2019年2月8日金曜日

Gotham Central BOOK3 On the Freak Beat 感想

※このシリーズの各巻感想は以下をご覧ください。

 "Gotham Central" (感想はこちら)をまとめ買いしたつもりが買いそびれていたBook3を読みました。このシリーズはバットマンやバットファミリーの活躍の陰に隠れがちなゴッサム市警の活躍を描いた作品であり、同時にゴッサム市警の刑事、レニー・モントーヤの人生が暗転するエピソードを描いている作品です。
彼女の人生がはっきりと変わってしまうエピソードはBook1とBook4に収録されていますが、このBook3に収録されているエピソードがBook4のエピソードの前日譚になっています。

【基本情報】
Writers: Greg Rucka, Ed Brubaker
Inkers: Stefano Gaudiano, Kano, Jason Shawn Alexander
Pencillers: Stefano Gaudiano, Jason Shawn Alexander, Michael Lark
発行年 2011年

公式サイト (Book 3)はこちら。



なお、なぜか公式サイトにもComixologyのページにも「ロビンの死体が見つかる話」が収録されているかのように書かれていますが、ロビンの話はBook 4に収録されています。お気を付けください。

上述した、Book 4のエピソードの前日譚は途中まで延々と悪人の悪人ぶりに苛々する展開で最後にすかっと気が晴れて終わるのですが、Book 4のことを考えるとまたどんよりするというタイプのお話でした。
Book 4ではレニーが加速度的に破滅への道を転がっていっているように見えたのですが、Book 3を読むと決してあれは唐突な展開ではなかったのだということが分かります。あちこちに分かりやすく伏線が張ってあるので、リアルタイムで読んでいた読者にもおそらくレニーが碌でもないことになるのは予想できていたのではないでしょうか。

それにしてもゴッサム市警の一部の腐敗ぶりはひどいものです。Book 4でもひどかったですが。Inspectorという人が出てきたので監察官なのかと思いましたが監察官の仕事をしているように見えないですし。MCU (Major Crime Unit, MCU)で身体を張っている刑事たちが救われません。

他にBook 3にはキャットウーマンの話、ゴッサム市警がバットマンと縁を切る話、人間が怪物化する薬剤の話が収録されています。バットマンと縁を切る話は高校時代のレニーの思い出話が聞けて楽しいですし、人間が怪物化する薬剤の話は後味も含めてとても素晴らしい作品だと思います。やはり、このシリーズは4巻全部読むのが正解かと思います。

以下、ネタバレを含む感想です。主にゴッサム市警がバットマンと縁を切る話について。

***ここからネタバレ***


ゴッサム市警の面々がバットマンのことをどう考えているかというエピソードは非常に興味深く読みました。

非正規職員のStacyがバットマンに大変好意を持っているのは以前の巻から分かっていました。それに加えて、ゴッサム市育ちのレニーはバットマンのことを大変好意的に見ています。一方、彼女のパートナーのアレンはバットマンも犯罪を犯す狂人の同類と見ています。
バットマンが警察の先を越して容疑者を捕まえたり、バットマンとヴィランの戦いに警察関係者が巻き込まれて何人もが命を落としているのもやはり問題視されているようです。ヴィランがバットマンに誘われるようにしてゴッサム市に現れているのなら、バットマンを警戒するのも当然です。

バットマンの存在により市民が守られることと、バットマンの存在により市民が傷つけられることと。一体どちらが多いのか、はっきりしてしまえばこの論争も決着がつくのでしょうが、おそらく「どちらとも言えない」感じなのでずっと結論がでないままになってしまうのでしょうね。この辺りはDetective Comics (2016-) Vol. 2 (感想はこちら)にも通じる話だと思いました。


……もっとも。
ゴッサム市警についてはバットマンの存在以前に改善できる点があるのでそこは何とかしてほしいものです。遺留品に手を加えてしまうような鑑識係がいる警察ですから。腐敗にもほどがあります。Major Crime Unitの刑事たちが真面目に仕事をしているのはシリーズを通してよく分かりました。しかし警察内部の自浄作用を働かせないと、バットマンの存在にかかわらず犯罪に巻き込まれたゴッサム市民は救われないままになってしまうように思います。