Batgirl (2016-) Vol. 1, 2を読みました。
【基本情報】
Writer: Hope Larson
Artists: Rafael Albuquerque, Inaki Miranda, Jon Lam, Christian Wildgoose
Cover by: Rafael Albuquerque, Christian Wildgoose
発行年 2017年
公式サイトはこちら (Vol. 1)。
一言で言いまして、コメディなのかシリアスなのかわかりにくい作品でした。おそらくコメディベースの物語の中に、シリアスな(少し社会派な)テイストを混ぜるという作風だと思うのですが。
多分これはギャグで描いているんだろうな、と思われるシーンに対しても「本当にギャグなのかな? もしかして大真面目に描いてないかな?」と確信を持てないところがあり、曖昧な表情のままに読み続けていた気がします。
また、Vol. 1の冒頭ではバットガール(バーバラ・ゴードン)が日本、シンガポール、韓国などアジアを回りそこで出会った敵と戦う話になっています。
アメコミの中の日本描写が少しおかしくてもスルーしようと決めていたのですが(日本の作品で描かれる諸外国の描写もきっと色々おかしいのでしょうし)、どうしてもここだけは突っ込まざるをえない、という箇所がありました。
バットガールと戦う日本人のティーンエイジャーが、「学生」というタトゥーを入れているのはいくらなんでも変だよ!
バットガールはこの「学生」というタトゥーを見て、
「日本のティーンエイジャーが2016年にもなって漢字のタトゥーを入れる? 何か変」“A JAPANESE TEEN WITH A CHINESE TATOO IN 2016? WEIRD.”
とずれた推論をするのですが、日本人のティーンエイジャーが漢字のタトゥーを入れるのはそこまで変ではありません。
英語を入れることが多いんじゃないかなとは思いますけれどもそこまでおかしなことではありません。
でも、漢字でタトゥー入れるにしても「学生」とは入れないから! 普通の言葉過ぎるから! と思いました。
日本についての突っ込みはここで終わります。
ちなみにこのエピソードで、Chiyo Yamashiroというかつて日本で活躍していたというヒーローが登場するのですが、DC女性ヒーローの一人であるKatana(カタナ、Tatsu Yamashiro)のご親戚か何かという設定になっていくのでしょうか。
Vol. 1ではバットガールがアジア諸国を回る話の他に、エピローグとしてアメリカに戻る機中でポイズン・アイビーと空の旅を楽しむ話が収録されていました。Vol. 2ではペンギンの息子がバーンサイド(ゴッサム市の近隣の町、バットガールはここに住んでいる)で立ち上げたIT企業が実は彼の野望とつながっている話や、スーパーガールとともに人助けをする話が収録されています。
この1~2巻の中では、筆者にはペンギンの息子の話が一番面白かったです。以下、ネタバレを含む感想になります。
***ここからネタバレ***
ペンギン(オスワルド・コブルポット)はゴッサム市で犯罪者グループの首領となっていますが、暴力沙汰というよりは闇のマーケットを支配するなどの手法で力をふるっているように見えます。その息子ですが、ペンギンの愛人のもとに生まれた子ということで大人になってからペンギンに会いに行きます。そして彼が宣言するのは、ペンギンをも超える存在となることです。その一手として、バーンサイドにIT企業を構えます。
この企業の主力商品はアプリです。たとえば、ホームレスを報告すればすぐに人がやってきてホームレスを救援施設(とされている場所)へと連れていくアプリがヒットします。あるいは、夜遅くなった時に一緒に帰ってくれるボディーガードを手配してくれるアプリがヒットします。はたまた、バーチャルな犬と一緒にいる写真を撮影してネットで共有できるアプリがヒットします。
それぞれのアプリの目的は、人々の行動パターンを情報として得ること、そして人を操作する手法を得ることにありました。
このあたりの流れは現実にもありそうで、なかなか面白い展開だと思いました。
特に、バーチャルな犬のアプリはバーバラ・ゴードンの動きを監視するために配布されたものです。人々があちこちで写真を撮って共有するので、バーバラ・ゴードンが映っている写真を選び出すことで彼女の行動を監視できることになります。以前のBirds of Preyではバーバラが防犯カメラを操作してその画像から犯人たちの動きを追跡するようなシーンがあった気がしますが、誰もがスマホを持っている時代になるとバーバラ自身もスマホによる監視の目から逃れられないのだなと思いました。
と、このようにいろいろと面白い可能性を見せてくれたペンギンの息子なのですが、とにかく詰めが甘い! どこかで再起してくれるのを期待したいです。