Vol. 7はこれまで読んできたDetective Comics (2016-)、Rebirth世界のDetective Comics誌でTynion IV氏が原作を担当する最終巻(今のところ)になります。
Vol. 6までの流れを踏まえつつ、登場したバットファミリー(バットマン、レッドロビン、バットウーマン、カサンドラ、スポイラー)のそれぞれの結末が描かれます。まさにTynion氏の最終巻にふさわしい一冊だと思いました。今回、かなり感想が長くなっています。
【基本情報】
Writer: James T Tynion IV
Artists: Eddy Barrows, Javier Fernandez, Alvaro Martinez, Various
Cover by: Eddy Barrows
発行年 2018年
公式サイトはこちら。
まず、この巻でのレニーの登場シーンについて。
今回はレニーはゴッサム市警の建物にいるところを敵に襲われ、バットウーマンに助けられるという役どころでの登場です。Vol. 5で示された「あり得る未来の一つではレニーがゴッサム市警の本部長になる」という展開を踏まえ、将来の本部長を殺そうとやってきた敵に狙われます。絵柄の影響か、レニーがいつもよりフェミニンな感じに見えます。更に、New52以前と比較して同僚への物腰が柔らかくなっている気がします。
このVol. 7でRebirth世界のDetective Comicsに登場するレニーは最後(今のところ)ということでここまでに明らかにされたRebirthでの設定をまとめておきます。
・レニーはゴッサム市警の刑事。パートナーはHarvey Bullock。
・ケイト・ケインとは以前は恋人だったが現在は別れている。現在もお互い電話をすれば会える仲。信頼できる友人という関係になっている。
・レニーはケイトがバットウーマンだと知っている。
・バットファミリーには好意的。
・New52以前と比べて性格が丸い。
・New52以前と比べて言葉遣いが良い。
・ゴッサム市警の本部長になる未来もあり得る(もうその未来は潰れた?)らしい。
今後レニーがどうなっていくのかわかりませんが、脇役でも出続けてほしいものです。
さて、話の本筋について。
あらすじを書くとこんな感じです。
Vol. 6でバットウーマンがクレイフェイスを殺したことを受けて、バットマンがナイトウィング、バットガール、レッドロビン、レッドフード、ロビンを招集し会議を開く。議題は「バットウーマンに蝙蝠のマークをつけさせて良いのか」だった。バットガールが議題自体を一蹴する一方、レッドロビン(ティム・ドレイク)はバットマンの持つ理想が自分の理想と一致していなかったことにショックを受け、かつてバットウーマンの父、ジェイコブ・ケインの部下だった敵 (Ulysses Armstrong、以下アームストロング) につけこまれて精神を操られ、バットウーマンを殺そうとする。
バットマンはバットウーマン、ジェイコブ・ケインと協力してアームストロングに操られた敵を追い払うと、さらにカサンドラ、スポイラーの助けを得てロビンを助けようとするのだったが――。
以下、話の本筋についてネタバレを含む感想です。
***ここからネタバレ***
冒頭、「クレイフェイスを殺したバットウーマンに蝙蝠のマークをつけさせて良いのか会議」がなんだか笑えました。欠席裁判という感が漂うのと、今回になって初めて登場したバットガール(バーバラ・ゴードン)がばさばさ真実を指摘し過ぎていて、「最初からこの人をチームに加えておいたほうが良かったんじゃないかな」という気持ちになりました。
バーバラ・ゴードンの分析によると、バットマンがバットウーマンをバットファミリーに加入させたのは、ケイトがバットマンの従妹で、バットマンのお母さんの血をひく人だからだそうです。
……Vol. 1の感想で「血縁だからバットファミリーに誘うっていうのはなんか微妙だな、でも後の展開を見るとそれは単なる理由付けっぽいから本当のところはケイトの能力を買っているんだろうな」というようなことを書きましたが、むしろ「血縁だから」が本音の理由だった模様です。……お、おう。そうなの。
