※Wonder Woman (2006-2011)の各シリーズの感想はこちらをご覧ください。
2006年から2011年に連載されていたWonder Woman誌の、Gail Simone氏がメインライターを務めたシリーズの最終巻を読みました。これまで4巻の感想はこちら。
最初の巻(The Circle)から続いていたAlkyoneのエピソードは4巻目のWarkillerで終わっていましたので、この巻は純粋に短編集として読むことができました。これまでの巻の設定を引き継いではいるのですが。
【基本情報】
Writer: Gail Simone
Pencillers: Travis Moore, Aaron Lopresti, Chris Batista, Fernando Dagnino, Nicola Scott
Letters: Travis Lanham
Inkers: Matt Ryan, BIT, Doug Hazlewood, Raúl Fernández, Wayne Faucher, John Dell
Colorists:Brad Anderson, Hi-Fi , Nicola Scott
Cover by: Aaron Lopresti, Hi-Fi
発行年 2010年
公式サイトはこちら。
割とさっくりと読める短編集でした。Gail Simone氏のワンダーウーマンの雰囲気だけをまず知りたい、という人はこの巻を最初に読んでみるのも手かもしれません。長々と続くエピソードがない分、またセミッシラにまつわるあれこれが前巻までで大体終わっている分、すんなりと読むことができます。誰だこれ? みたいな登場人物もいると思いますが、何となくわかると思います。
印象的だったのは前巻のラストで登場したアレスの子供たちでした。アレスの指示によりワンダーウーマン(ダイアナ)を貶めるべく活動する彼らですが、活動の仕方がせこい。いや、流言飛語により社会に混乱をもたらすという現実的な悪をこなしてはいるのですが、戦神の子供が噂話を武器にするってどうなの? という気持ちになりました。噂話だけではなく洗脳もしているようですが。読んでいて「このクソガキが」という感想になる子供たちです。
シリーズ全5巻を通して、邪悪な人とそうでない人がはっきりしているシリーズでもありました。悪役側についていても、必ずしも邪悪でないことが分かるようになっている人もいました。そんな彼らが、なんだかんだで報われるエンディングになっていたのは良かったと思います。最後のコマは本当に幸せそうで、見ていてうれしくなる作品です。
以下、ネタバレを含む感想です。
前巻までの感想に書いた「なぜ女王ヒッポリタはダイアナを作ろうと思ったのか?」という問題については特に回答はありませんでした。単純な気まぐれということだったのでしょうか。
Alkyoneが子供を作ろうとするアマゾン族を憎んだというエピソードがあまりにも印象的で、「子供を持つか持たないかでの女性の対立を描こうとしているのだろうか……」という風にも思っていたのですが、別にそういう話でもなかったようです。
ただし、シリーズを通してダイアナの出自が必ずしも輝かしいものとは描かれていなかったのが印象に残りました。
生まれた時からダイアナを憎んでいた人がいたというのもそうですし、4巻では「ヒッポリタはセミッシラの最深部に住む魔物の力によりダイアナを強くしたのでは?」という疑惑も描かれています。ヒッポリタは否定していますが、真相は分かりません。
またこの巻では、ヒッポリタの姉にあたる人物が登場します。彼女はアマゾン族に捨てられた? ようで、アマゾン族を恨んでいます。
ダイアナはいずれの存在も乗り越えていくのですが、
「これが私が祝福されて導かれた人生」"AND THIS IS THE LIFE I AM BLESSED TO LED."
と宣言する彼女の姿は、出自にとらわれず私は私、と言っているようで眩しく感じました。
とはいえ、これがこのシリーズのテーマだったかどうかは良く分からないところです。