2019年10月27日日曜日

Red Hood and the Outlaws (2016-) Vol. 4: Good Night Gotham 感想

※このシリーズの各巻感想はこちらをご覧ください。

 かつてはバットマンの相棒、ロビンだったRed Hood (レッドフード、ジェイソン・トッド)、アマゾン族の戦士Artemis (アルテミス)、スーパーマンのクローンBizarro(ビザロ)がチームOutlawsとして活動するRed Hood and the OutlawsのVol. 4は、これまでの流れをいったんまとめる展開になっています。アルテミスとビザロにも、ジェイソンにも大きな変化が訪れます。

【基本情報】
Writer: Scott Lobdell
Artists: Various, Marcio Takara, Dexter Soy
Cover by: Guillem March
発行年 2018年

公式サイトはこちら。




Vol. 2でレックス・ルーサーの治療を受けてからIQ300の天才となったビザロだが、いずれはかつてのように幼児並みの知能へと退行してしまうことを恐れていた。彼はジェイソンたちのために様々な道具の発明、秘密基地の開発をしながら自分の知能を維持するための方策を見つけ出す。アルテミスとジェイソンはそんなビザロの動きを不審に思っていた。一方、ジェイソンには父が刑務所に入ることになったいきさつが知らされるのだったが――というのがあらすじです。

まず、アルテミスファンの見どころとしては、「ジェイソンとデートするためにドレスアップするアルテミスの姿」があげられます。大変洗練されていて素晴らしいです。かつてGai Simone氏がメインライターを務めたWonder Woman: Warkiller (感想はこちら)で、危機にあるワンダーウーマン(ダイアナ)がアルテミスのことを

"ARTEMIS ISN'T THE COMPANION YOU'D MOST WANT AT A DINNER PARTY OR FORMAL AFFAIR, PERHAPS. BUT IN THIS PARTICULAR SITUATION, SHE SEEMS PRECISELY THE PERSON I'D MOST LIKE TO SPEND A FEW MONTHS WITH."


「アルテミスはディナーパーティーや改まった席で一番一緒にいたい人ではたぶんない。でも、今この状況では何か月でも一緒にいたい人」

と評していたのと同じキャラクターとは思えません。変われば変わるものです。このアルテミスならディナーパーティーや改まった席に一緒に行っても問題なさそうです。もっとも、ここでワンダーウーマンが言っていたのはアルテミスの服装のことではなく日頃の言動が乱暴だという話だと思いますが。


それはともかく。
話全体の見どころとしては、
・ビザロが何を考えているのか
・父が刑務所に入った経緯を知ったジェイソンがとった行動、その結果としてのバットマンとの対立

ということが挙げられると思います。特に後者については、これからの巻でジェイソンを描いていくうえで大事なポイントになってくるのだろうと思います。Vol. 3でバットファミリーのお兄ちゃん、ディック・グレイソンとそれなりに仲良くしているジェイソンの姿を見ただけにバットマンとの対立は悲しいですが、避けられない流れのようにも感じました。

以下、ネタバレを含む感想です。主にアルテミスとビザロについて。


 
ビザロが知能の退行を防ぐためにとった行動は、「人工的に合成したクリプトナイト(スーパーマンを弱体化させる物質)を定期的に浴びること」だったのですが、その事実を知ったアルテミスはビザロに二度とクリプトナイトを使用しないよう約束させます。

とはいうものの……、ジェイソンたち三人の基地は「ゴッサム市の空の上に浮いている不可視の基地」であって、それを作り上げたのはビザロです。ビザロの知能が退行したらそのメンテナンスができなくなるのは目に見えているので、ビザロが天才であるうちにマニュアルを作って共有しておくとか、基地を適切に処分しておくとかの処置が必要だろう……と思うのですが、アルテミスは特に何もせず。結果的にビザロの知能が幼児くらいに戻ったのちに、基地が崩壊することになります。

これはアルテミスの分かりやすいミスで、ここまであからさまなミスを犯していることは残念でした。この本のアルテミスはアメリカの文化に相当馴染んでいるので、機械のメンテナンスにまで頭が回らないということはないと思うのですが――いや、回らなかったのでしょうか。

ともあれ、ゴッサム市上空で基地は崩壊し始めますのでビザロは基地内部にあるどこにでも行けるドアを使い、基地全体を別世界へと移動させます。アルテミスもそれを追いますが、ジェイソンのことは元の世界に残るよう突き飛ばして行ったので、ジェイソンだけがゴッサム市に取り残される形になりました。

別れの時にアルテミスがジェイソンに告げるセリフは、

"SOMEDAY. SOMEDAY YOU'LL UNDERSTAND HOW MUCH I OWE YOU. THE MISTAKES I MADE. HOW MUCH YOU SUFFERED BECAUSE OF ME."


「いつか、いつか私がどれだけあなたに借りがあるか分かる。私が犯した過ちが。私のせいであなたがどれだけ苦しんだか」

というものです。……何のことを指しているのか、ちょっと分かりませんでした。過ちはビザロにクリプトナイトを浴びないよう約束させたこと? とも思うのですが、どうでしょう。アルテミスはレックス・ルーサーとも何らかの取引をしているようですので、そちらのことかもしれません。あるいはまったく別のことなのか。

いずれにせよ、アルテミスとビザロはここで退場します。しばらくは二人と離れたジェイソンの戦いが描かれるようですが、Red Hood and the Outlaws (2016-) Annual #3で二人は再登場するようですのでまたいずれ読みたいと思います。