筆者はこの一連の話が収録されているJLA (1997-2006) Vol. 9というTPB(単行本)を購入しましたが、一話ずつ購入した方が安価かもしれません。単行本の方は#107-#125まで19話収録されていますので、全部読むなら単行本の方がお得です。
【基本情報】
Writers: Allan Heinberg, Geoff Johns
Inkers: Mark Farmer
Penciller: Chris Batista
Colorists: Mark Farmer, David Baron, Rags Morales
Cover Color by: David Baron
発行年 2005年
公式サイトはこちら (#115)。
Identity Crisisの中で明らかになった、
・Justice League of Americaの一部メンバーはヒーローたちとその家族の身を守るため、犯罪者たちがヒーローたちの個人情報を手に入れるとその記憶をザターナの魔法により抹消していた (mind-wipeと呼ばれる)
・一部の犯罪者には、ザターナの魔法により善人化するような処置も施した(=魔法を使用したロボトミー手術)
・バットマンにそのことを知られそうになり、バットマンの記憶も一部消した
という問題を正面から取り上げたエピソードです。ここでやっと、思い悩むザターナの姿が見られます。
どうもこの前段に当たるどこかのエピソードでワンダーウーマンはリーグから脱退しているらしく、この話でもリーグを辞める人が出現し、Justice League of America自体の存在する意味が揺らぐエピソードでもあります。
このエピソード、歯車が悪い方に悪い方に噛み合って転がっていってしまった感が強く、何かの集まりが壊れるときはこういうものだよなという感想を持ちました。
話全体としては辛いものの、ザターナの気持ちが描かれているという面でザターナファンにはおすすめです。
以下、ネタバレを含む感想です。主にザターナに関して。
***ここからネタバレ***
mind-wipeの実行をしたのがザターナで、しかもそれは彼女がLeagueの新人時代に始まったことであり、投票で決めたことでもあったというのが彼女にとって辛いですね。事実上断れなかったでしょうし、事態の意味をそこまで深く受け止めることもできなかったでしょうし。
しかし、さすがに他のヒーローたちにmind-wipeの件が露見し、特にバットマンにもmind-wipeを施したのはまずいとなったところで
「これはリーグの責任ではなく、私の責任」
と言い出し始めるザターナ。投票で決めたんだからリーグの責任なんじゃないのか、ザターナ! 何でもかんでも自分の責任にするのは必ずしも美徳じゃないぞ!
この辺、魔法を使う人としての自負の問題かもしれません。どんな経緯があろうと、魔法をこうした形で使うと決めたのは私(だから私に責任がある)といった発想かもしれません。
そして引き続いてバットマンに謝り、以下のような会話になります。
「私は事態を正しく戻すためにできることは何でもするわ。お願い。私たちに何ができるか教えて」
「出て行ってくれ」
これは辛い。完全な拒絶ですね。バットマンはザターナから見て、ヒーローになる前からの幼馴染でもあるのに。お父さんが縁を繋いでくれた友達をなくしてしまいました。
結果としてザターナはリーグを辞め、ワンダーウーマンのふるさと、セミッシラ島を訪れます。ここには、それぞれの事情でバットマンやスーパーマンから受け入れられなくなったワンダーウーマンとスーパーガールがいました。……この三人で新しいヒーロー同盟を立ち上げてしまえばよいのでは、と思いましたが、そうは展開しなかった模様です。
それにしても。
犯罪者たちがヒーローたちの素性を知ると、ヒーローたちの職場や友達、家族が狙われるからmind-wipeを行わなければならないというのが基本的な話です。しかし、実はザターナはmind-wipeの必要がない人です。
そもそもザターナは本名で活躍していて、仮面もかぶっていないので素性が最初から明らかになっています。守らなければならない家族もいません。そのザターナがmind-wipeを実行する矛盾はIdentity Crisisの頃から何となく感じていたのですが、ザターナがmind-wipeを行った理由がこのエピソードで明らかになりました。
「両親が死んでから、リーグだけが家族だったから」
から、リーグの皆さんを守るためにmind-wipeしたと。結果、リーグ内の信頼関係が崩壊しザターナも去ることになったと。これは辛い。
色々あって、ザターナはヒーローたちの素性を知った犯罪者の記憶をもう一度抹消します。この時はもうリーグのメンバーではないので、投票の結果ではなくザターナの一存で行います。
敢えて意地悪な言い方をすると、リーグのために都合のいい存在になっているとも言えます。それは、家族を守るためなら泥をかぶりますということだったのかもしれません。
New52の設定大規模リセットでこのエピソードがなくなったのかどうかはっきりしないのですが、Rebirth世界ではそのうちこのエピソードがザターナに襲い掛かってきそうで怖いなと少し思いました。
いずれにせよ、ザターナファンにはおすすめのエピソードだと思います。辛いですけど。
mind-wipeの実行をしたのがザターナで、しかもそれは彼女がLeagueの新人時代に始まったことであり、投票で決めたことでもあったというのが彼女にとって辛いですね。事実上断れなかったでしょうし、事態の意味をそこまで深く受け止めることもできなかったでしょうし。
しかし、さすがに他のヒーローたちにmind-wipeの件が露見し、特にバットマンにもmind-wipeを施したのはまずいとなったところで
"(略) BUT IT'S NOT THE LEAGUE'S FAULT. IT'S MINE."