バットファミリーのほかの皆さんはバットマンと血のつながりがない人のほうが多いので「血縁だから」を理由にしてしまうとほかの人の立つ瀬がないのではないか、と思いますがそちらが真実だったようです。
これで「バットマンがバットウーマンをリクルートしたのは『将来的にバットファミリーが倒れてもゴッサムを守る活動を継続できるようにするため』という自分の理想と同じことをバットマンが考えていたからだ」というレッドロビン(ティム・ドレイク)の思い込みが壊れてしまいます。
バーバラ・ゴードンはさらに、カサンドラ・ケインの現在の状態について語り始めます。ちなみにこの会議の前にスポイラー(ステファニー・ブラウン。現在はバットファミリーを離れている)に会って話を聞いてきた模様です。バットマンがこの会議を開催しなかったとしてもこの話をしようと思って調査していたようですから、できる人ですね。
「父親から気が狂いそうになるほど苦しめられて、その父親にちなんで自分で名前をつけて。普通に話すことができなくて、私が理解する限りでは大人の監督もなく荒廃した劇場の屋上に住んでいる。あなたたちが戦っていた数か月の間ずっと、彼女が最も人間らしいコミュニケーションをとっていた相手は私がニキビのある頃から戦っていたような悪人」
……カサンドラの現状について語るこの部分を読んだとき、やっとまともな大人が出てきてくれたかもしれないと思いました。カサンドラの状態についてはVol. 2でスポイラーも触れていたのですが、彼女自身がバットファミリーから離脱してしまったために根本的な解決には至らなかったのですよね。その中でもカサンドラの言葉の練習に付き合ってくれていたのがクレイフェイスだったわけで……。
バーバラ・ゴードンにカサンドラのことを任せて教育を受けられるように体制を整えてもらったほうがいいんじゃないかな、という気持ちになりました。
さて、会議の本来の議題であった「クレイフェイスを殺したバットウーマンに蝙蝠のマークをつけさせて良いのか」ですが、「彼女がつけたいのならそれを止めることはできない、彼女はバットマンの子供でもないしゴッサム市警本部長の娘でもないんだから」というバーバラ・ゴードンの発言によりあっさりと議題自体が無効であったことが確認されます。ということで、解散となりますがバットマンに裏切られた気持ちのティム・ドレイクは今回の敵であるアームストロングに付け込まれていくことになります。
ティム・ドレイクを救うための戦いでは、スポイラー(バットマンの協力要請により重い腰を上げて協力)がキーパーソンになるのがよかったなと思います。バットマークを付けていないしバットファミリーからも離脱しているしで、現状のバットファミリーの中では傍流ともいえる存在なのですが、悪夢からティム・ドレイクを救ってくれました。
戦いの中で敵から「別の世界線ではあなたはスポイラーではなくバットガールやロビンになっていたかもしれない、だが今のあなたは二線級だ」というようなことを言われて現在の自分と比較してショックを受ける――と思いきや、
「あなたが今私に言ったことは、どんな世界だろうと私はとっても素晴らしいってことよ」
ととてもポジティブな反論を繰り出します。こんなにポジティブな人だという印象はなかったので驚きました。Vol. 2の時にもこのポジティブさがあれば何かが違ったかもしれません。もっとも、あの時は彼女が本当に絶望していましたから仕方がないように思います。
スポイラーの行動により戦局は大きく変化し、敵を倒す&ティム・ドレイクを助けることにバットマンたちは成功します。
エピローグでそれぞれのキャラクターの今後が語られるのですが、
(1) バットマン&バットウーマン
ケイトの父とバットマンの母(=ケイトの叔母)がよく食事をしていたレストランでお食事。考えてみればこの二人、家同士の仲が悪いので冠婚葬祭くらいでしか会う機会のなかった従兄妹なんですよね。ここからまた人間関係を築いていくのでしょうね。
(2) ティム・ドレイク&スポイラー
Vol. 1で計画していた通りに大学へ。本当に良かったです。本人が希望するなら、卒業してからまたバットファミリーに入ればいいと思います。
(3) カサンドラ・ケイン
