かつてはバットマンの相棒、ロビンだったRed Hood (レッドフード、ジェイソン・トッド)、アマゾン族の戦士Artemis (アルテミス)、スーパーマンのクローンBizarro(ビザロ)がチームOutlawsとして活動するRed Hood and the OutlawsのVol. 3を読みました。Vol. 2(感想はこちら)のラストで倒れたビザロのことから話は始まります。
【基本情報】
Writer: Scott Lobdell
Artists: Tyler Kirkham, Joe Bennett, Dexter Soy, Various
Cover by: Tyler Kirkham
発行年 2018年
公式サイトはこちら。
Vol. 2のラストで倒れたビザロ。彼はもともとクローンとして産み出されたため、その細胞は不安定だった。彼はそれでも、友達であるジェイソンとアルテミスを助けるために戦い、息を引き取る。だが三人の前に、ビザロを作り出したLex Luthor(レックス・ルーサー)が現れ、ビザロを治療する。蘇ったビザロはIQ300の天才となり、Outlawsチームの頭脳となるのだった。
一方、バットウーマンをサブリーダーとするバットファミリーもOutlawsの動きに気づき、彼らと対峙するのだったが――
というのがあらすじです。
「バットウーマンをサブリーダーとするバットファミリー」には、バットウーマン、バットウィング、アズラエル、クレイフェイス、オーファンの5人がいるようですのでRebirth期Detective ComicsのVol.3 (感想はこちら)くらいのお話ですね。
また、あらすじには載せませんでしたが最終盤でナイトウィングが登場するエピソードがとてもよかったです。これについてはネタバレを含む感想で書きます。
さて、まずアルテミスに特化した見どころとしては。アルテミスがカジュアルな服装をしています。
……これまでWonder Woman誌などでアルテミスの姿を見てきましたが、基本アマゾン族の戦闘服か古代ギリシア風の服装か……という感じでした。ところが、この巻ではついに! 現代アメリカ人っぽい普段着、タンクトップにパンツというスタイルのアルテミスが見られます。初登場時(感想はこちら)と比べると、随分アメリカの文化に馴染んだものです……といいますか、このRebirth期アルテミスはBow of Raを探して人間界をさまよううちに人間の世界の常識や慣習を身に着けたのでしょうね。
それはともかく、この巻全体の見どころとしてはビザロが突然賢くなるところだと思います。これまで幼児程度の知能だったビザロがルーサーの治療を受けて突然天才に。読者としてもかなり意外な展開でした。しかし、この天才化はずっと続くものではなくやがては元の知能に戻ってしまうことをビザロは気づいているようです。ルーサーが治療後のビザロをあっさりジェイソンたちに渡してくれたことも含めて、ビザロ関係は不穏な気配しかしないのでVol. 4での展開が気になるところです――そしてその前に、Vol. 3の最後に挿入されたナイトウィング(ディック・グレイソン)のエピソードがとてもほのぼのとしていました。
以下、ネタバレを含む感想です。
ナイトウィング登場のエピソードは、時系列としてはビザロが賢くなる前の話になります。そのため不穏な雰囲気もなく、楽しく読むことができました。
ナイトウィング(ディック・グレイソン)はジェイソンの前のロビンです。また、ジェイソン同様ブルース・ウェインの養子であり、ジェイソンから見ると義理の兄ということになります。
しかし二人の関係は決してただの仲良しというわけではなくぎくしゃくしているようで、二人が会話している様子はどこかぎこちなくて笑えます。
話としては、サーカス団の陰謀をつきとめたOutlawsに潜入し、さらにジェイソンはサーカス団出身のディックを読んで助けてもらう――というものなのですが、
「子供のころジェイソンはディックに憧れていた」
というエピソードも盛り込まれ、温かい気持ちになることができました。
筆者が以前読んだものの女性ヒーローがあまり活躍していなかったので感想を書かなかった作品に"Batman: Battle for the Cowl" (公式サイトはこちら)というものがあります。
簡単に言いますとこの作品は、ブルース・ウェインがいなくなった後のゴッサム市で誰がバットマンを継ぐか――という、お家騒動の話です。そして対決するのがディック・グレイソンとジェイソン・トッドでした。バットファミリーの長男 vs 次男という戦いだったのですが、この作品でのジェイソンはとにかく荒んでいました。他のバットファミリーのメンバーは大体ディックについていましたし。
そんなわけで、ディックとジェイソンがぎこちないなりに穏やかに話している姿を見るだけで「こういう世界になって良かったな」と感じられた一冊でした。