2019年1月27日日曜日

Swamp Thing #49-#50 感想

Swamp Thing #49, #50を読みました。ザターナにとって重大なことが起きる話です。

【基本情報】
Writer: Alan Moore
Pencillers: Stan Woch, Stephen Bissette, Rick Veitch
Inker: Alfredo Alcala, Tom Mandrake, John Totleben
Cover: Stephen Bissette

発行年 1986年

Amazonのページはこちら。筆者は#49-#50の2話だけをComixologyで購入しましたが、Amazonではこの話を含めた8話分が掲載されたBook Fourを買うことになるようです。


原始の影、闇と言った存在が召喚されてくるので、それに対抗するためスワンプシング、デッドマン、ファントムストレンジャーらが現場に向かい、コンスタンティンはそれをサポートするべくザターナら魔術師を集める――という話です。

原始の闇の正体、というか、どういう概念なのかというのはピンときませんでしたが(前後の話を読んでいないからかもしれません)、一羽の鳥がその予兆を運んでくるという演出はうまいなと思いました。
別にスプラッターな場面やグロテスクな場面が描かれているわけではないのですが、全体的な印象としては悪夢のようです(賞賛しています)。
具体的に何が怖いとか、恐ろしいとかいったことではなく、何か得体のしれないものがそこにいるというような漠然とした不安を感じる作品です。

以下、ネタバレを含む感想です。主にザターナについて。重要なネタバレをしていますのでご注意を。

***ここからネタバレ***

ザターナのお父さんが死ぬ話です。

コンスタンティンが集めた魔術師たちと一緒に、ザターナもお父さんも魔力を使ってスワンプシングたちの戦いをサポートするのですが(サポートになっていたかは不明)、その行為を闇に気づかれ、闇から攻撃を受けます。ザターナがそのターゲットになった時、ザターナのお父さんが身代わりになって死にます。

……これは辛い。

しかも、コンスタンティンに誘われたときにお父さんは一度断っています。ザターナが参加するというのでお父さんも参加することにしたという経緯があり、これは二重にザターナのせいです。
この作品中ではお父さんを失ったザターナの嘆きがそれほど長く描かれるわけではないのですが、この後のザターナには通奏低音のようにずっとその嘆きが響いている気がします。

たとえば、Seven Soldiers: Zatanna (感想はこちら)でザターナはお父さんを見たと錯覚します。その時のモノローグが、

"FOR A MOMENT, JUST A MOMENT, I REALLY BELIVED HE'D COME BACK AND THIS WAS MY BIG REWARD FOR EVERYTHING I'D BEEN THROUGH."


「ほんの一瞬、一瞬だけ、私は本当に彼(=お父さん)が帰ってきたと、そしてこれは今まで私がしてきたことへの大きなご褒美だと信じてしまいました」
というものです。ザターナ、お父さんがいなくなってから本当にしんどかったんだね……という気持ちになります。

なお、このSeven Soldiers: Zatannaはザターナが大失敗して自信を失う話です。今読み返してみると大失敗する時の様子がこのSwamp Thing #49-#50の状況と非常に似ています。これはおそらく、わざわざそういう設定にしているのだろうと思います。ザターナを突き落とすために一番効くシチュエーションはこうだという発想から来ているのでしょう。

あるいは、現在連載中のJustice League Dark (2018-) #3 (感想はこちら)で、敵に「お前の父親を死んだ後もわざわざ蘇らせて拷問してやったぞ、ウケケ」みたいなことを言われたとき、ザターナはひどく悲痛な表情を見せます。
言われていることがひどいので、お父さんが仮に病死であったとしても辛い表情にはなりそうですが、「ザターナをかばうためにお父さんは死んだ」ことを念頭に置くと一層悲しく見えるものです。

Detective Comics VOL. 4: Deus Ex Machinaの感想 (感想はこちら)で「ティーンエイジャーの頃と比較して今のザターナには影がある」といったことを書きましたが、そうなることにも納得できるエピソードでした。

そして、このお父さんが死んだ時のシチュエーションはNew52の設定リセットを越え、Rebirth世界になっても引き継がれていると明示されているのが恐ろしいところです。
現に、Justice League Dark (2018-) #7(感想はこちら)では、死後のザターラが同じく死後のSargon the Sorcererにこんなことを言っています。

"I BELIEVE I TOLD YOU ONCE, MY FRIEND, THAT IF YOU ARE TO DIE, DIE LIKE A SORCERER..."


「前に言ったはずだ、もし死にそうだというなら魔術師として死ねと……」

これは、このSwamp Thing #50でザターラがSargonに言っていたこのセリフを踏襲しています。

"SARGON, YOU ARE UPSETTING MY DAUGHTER. FOR THE HONOR OF OUR PROFESSION, BE SILENT AND DIE LIKE A SORCERER."


「サーゴン、君は私の娘を動揺させている。我々の職業の名誉のために、静かにして魔術師らしく死んでくれ」

……お父さん、娘可愛さのあまりSargonさんへの当たりがきつくなっていません?

現在連載中のJustice League Darkそのうちザターナがこの件で辛いことになりそうで心配です。