2019年5月15日水曜日

Batgirl: Year One #1-9 感想

 2003年に連載された、"Batgirl: Year One"を読みました。Barbara Gordon (バーバラ・ゴードン)のバットガールが初登場した "Detective Comics" #359 (感想はこちら)のエピソードを踏襲しながら現代風にアレンジしなおした作品になります。

 なお、"Batgirl: A Celebration of 50 Years" にこのBatgirl: Year One の#4のみ収録されていましたので筆者は残りの話をばらばらに購入しましたが、全話を収録した単行本も発売されています。

【基本情報】
Writers: Scott Beatty, Chuck Dixon
Artists: Alvaro Lopez, Marcos Martín
Cover by: Marcos Martín, Alvaro Lopez
発行年 2003年

公式サイトはこちら。


 Detective Comics #359でバーバラがバットガールになった経緯は、「警察の仮装パーティーにバットガールの扮装をしていったら事件に巻き込まれたので戦ってみた」というものでした。
 さすがに現代はこのストーリーのままでは受け入れがたいということなのか、この作品ではまずバーバラが進路に悩んでいる姿、若い女性だからと軽視されて苛立っている姿がたっぷりと描かれます。バーバラは父のゴードン本部長に憧れ警察で働きたいと思っているのですが、父に反対され警察学校からも入学を拒否されます。
 FBIに入ろうとも考えるのですが、情報分析だけの担当になりそうで身体もフルに使って悪を倒したい彼女の希望とはずれていました。

 そこで彼女はバットマンのようなヒーローになることを考えます。もっとも、彼女がヒーローとしてイメージしていたのはバットマンではなくブラックキャナリーだったようです。Birds of Preyのファンとしては嬉しい、と思っていたら後半でこの2人が本当にチームを組む展開もあります。バーバラはヒーローになったばかりですので、一方的にブラックキャナリーに助けられる形でした。

 ともあれ、バーバラは警察の仮装パーティーにバットマン風の衣装で参加し、そこを襲った敵の犯罪を未然に防ぐのですが、この後 "Detective Comics" #359と大いに違うのはバットマンがとにかく厳しいことです。
 Robin (この時期はDick Grayson)ははじめからバーバラに好意的で仲間に入れたがっているようですが、バットマンはとにかく厳しい態度です。諦めさせたい、というのがバットマンの考えです。そこを何とか乗り越えてバーバラはバットガールになれるのか――というのが物語の見どころになります。


 やはり1967年の"Detective Comics" #359の読者に求められていた物語と2003年の読者が求める物語は違うのだなというのが第一印象でした。
 1967年にはあっさりすませていた部分が、2003年には簡単には済ませられなくなっていると感じます。それは例えば、バットファミリーという危険な活動に従事するメンバーが増えることをバットマンがいかに承認するか、といった問題についてです。
 もしかすると1967年ならば「コミックの話だから」で済ませていたものを、それで済ませないできちんと描いていこうという方針になったのかなと思いました。

 さらにもう一つ印象的だったのが敵役です。この話のメインの敵役はKiller Moth (この人は"Detective Comics" #359 でも敵役)ともう一人です。Killer Mothは敵役とはいえ割と常識人で、完全にクレイジーなもう一人の考えについていけていないところが大変コミカルでした。

悪いことはいわないので、Killer Mothは犯罪行為から足を洗って堅気に戻った方が幸せになれると思います。