※Batgirl (2011-2016)の各巻感想へのリンクはこちら。
※このシリーズの各巻感想は以下です。
Vol. 3に引き続き、New52期Batgirl Vol. 4を読みました。
【基本情報】
Writers: Gail Simone
Artists: Various, Derlis Santacruz, Fernando Pasarin
Cover by: Alex Garner
発行年 2014年
公式サイトはこちら。
Vol. 3は、バットガール(Barbara Gordon)が弟のJames Gordon Jr.を海に突き落としたことを父であるゴードン本部長に見られ、殺人犯として追われることになった――というところで終わりますので、バットガールの逃避行が始まる――かと思いきや、一見関係のない話から始まるという巻でした。
しかしその中にも、ちらちらとゴードン本部長の話が挟まってきます。
この巻に収録されているのは、
・人形遣いの話
・Ricky (Vol. 2で登場した男性。兄弟に悪い仲間がいるのでトラブルに巻き込まれがち。バットガール、バーバラとラブコメ的展開になっていた)とのデートの話。その後彼が悪い仲間たちに襲われることに。
・ゴードン本部長との対決の話
・ゴッサム市が超巨大な嵐に襲われ、バットガールになる前のバーバラが弟のジェームズと一緒に避難する話
の4つです。
最後の話は"Zero Year"というイベントの中の一編だと思います。まだバットガールになる前のバーバラと殺人犯になる前のジェームズの話ですが、この時点ですでにジェームズは利己的、バーバラは利他的、というのがはっきりわかる状態になっていて辛いです。
こんな感じでは、お姉さん(バーバラ)はみんなから愛されるし、弟(ジェームズ)は「お姉さんはあんなにいい人なのに彼はちょっとね」と言われる人生だっただろうなあ、という印象でした。ジェームズが幸せになれる道は一体どこにあったのでしょうか。
以下、ネタバレを含む感想です。主にゴードン本部長との対決の話について。
Vol. 3の感想で書いた、「バーバラはジョーカーのこともジェームズのことも殺すしかないと思っているようだけどバットマンの不殺のポリシーとの兼ね合いはどうするんだろう」という問題ですが、一つのけじめらしきものが出ていました。
バーバラは、ジェームズを海に落としてしまってから「もう蝙蝠のマークはつけられない」とバットガールのスーツを着るのをやめたそうです。これは不殺のポリシーというよりもゴードン本部長をこれ以上悲しませないためという意味が大きいようですが。
一方、ゴードン本部長はゴッサム市内の不良グループの争いの現場に現れ、誤ってバーバラの恋人であるRickyを撃ってしまいます。これは違法ではないものの、ゴードン本部長としては彼を撃つつもりはなかったようです。
結果として、
・ゴードン本部長はバットガールを許せない。
・バーバラは父を許せない。
という状態になります。
その後いろいろあって、ゴードン本部長がメタヒューマン(超人。通常の人間にはない能力を持つ人のこと)に襲われたのをバットガールが助け(※バーバラはその時たまたまバットガールのスーツしか持っていませんでした)、二人は話し合いの時間を持ちます。
ゴードン本部長自身にも、Rickyを撃ってしまった後悔があり、バットガールがジェームズを殺すつもりはなかったということを徐々に納得していきます。そして二人は一定の和解に至るのでした。
……しかし、薄暗い状況とはいえ至近距離でバットガールと話すゴードン本部長は相手が娘だと気がつかないものなのでしょうか……それとも、薄々気づいているからこそ「正体を知りたくない」のか……。
ともかくこのストーリー自体はめでたしめでたしでいいのですが、ゴードン本部長はバットガールにこんなことを言っています。
「くそっ。境界線はあるんだ。お前たちが私の街で活動するのを認めていたのは、お前たちが殺さないからだ」
と、不殺だからこそバットマンたちの活動を黙認してきたことを告げています。
これはとても現実的な落としどころだと思いました。バットマンたちの力を借りずとも市の治安を守れればそれに越したことはないのですが、現実的にはゴッサム市警の力だけではゴッサム市の治安を守り切れません。
かといって、バットマンたちも犯罪者に対して暴行を加えているわけで、不法行為ではあります。また、バットマン「的」な活動をする集団がほかに出てくる可能性もありますし、そういった集団が暴走する可能性も――と考えた時、「治安の維持に貢献している限りは黙認する、ただし殺人を犯さないことを絶対の条件とする」というのは妥協点としてちょうど良さそうです。
結果としてバットマンの「不殺」のポリシーは、ゴッサム市警との共存にもつながっていったのだなと思いました。バットマンは警察側の事情を考えて不殺になったのではないと思いますが。
Vol. 3に引き続き、New52期Batgirl Vol. 4を読みました。