「これはリーグの責任ではなく、私の責任」
と言い出し始めるザターナ。投票で決めたんだからリーグの責任なんじゃないのか、ザターナ! 何でもかんでも自分の責任にするのは必ずしも美徳じゃないぞ!
この辺、魔法を使う人としての自負の問題かもしれません。どんな経緯があろうと、魔法をこうした形で使うと決めたのは私(だから私に責任がある)といった発想かもしれません。
そして引き続いてバットマンに謝り、以下のような会話になります。
"AND I'LL DO ANYTHING IN MY MOWER TO MAKE THINGS RIGHT AGAIN. PLEASE. JUST TELL ME WHAT WE CAN DO."
"YOU CAN LEAVE"
「私は事態を正しく戻すためにできることは何でもするわ。お願い。私たちに何ができるか教えて」
「出て行ってくれ」
これは辛い。完全な拒絶ですね。バットマンはザターナから見て、ヒーローになる前からの幼馴染でもあるのに。お父さんが縁を繋いでくれた友達をなくしてしまいました。
結果としてザターナはリーグを辞め、ワンダーウーマンのふるさと、セミッシラ島を訪れます。ここには、それぞれの事情でバットマンやスーパーマンから受け入れられなくなったワンダーウーマンとスーパーガールがいました。……この三人で新しいヒーロー同盟を立ち上げてしまえばよいのでは、と思いましたが、そうは展開しなかった模様です。
それにしても。
犯罪者たちがヒーローたちの素性を知ると、ヒーローたちの職場や友達、家族が狙われるからmind-wipeを行わなければならないというのが基本的な話です。しかし、実はザターナはmind-wipeの必要がない人です。
そもそもザターナは本名で活躍していて、仮面もかぶっていないので素性が最初から明らかになっています。守らなければならない家族もいません。そのザターナがmind-wipeを実行する矛盾はIdentity Crisisの頃から何となく感じていたのですが、ザターナがmind-wipeを行った理由がこのエピソードで明らかになりました。
"AFTER MY PARENTS DIED, THE LEAGUE WAS THE ONLY FAMILY I..."
「両親が死んでから、リーグだけが家族だったから」
から、リーグの皆さんを守るためにmind-wipeしたと。結果、リーグ内の信頼関係が崩壊しザターナも去ることになったと。これは辛い。
色々あって、ザターナはヒーローたちの素性を知った犯罪者の記憶をもう一度抹消します。この時はもうリーグのメンバーではないので、投票の結果ではなくザターナの一存で行います。
敢えて意地悪な言い方をすると、リーグのために都合のいい存在になっているとも言えます。それは、家族を守るためなら泥をかぶりますということだったのかもしれません。
New52の設定大規模リセットでこのエピソードがなくなったのかどうかはっきりしないのですが、Rebirth世界ではそのうちこのエピソードがザターナに襲い掛かってきそうで怖いなと少し思いました。
いずれにせよ、ザターナファンにはおすすめのエピソードだと思います。辛いですけど。