2019年10月5日土曜日

Wonder Woman by Greg Rucka Vol.2 感想

※Wonder Woman (1987-2006)の各シリーズの感想はこちらをご覧ください。

※このシリーズの各巻感想は以下をご覧ください。


Greg Rucka氏がライターを務めるWonder WomanのVol. 2を読みました。Vol. 1の中盤からずっと続く一連のストーリーになっています。

【基本情報】
Writer: Greg Rucka
Artists: Rags Morales, James Raiz, Sean Phillips, Drew Johnson, Various
Cover by: J.G. Jones
発行年 2017年 (連載されていたのは2002-3年頃)

公式サイトはこちら。




アメリカでアマゾン族の大使として、またヒーローとして活動するワンダーウーマン (Wonder Woman, Diana of Themyscira)は、彼女のエッセイをまとめた"Reflection"という本がベストセラーになるなど大人気。しかしそんな彼女のことをよく思わない人も多く、ワンダーウーマン反対活動の人やDr. Psycho、Veronica Cale、軍神アレス、メデューサらが彼女を栄誉の座から引きずり降ろそうと奮闘するのだった――というのがあらすじです。

単行本にして約1巻半に及ぶ大ボリュームのエピソードですが、とにかく面白いです。様々な登場人物たちが出てくる群像物であり、しかもワンダーウーマンに敵対する多数の存在はみなそれぞれの意思をもってばらばらに行動します。このエピソードだけでは消化しきれていない部分もあるのですが(きっとまた次の話へと続いていったのでしょう)、これだけの人数が出てくる話をよく分かりやすく面白くまとめられるものだと思いました。


見どころは、なんといってもワンダーウーマンとメデューサの決闘の場面だと思います。ギリシア神話に登場する怪物メデューサは、見るものを石に変えてしまうという能力を持ちますが、果たしてワンダーウーマンはどうやって彼女と対峙するのか。「肉を切らせて骨を断つ」という言葉がぴったりの、迫力の場面でした。

Vol. 1の前半で描かれたのが「わが身に引き付けて考えざるを得ない悲劇」「登場人物を切り詰めた舞台劇のような話(ギリシア悲劇を踏まえた話でもありますし)」であったのに対し、こちらのVol. 2で描かれたエピソードは「大抵の人にはほぼ現実に起きることはないのでひたすらわくわくできる話」「多数の人数が登場する怒涛のエンターテインメント」になっています。
全く別のタイプの話を両方とも見事なクオリティで提示したわけで、当時の読者がうらやましくなってくるシリーズでした。


以下、ネタバレを含む感想です。核心部分までネタバレしています。


 

知恵の女神アテナが全てを持って行ったラストでした。
ギリシア神話がお好きな方ですと、アテナ神は大抵の勝負の勝者になることを知っていると思います。何と言っても知恵の女神ですし、勝利の女神ニケがいつもアテナに従っていますしね。

というわけで、今回のごたごたはアテナが裏で糸を引いていた壮大な計画によるものだったのでした――というのが話の結論でした。途中、陰謀を巡らしているらしいアテナがとても悪い顔をしていた場面が大好きです。

この作品のワンダーウーマンは、ほとんど非の打ちどころがない人物として描かれています。それでも読者からしてあまり遠い存在と感じられない、むしろ身近な存在として感じるのは、彼女に襲い掛かる苦難に対して彼女が素直に嘆いたり悲しんだりしているからかもしれません。
空を飛ぶことも銃弾を跳ね返すことも普通の人間にはできないのですが、気持ち面ではワンダーウーマン的になれるかもしれない。そんな風にも感じました。

また、悪役として登場するVeronica Caleの生い立ちも描かれています。彼女が初登場したエピソードがこの作品のようです。Rebirth期Wonder Woman (感想はこちら)にも悪役(犠牲者でもある)として登場した彼女ですが、今回も才能あふれるキャリアウーマンにして友情に篤い人として登場します。これでワンダーウーマンへの敵意さえなければいい人なのですけれどもねえ。