2019年1月5日土曜日

Identity Crisis 感想 -DCサスペンス劇場-

 ザターナがキーパーソンになっているという、Identity Crisisを読みました。「○○クライシス」というタイトルの作品はDCから何作も出ていて、どれも重い作品らしいという情報をネットから得ていたので敬遠していたのですが、とにかく読んでみました。

【基本情報】
Writer: Brad Meltzer
Inkers: Rags Morales, Michael Bair
Penciller: Rags Morales

発行年 2006年

公式サイトはこちら。



Elongated man (Ralph Dibny)の妻が殺されたのを皮切りに、ヒーローたちの大切な家族が次々と襲われていく連続殺人を扱った作品です。(事件が起きる)〇分前、〇分前……とカウントダウンしていく演出や、次々に送り届けられる脅迫状がスリルを高めます。

真犯人は全然予想できていなかったので衝撃を受けました。見事などんでん返しで、サスペンスとして素晴らしいと思います。この作品中で被害者になるキャラクターやその家族に思い入れが強いと読んでいてかなり辛いと思いますが、真犯人の驚きがすべてを吹き飛ばすとも思います。それだけの爆発力があります。

また、見込み捜査ではなく地道な捜査こそが真実にたどり着く近道だよなと言う感慨を持てる作品でもあります。捜査は足です。

意外な展開に驚かされるのが好きな人、サスペンス好きの人におすすめの作品です。

以下、ネタバレを含む感想です。真犯人の名前は書きませんが、話の重要なポイントはネタバレしています。

***ここからネタバレ***

殺人事件の捜査の過程で、ザターナを含むJustice leagueのメンバーがヴィラン(悪役)にmind wipe (洗脳)を施しヒーローたちの素性を忘れさせ、さらにロボトミー手術的にヴィランの悪い部分を取り去ったことが問題になり、それが事態を混迷に導く話です。

ただ、最後まで読むとこの事件に関してはmind wipeの話は必ずしも本質ではないんですよね。あくまでも真犯人の問題であって……。

ということもあって、ザターナの影はとても薄いです。キーパーソンなのに。mind wipe を行ったのはザターナなのに。彼女自身の気持ちや意見や葛藤が表に出ることがあまりなく、この作品ではどちらかと言うと洗脳ができる便利な装置という役回りになっています。
この作品の続きに当たる、Justice League of America #115-119, Crisis of Conscience (感想はこちら)のシリーズの方がザターナについての描写は多そうです。
ザターナの活躍を楽しむというよりは、スリルと謎を味わうというスタンスの方が楽しめる作品だと思います。

それにしても、この作品で描かれたElongated Manの妻の死が"52" (感想はこちら)でのElongated Manの悲嘆に繋がっていくのかと考えると、犯人は罪なことをしたと思わざるを得ません。