【基本情報】
Writers: Gail Simone
Artists: Various, Derlis Santacruz, Fernando Pasarin
Cover by: Alex Garner
発行年 2014年
公式サイトはこちら。
Vol. 3は、バットガール(Barbara Gordon)が弟のJames Gordon Jr.を海に突き落としたことを父であるゴードン本部長に見られ、殺人犯として追われることになった――というところで終わりますので、バットガールの逃避行が始まる――かと思いきや、一見関係のない話から始まるという巻でした。
しかしその中にも、ちらちらとゴードン本部長の話が挟まってきます。
この巻に収録されているのは、
・人形遣いの話
・Ricky (Vol. 2で登場した男性。兄弟に悪い仲間がいるのでトラブルに巻き込まれがち。バットガール、バーバラとラブコメ的展開になっていた)とのデートの話。その後彼が悪い仲間たちに襲われることに。
・ゴードン本部長との対決の話
・ゴッサム市が超巨大な嵐に襲われ、バットガールになる前のバーバラが弟のジェームズと一緒に避難する話
の4つです。
最後の話は"Zero Year"というイベントの中の一編だと思います。まだバットガールになる前のバーバラと殺人犯になる前のジェームズの話ですが、この時点ですでにジェームズは利己的、バーバラは利他的、というのがはっきりわかる状態になっていて辛いです。
こんな感じでは、お姉さん(バーバラ)はみんなから愛されるし、弟(ジェームズ)は「お姉さんはあんなにいい人なのに彼はちょっとね」と言われる人生だっただろうなあ、という印象でした。ジェームズが幸せになれる道は一体どこにあったのでしょうか。
以下、ネタバレを含む感想です。主にゴードン本部長との対決の話について。
***ここからネタバレ***
Vol. 3の感想で書いた、「バーバラはジョーカーのこともジェームズのことも殺すしかないと思っているようだけどバットマンの不殺のポリシーとの兼ね合いはどうするんだろう」という問題ですが、一つのけじめらしきものが出ていました。
バーバラは、ジェームズを海に落としてしまってから「もう蝙蝠のマークはつけられない」とバットガールのスーツを着るのをやめたそうです。これは不殺のポリシーというよりもゴードン本部長をこれ以上悲しませないためという意味が大きいようですが。
一方、ゴードン本部長はゴッサム市内の不良グループの争いの現場に現れ、誤ってバーバラの恋人であるRickyを撃ってしまいます。これは違法ではないものの、ゴードン本部長としては彼を撃つつもりはなかったようです。
結果として、
・ゴードン本部長はバットガールを許せない。
・バーバラは父を許せない。
という状態になります。
その後いろいろあって、ゴードン本部長がメタヒューマン(超人。通常の人間にはない能力を持つ人のこと)に襲われたのをバットガールが助け(※バーバラはその時たまたまバットガールのスーツしか持っていませんでした)、二人は話し合いの時間を持ちます。
ゴードン本部長自身にも、Rickyを撃ってしまった後悔があり、バットガールがジェームズを殺すつもりはなかったということを徐々に納得していきます。そして二人は一定の和解に至るのでした。
……しかし、薄暗い状況とはいえ至近距離でバットガールと話すゴードン本部長は相手が娘だと気がつかないものなのでしょうか……それとも、薄々気づいているからこそ「正体を知りたくない」のか……。
ともかくこのストーリー自体はめでたしめでたしでいいのですが、ゴードン本部長はバットガールにこんなことを言っています。
"THERE'S A LINE, DAMMIT. I TOLERATE YOU PEOPLE OPERATING IN MY CITY BECAUSE YOU DO NOT KILL."
「くそっ。境界線はあるんだ。お前たちが私の街で活動するのを認めていたのは、お前たちが殺さないからだ」
と、不殺だからこそバットマンたちの活動を黙認してきたことを告げています。
これはとても現実的な落としどころだと思いました。バットマンたちの力を借りずとも市の治安を守れればそれに越したことはないのですが、現実的にはゴッサム市警の力だけではゴッサム市の治安を守り切れません。
かといって、バットマンたちも犯罪者に対して暴行を加えているわけで、不法行為ではあります。また、バットマン「的」な活動をする集団がほかに出てくる可能性もありますし、そういった集団が暴走する可能性も――と考えた時、「治安の維持に貢献している限りは黙認する、ただし殺人を犯さないことを絶対の条件とする」というのは妥協点としてちょうど良さそうです。
結果としてバットマンの「不殺」のポリシーは、ゴッサム市警との共存にもつながっていったのだなと思いました。バットマンは警察側の事情を考えて不殺になったのではないと思いますが。