レニーは冒頭で事件のことを知らせにバットウーマンを呼び出し、その後は警備担当として敵役と少し戦った後に人々を避難させたりしていました。この物語の時点では警察に所属しているようですし、パートナーはHarvey Bullockのようですから、かなり昔の設定に戻っていると思います。"Gotham Central" (感想はこちら)の時点で、「以前はHarvey Bullockがパートナーだったが現在は違う」という設定でしたから、それ以前の設定を踏襲していることになりますね。

冒頭、バットウーマンとの会話が好きです。

 "WHY DID YOU CALL ME, NOT HIM?"
"THE SYMBOL'S IN YOUR COLOR, ISN'T IT? MAYBE IT'S NOT ABOUT HIM, MAYBE IT'S ABOUT YOU."
"MAYBE."
"OR MAYBE I ENDED OUR CONVERASATION TOO QUICK TE OTHER NIGHT, AND I'VE BEEN REGRETTING IT."


「どうして私を呼んだの、彼(=バットマン)じゃなくて」
「このシンボルはあなたの色でしょう? もしかしたらこれは彼のことじゃなくてあなたのことかもしれない」
「もしかしたらね」
「あるいは、この前の夜の話を短く切り上げたから後悔しているのかも」


……なんだ、Vol. 1でバットウーマンの愚痴をそんなに聞かずにさっさと帰ったのを気にしてるんだ……というのが良くわかる会話ですね。それにしても、この二人、どういう関係という設定なんでしょうか。
・一度付き合ったことがある
・現在は別れている
・レニーはケイトがバットウーマンだと知っている
・レニーは刑事を続けている(一度辞めてまた戻ったのかも)

というのがこれまでのところ確定していることですが。別れた後再会してその時ケイト=バットウーマンだと知ったのか……でもレニーは刑事を続けているので"52"(感想はこちら)の時のようなことはなかったのかもしれず……と考えると、よく分かりませんのでどこかでRebirth世界での二人の関係を整理したエピソードが出ることを望みます。

以下、ネタバレを含む感想です。

***ここからネタバレ***

バットマンの存在は、結局のところ有益なものなのか有害なものなのか。
というのが問われるエピソードでした。
確かにバットマンによりゴッサム市の犯罪者たちが倒されもするのですが、バットマンに惹かれてやってくる犯罪者たちもいますし、バットマンの戦いの巻き添えになって傷つく被害者もいます。今回の事件でも警官が何人も死んでいます。果たしてバットマンの存在は本当に有益なものなのか。

さらに、Vol. 1での悲劇を踏まえてスポイラーが問いかけるのは、
「バットファミリーのメンバーにとって、バットファミリーにいるのは本当にいいことなのか?」
という問いです。

もしバットファミリーが解散したら――彼女は言います。

 "MAYBE CASSANDRA COULD GET FOSTER PARENTS WHO HELP HER LEARN HOW TO SPEAK PROPERLY, INSTEAD OF HOW BEST TO THROW A BATARANG."


「カサンドラは養父母が見つかって、バタラングの投げ方の代わりにちゃんとした話し方を教えてもらえるかもしれない」

さらに、クレイフェイスは怪物にならないように治療できるかもしれない、バットウーマンは警察学校に行けるかもしれない――と続きます。

確かにな、と思いました。バットファミリーになるよりも好ましい未来がそこには存在するのかもしれません。特に、未成年(だと思われる)のカサンドラ・ケインについては、彼女を救済するべきはバットファミリーではなくて福祉だろうという気はします。義務教育に相当する教育はちゃんと受けられているのでしょうか。
仮に本人がバットファミリーとして戦うことを望んだとしても、将来のことを考えるとまずはきちんと教育を受けさせるのが周りの大人の務めでは……と考えてしまいました。

余談ですが、スポイラーがこの主張をしている時のカサンドラ・ケインがいいです。言葉を流暢に喋れない分、不安そうな表情を見せたりスポイラーのケープを握ったりしていてとても可愛いです。


それはともかく。

結局何が悪いかと言えばゴッサムの治安が悪いのがいけないのであり、それを解決するためにはどうすればいいかというと――バットマンというコンテンツを続けることを特に考えなくていいならば――、
アーカム・アサイラムの警備の強化がまず第一かと思います。犯罪者を入れても入れても勝手に出てくるのはどう考えてもおかしいです。バットマンの技術力のすべてをアーカム・アサイラムの警備強化に注ぎ込んたらもう少し事態がましになるかもしれません。
あとは、ゴッサム市警にいる腐敗した警官の排除でしょうか。そんな感じでコツコツやっていって、果たしてゴッサム市の治安は良くなるでしょうか――ねえ。


ちなみに、このVol. 2の2冊後になるDetctive Comics Vol. 4 (感想はこちら)ではザターナが出てくるエピソードの後にスポイラーが一人で活動しているエピソードが収録されています。Vol. 4を読んだ当時はこのエピソードの意味がよく分からなかったのですが、Vol. 2を踏まえるとよくわかります。彼女は彼女なりのやり方でゴッサムの人々を守ろうとしているのですね。