THOMPKINS FREE CLINICへ。そこでお手伝い?をしながら、高校に通う道を模索するようです。……って、高校生くらいの年齢だったんですね……12、3歳かと思っていました。そしてここで! 彼女に話し方を教えるために! バーバラ・ゴードンが助けてくれることが明らかになりました。上のほうでも書きましたが、バーバラさんはかなり常識人のようなのでカサンドラを見てくれるとなると安心です。
(4) クレイフェイス
そしてまさかの! クレイフェイスが生きていました。この部分を読んだとき、「実は生きている」という伏線を読み落としたのかと思って前巻を読み直しましたが、特にありませんでした。海外のファンのレビューを読んでみるとこの部分については、
・Dr. Victoria (クレイフェイスを診ていてくれたお医者さん。彼女がクレイフェイスの死亡を宣告した)が頑張って、死んだと思われたクレイフェイスを治療した
・Dr. Victoriaはこれ以上クレイフェイスをバットファミリーの戦いに巻き込みたくなかったので、「死亡した」と嘘をついた
という2つの説がある模様です。2つ目のほうがスマートな説のような気はしますね。いずれにしろ、クレイフェイスはゴッサムを離れてDr. Victoriaとともに治療に専念するようです。
と、こんな感じで最終的にハッピーエンドに収まった話でした。「DCコミックは重い話も多いっていうしこの話もそんなにハッピーエンドにはならないかも」と思って読んでいたのですが、味方側のキャラクターはたぶん全員がほぼハッピーエンドになっているかと思います。読後、こんなにさわやかな気持ちになれるとは思いませんでした。
冒頭、「クレイフェイスを殺したバットウーマンに蝙蝠のマークをつけさせて良いのか会議」がなんだか笑えました。欠席裁判という感が漂うのと、今回になって初めて登場したバットガール(バーバラ・ゴードン)がばさばさ真実を指摘し過ぎていて、「最初からこの人をチームに加えておいたほうが良かったんじゃないかな」という気持ちになりました。
バーバラ・ゴードンの分析によると、バットマンがバットウーマンをバットファミリーに加入させたのは、ケイトがバットマンの従妹で、バットマンのお母さんの血をひく人だからだそうです。
……Vol. 1の感想で「血縁だからバットファミリーに誘うっていうのはなんか微妙だな、でも後の展開を見るとそれは単なる理由付けっぽいから本当のところはケイトの能力を買っているんだろうな」というようなことを書きましたが、むしろ「血縁だから」が本音の理由だった模様です。……お、おう。そうなの。
バットファミリーのほかの皆さんはバットマンと血のつながりがない人のほうが多いので「血縁だから」を理由にしてしまうとほかの人の立つ瀬がないのではないか、と思いますがそちらが真実だったようです。
これで「バットマンがバットウーマンをリクルートしたのは『将来的にバットファミリーが倒れてもゴッサムを守る活動を継続できるようにするため』という自分の理想と同じことをバットマンが考えていたからだ」というレッドロビン(ティム・ドレイク)の思い込みが壊れてしまいます。
バーバラ・ゴードンはさらに、カサンドラ・ケインの現在の状態について語り始めます。ちなみにこの会議の前にスポイラー(ステファニー・ブラウン。現在はバットファミリーを離れている)に会って話を聞いてきた模様です。バットマンがこの会議を開催しなかったとしてもこの話をしようと思って調査していたようですから、できる人ですね。
"TORTURED TO THE EDGE OF HER SANITY BY HER FATHER -- WHO SHE'S NAMED HERSELF AFTER. INCAPABLE OF REGULAR SPEECH. FROM WHAT I UNSDERSTAND, SHE LIVES IN A RUN-DOWN THATER ATTIC WITH NO ADULT SUPERVISION. AND THE MOST HUMAN CONNECTION SHE MADE IN ALL THE MONTHS YOU'VE BEEN FIGHTING WAS WITH A SUPER-VILLAIN I'VE BEEN PUNCHING SINCE I STILL HAD PIMPLES."
