【基本情報】
Writers: Tony Bedard, Marc Andreyko, Scott Lobdell, Paul Dini, Peter Calloway
Artists: Guillem March, Jack Purcell, Raúl Fernández, Andres Guinaldo, Alvaro Lopez, David Lopez, Jeremy Haun
Cover by: Guillem March
発行年 2014年 (Book版)
公式サイトはこちら (Book 1)。
ザターナはBook 1 にちらっと、Book 2に本格的に登場します。主役3人と対立しながらもお互いの主張を通していく、といった感じです。
ザターナが出てくるエピソードはスリルにあふれていましたし、他のエピソードはいなくなったペットを探すほのぼのした話があったり(でも後で考えてみると全然ほのぼのしていませんでした)、3人の中の誰かがピンチになるのを他の2人が全力で助けに行く友情が楽しめたりと爽やかな読後感が楽しめます。もちろん3人ともヴィランですから、目的のために犯罪行為が必要になれば躊躇なく実行していきます。
……一見爽やかな読後感ですが、実はゴッサム市内の巨大ビルが大量に破壊されてもいるので(このシーンは特撮映画好きな人におすすめです)、作中の被害者数は膨大なことになっている気もします。
筆者の好きな話は、ハーレイ・クインが実家に帰る話です。実家の誰も彼もがまともでないので、まだ幼い甥と姪(ハーレイの弟の子ども達)の将来が心配になります。実家にいる場面ではハーレイがまともに見えるので、
「いっそハーレイがこの子たちを引き取った方がいいのでは?」
と一瞬真面目に考えたものの、いや駄目だとなりました。ハーレイの父は刑務所に入っているようなのですが、子供たちは刑務所のお世話になることなくすくすくと成長していってもらいたいものです。
以下、ネタバレを含む感想です。主にザターナの出てくるエピソードについて。
***ここからネタバレ***
この本でのザターナの活躍はMiss Mindwipe (洗脳)としてのそれです。……つまり、"Identity Crisis" (感想はこちら)やJLAの"Crisis of Conscience" (感想はこちら)で問題になった、ザターナによる人の記憶・人格の改変能力が再びクローズアップされるわけです。Identity Crisisが連載されていたのが2005年ごろ、Gotham City Sirensが連載されていたのは2009年ごろですから4年たってもザターナのmindwipe能力は忘れられていないということになります。
ファンとしては正直「もうザターナを許してあげてよ」という気持ちになりましたが、能力の印象が強すぎるのでしょうか。
この本に収録されているエピソードでは、ザターナがバットマンの正体を知られるのを防ぐためキャットウーマンからバットマン(ブルース・ウェイン)にまつわる記憶をすべて消すかどうか迷います。
そこで迷うか、と思いました。
やめておきなはれ、というのがファンとしての素直な感想です。
"Crisis of Conscience" でかなりザターナは傷ついたはずなので、もうmindwipeには手を出さないような気がしていたのですが――特に、ブルースの周辺の人たちには絶対にしないような気がしていたのですが、迷うのは意外でした。
どうにもザターナは真面目なので、自分の能力と自分の気持ちと義務感との板挟みになる傾向があります。
この話の主役たちがかなりのびのびと生きていることもあって、もっと好きなようにしてしまって良いのでは? ビルを蔦で破壊するくらいの生き方でもいいのでは? と思いますが、ヒーローとしてはそれはなかなか、難しいことなのかもしれません。
話をラストまで読むと、「むしろブルースが周りの人の気持ちをちゃんとフォローしていないからいかんのだ。まったく」という気持ちにさせられるエピソードです。ザターナは今回のエピソードで関わった二人をブルースの前にテレポートして放っておけばいいのだと思います。