2019年8月4日日曜日

Green Arrow: The Longbow Hunters 感想

 初期のBirds of Prey (感想はこちら)では、Black Canary (ブラックキャナリー、ダイナ・ランス)は特殊能力であるCanary Cryを使えないという設定になっています。その理由はこの"Green Arrow: The Longbow Hunters"で敵に捕らえられて拷問を受けたことにあるらしい――と知ったので、この作品を読んでみました。
 
【基本情報】
Writer: Mike Grell
Artist: Mike Grell
Cover by: Mike Grell
発行年 2012年 (※単行本の発行年。連載されていたのは1987年)

公式サイトはこちら。



 シアトルに引っ越してきたGreen Arrow (グリーンアロー、オリバー・クィーン)とダイナ・ランス。二人は生花店をオープンする準備を進めながら新生活に胸を膨らませていた。だが女性が連続して殺される事件、さらにコカインの密売に関わる事件が起きる。ダイナは単身コカインの密売組織へと乗り込んでいく。一方、グリーンアローの前には日本人の謎の射手が現れて――というのがあらすじです。
 
 あらすじのラストで現れる「日本人の謎の射手」ですが、これはShadoです。Rebirth期のGreen Arrowに登場するオリバーの異母妹、Emiko Queenのお母さん(要するにオリバーのお父さんと関係があった人)ですね。

 Emiko QueenはNew52期 (2011年~)のGreen Arrow誌で初登場となりますが、お母さんの方はもうずっと前から登場していたようです。
 New52期の大規模設定リセットに合わせて、既存のキャラクターをうまく組み合わせた新キャラクターを登場させてみようということだったのでしょうか。
 この作品でメインに語られるエピソードは、Shadoの父の過去のものになります。なぜShadoがヤクザの殺し屋になっているかということを説明するエピソードになっています。アメリカを舞台にして日系人とヤクザの話を過去に遡って書こうとすると、なるほどこういう設定になるのかと思いました。
 
 それはともかく。
 ダイナがコカイン密売組織に囚われて拷問を受けるシーンは具体的に描かれるわけではないのですが、相当痛めつけられたというのは読んでわかる展開になっていますので胸が痛みます。
 話の本筋としては、Green Arrow vs Shado ということになりますのでダイナのエピソードは脇ではありますが、無視できない存在感があります。
 
 冒頭、新生活を始めるオリバーとダイナのこんな会話があります。
 

 "I WANT TO HAVE KIDS, DINAH. I WANT US TO BE A FAMILY."
 "OLIVER, I...I DON'T WANT TO HAVE CHILDERN. (中略) WE'RE IN A DEADLY, DANGEROUS BUSINESS. YOU PUT YOUR LIFE ON THE LINE EVERY TIME YOU PUT ON THE MASK. (中略) I LOVE YOU OLIVER. AND I'D LOVE TO MAKE BAIES WITH YOU. BUT I WON'T MAKE ORPHANS."

 
 「子供が欲しいんだ、ダイナ。君と家族になりたいんだ」
 「オリバー、私は……私は子供は欲しくない。 (中略) 私たちは危険な仕事をしているわ。マスクを着けるたび、あなたは自分の命を危険にさらしている。 (中略) 愛しているわオリバー、あなたとの赤ちゃんも欲しい。でも、孤児は作りたくない」
 
 ラストに至り、ダイナのこの懸念はちっとも杞憂ではないことが読者にも十分に理解できる構成になっています。スーパーヒーローの辛さを感じる作品です。