「父親から気が狂いそうになるほど苦しめられて、その父親にちなんで自分で名前をつけて。普通に話すことができなくて、私が理解する限りでは大人の監督もなく荒廃した劇場の屋上に住んでいる。あなたたちが戦っていた数か月の間ずっと、彼女が最も人間らしいコミュニケーションをとっていた相手は私がニキビのある頃から戦っていたような悪人」
……カサンドラの現状について語るこの部分を読んだとき、やっとまともな大人が出てきてくれたかもしれないと思いました。カサンドラの状態についてはVol. 2でスポイラーも触れていたのですが、彼女自身がバットファミリーから離脱してしまったために根本的な解決には至らなかったのですよね。その中でもカサンドラの言葉の練習に付き合ってくれていたのがクレイフェイスだったわけで……。
バーバラ・ゴードンにカサンドラのことを任せて教育を受けられるように体制を整えてもらったほうがいいんじゃないかな、という気持ちになりました。
さて、会議の本来の議題であった「クレイフェイスを殺したバットウーマンに蝙蝠のマークをつけさせて良いのか」ですが、「彼女がつけたいのならそれを止めることはできない、彼女はバットマンの子供でもないしゴッサム市警本部長の娘でもないんだから」というバーバラ・ゴードンの発言によりあっさりと議題自体が無効であったことが確認されます。ということで、解散となりますがバットマンに裏切られた気持ちのティム・ドレイクは今回の敵であるアームストロングに付け込まれていくことになります。
ティム・ドレイクを救うための戦いでは、スポイラー(バットマンの協力要請により重い腰を上げて協力)がキーパーソンになるのがよかったなと思います。バットマークを付けていないしバットファミリーからも離脱しているしで、現状のバットファミリーの中では傍流ともいえる存在なのですが、悪夢からティム・ドレイクを救ってくれました。
戦いの中で敵から「別の世界線ではあなたはスポイラーではなくバットガールやロビンになっていたかもしれない、だが今のあなたは二線級だ」というようなことを言われて現在の自分と比較してショックを受ける――と思いきや、
"THE ONLY THING YOU JUST TOLD ME IS THAT NO MATTER WHAT TIMELINE I'M IN, I'M FREAKING AMAZING."
「あなたが今私に言ったことは、どんな世界だろうと私はとっても素晴らしいってことよ」
ととてもポジティブな反論を繰り出します。こんなにポジティブな人だという印象はなかったので驚きました。Vol. 2の時にもこのポジティブさがあれば何かが違ったかもしれません。もっとも、あの時は彼女が本当に絶望していましたから仕方がないように思います。
スポイラーの行動により戦局は大きく変化し、敵を倒す&ティム・ドレイクを助けることにバットマンたちは成功します。
エピローグでそれぞれのキャラクターの今後が語られるのですが、
(1) バットマン&バットウーマン
ケイトの父とバットマンの母(=ケイトの叔母)がよく食事をしていたレストランでお食事。考えてみればこの二人、家同士の仲が悪いので冠婚葬祭くらいでしか会う機会のなかった従兄妹なんですよね。ここからまた人間関係を築いていくのでしょうね。
(2) ティム・ドレイク&スポイラー
Vol. 1で計画していた通りに大学へ。本当に良かったです。本人が希望するなら、卒業してからまたバットファミリーに入ればいいと思います。
(3) カサンドラ・ケイン
THOMPKINS FREE CLINICへ。そこでお手伝い?をしながら、高校に通う道を模索するようです。……って、高校生くらいの年齢だったんですね……12、3歳かと思っていました。そしてここで! 彼女に話し方を教えるために! バーバラ・ゴードンが助けてくれることが明らかになりました。上のほうでも書きましたが、バーバラさんはかなり常識人のようなのでカサンドラを見てくれるとなると安心です。
(4) クレイフェイス
そしてまさかの! クレイフェイスが生きていました。この部分を読んだとき、「実は生きている」という伏線を読み落としたのかと思って前巻を読み直しましたが、特にありませんでした。海外のファンのレビューを読んでみるとこの部分については、
・Dr. Victoria (クレイフェイスを診ていてくれたお医者さん。彼女がクレイフェイスの死亡を宣告した)が頑張って、死んだと思われたクレイフェイスを治療した
・Dr. Victoriaはこれ以上クレイフェイスをバットファミリーの戦いに巻き込みたくなかったので、「死亡した」と嘘をついた
という2つの説がある模様です。2つ目のほうがスマートな説のような気はしますね。いずれにしろ、クレイフェイスはゴッサムを離れてDr. Victoriaとともに治療に専念するようです。
と、こんな感じで最終的にハッピーエンドに収まった話でした。「DCコミックは重い話も多いっていうしこの話もそんなにハッピーエンドにはならないかも」と思って読んでいたのですが、味方側のキャラクターはたぶん全員がほぼハッピーエンドになっているかと思います。読後、こんなにさわやかな気持ちになれるとは思いませんでした。