※このシリーズの各巻感想は以下をご覧ください。
かつてはバットマンの相棒ロビンとして、独り立ちしてからはヒーローNightwingとして活躍していたDick Grayson(ディック・グレイソン)が自らの死を偽装し、Spyral(スパイラル)という組織のエージェントとして戦うこのシリーズもいよいよ最終巻です。サブタイトル通り、スパイラルの崩壊が描かれます。
【基本情報】
Writers: Collin Kelly, Jackson Lanzing, Tim Seeley, Tom King
Artists: Carmine Di Giandomenico, Various, Roge Antonio
Cover by: Mikel Janin
発行年 2017年
公式サイトはこちら。
まずここまでの前提として、
・ディックはスパイラルの創始者の情報を手に入れ、大体何を企んでいるのかが分かった
・ディックはスパイラルをつぶそうとするが、かつて自分のパートナーであり今は中間管理職のHelena Bertinelli(ヘレナ・ベルティネリ)だけは助けようとする
・ディックはスパイラルのエージェントの一人、エージェント1と行動を共にする
・ヘレナはディックとエージェント1が勝手な行動をとっているのを知り、二人を倒すために他のエージェントたちを差し向けるが全員返り討ちにあった
・ヘレナは別組織の殺人者たちにディックたちを殺すよう依頼する
――という流れがありました。というわけで、この5巻はヘレナが仕向けた殺人者たちとディックの戦いから始まります。そしてヘレナ vs ディックになるはず! と思いきや、思いもよらない展開に……
詳しくは下のネタバレを含む感想で書きますが、大変面白い展開でした。
筆者はRebirth期のBatgirl and the Birds of Prey(感想はこちら)を読んでいるのですが、このGrayson誌はBatgirl and the Birds of Preyに直結しているのですね。Batgirl~の方で、ヘレナがBatgirlやBlack Canaryの正体を知っていたのはなぜ? とか、ヘレナが
「ディックはあなたの方が好きだから」
とあっさりBatgirl(Barbara Gordon)の前に身を引いたのはなぜ? とか、疑問に思っていたことがすっと解消しました。Batgirl and the Birds of Preyの前日譚として、ヘレナのファンにはおすすめです。
さて、以下はネタバレを含む感想です。
ヘレナは他の組織の殺人者たちにディックとエージェント1を殺すよう依頼していたはずですが、他の組織はスパイラルをつぶすチャンスを虎視眈々と狙っていたのでした。
そして、スパイラルをつぶすにはヘレナ・ベルティネリを殺すのが効率的という結論に達し彼らはヘレナを狙ってきます。
一方、スパイラルの創始者(故人)は娘二人が十分成長したらどちらかの体の中に再び舞い戻ってくる、という計画を立てていたのですが計画を変更してヘレナの身体の中に入ろうとします――というわけで、3巻、4巻辺りでは本筋の蚊帳の外のようだったヘレナがいきなり話の中心に入ってきます。しかも本人の意思とは関係なく。
ヘレナ、スパイラルの組織の中ではあまり情報を持っていない人だったはずなのですよね。独自に調査を重ねているディックの方がずっとスパイラルの過去について詳しいです。そんなわけで筆者としても「中間管理職になったのに情報を持っていない……」と思っていたのですが、まさか他の組織やスパイラルの創始者にそんな重要人物として認識されているとは思いもよりませんでした。
というわけで、本人のあずかり知らないところで重要人物になっていたヘレナを、ディックは助けることができるのか。そして、二人とも生還することができるのか。というのが見どころになっている最終巻でした。
ラスト付近で、ディックがヒーローになる前の姿、ロビンとしての姿、ナイトウィングの姿、一時的にバットマンを務めた時の姿……と出てくるのが良かったです。これまでいろいろな名前でその時々の役割を果たしてきたディックですが最終的に何になることを選ぶのか、というお話になっていました。