2018年12月1日土曜日

Seven Soldiers: Zatanna 感想

 "Seven Soldiers"という作品は、ザターナをはじめとする7人のキャラクターが活躍する話をオムニバス形式で展開したものです。各キャラクターの話はそれぞれ独立した短編として読めますが、各話を貫く大きな展開もあるようです。あるようです、というのは、筆者がザターナ編しか読んでいないからです。ザターナ編を含めた他のキャラクターの話も収録したTPB (単行本)も出版されています。

【基本情報】
Writer: Grant Morrison
Inker: Mick Gray
Penciller: Ryan Sook
Colorist: Nathan Eyring, Ryan Sook
Cover Color by: Dave Stewart
発行年 2005年

公式サイト (#1)はこちら




大失敗を犯したザターナが自尊心を保つためのワークショップ(グループで行うカウンセリングのようです)を訪れるところから始まる話です。

現在連載中の「Heroes in Crisis」誌では、スーパーヒーローたちが活躍の場で負った心の傷をどうするかということに焦点が当てられているようですが(公式サイトはこちら)、ザターナは「Zatanna (by Paul Dini)」でもカウンセリングに行く様子が描かれていて、割とこまめに自分で心のケアをしている印象があります。この辺り、ザターナはスーパーヒーローの一員ではあってもより等身大の人間に近い存在として描きやすいのかもしれません。

それはともかく。ザターナは死んだお父さんのことをずっと追いかけていくんだろうなと思わせるお話でした。もともと生まれてすぐにお母さんと別れ、お父さんの元で育った彼女ですからお父さんとの結びつきは人一倍強いのは当然です。
そして、お父さんにマジックを習い、魔法を習ったのですからお父さんは師匠でもあります。
若くしてお父さんが死んでしまった彼女にとって、お父さんは永遠に手の届かない理想のマジシャンであり、理想のスーパーヒーローなのでしょう。だからこそ、悩み立ち止まった時にはお父さんの言葉の中に回答を探そうと必死になる。ということを強く感じさせるお話でした。
(そりゃコンスタンティンもザターナの気を引くためにお父さんの名前を出しますわ……(※ Justice League Dark vol.2 (2013))とも思いました。)

お父さんの残した本に書いてある言葉は何だったのか。とても美しい回答が読めて、非常に満足感の高い、よくできたお話だったと思います。

なお、筆者が劇中一番気に入ったセリフは、ザターナが敵と戦う中で立ち寄り、バトルの場となった魔法グッズ店の店長さんが言ったこの一言です。

 "SHE'LL SAY IT WAS FOR THE GOOD OF ALL HUMANITY AND LEAVE WITHOUT PAYING FOR THE DAMAGE."


「彼女は『これは全人類のためよ』と言って壊した分を弁償せずに行っちゃうわ」

そりゃ、まあ。人類のための戦いとはいえ、お店壊されて誰からも弁償されないんじゃ堪らないですよね。ちゃんと請求しないと。