2020年11月29日日曜日

Justice League Dark (2018-) #24-#28 感想その2 ――ザターナとザターラ――

※このシリーズのこれまでの感想はこちらをご覧ください。

 Rebirth期Justice League Darkの#28 (感想はこちら)、Upside-Down Manとの戦いではザターナとその父ザターラがゆっくり話すひと時が生まれました。この記事ではザターナと父ザターラの歩みに思いを馳せつつ、ザターナの今後についても想像したいと思います。

 なお、ザターナの登場作品についてネタバレもしていますのでお嫌いな方はご注意ください。 

 

 

 そもそもザターナはイベントZatanna's Search (感想はこちら、なおこのイベントは初めて複数の連載誌にまたがって行われたイベントらしいですよ)で初登場しました。この時の彼女の役割は「お父さんが行方不明になったので一緒に探してほしいとヒーローに依頼する娘」でした。

 ザターナの父であるJohn Zatara (ジョン・ザターラ)はDCコミックの最初期から登場しているマジシャンでしたが、その娘であるザターナは最初から「親思いの娘」というキャラクターづけで登場してきたことになります。

 

 その後父のザターラはヒーローとしての活動からは引退し、娘が活躍し始めるようになります。

 

 ただ、ファンとして正直なことを言わせてもらいますとザターナは古くから登場しているキャラクターのわりにあまり掘り下げて描かれたことがないように思います。

 ザターナが関係した出来事で、その後のコミックでも取り上げて語られるようになった(程印象が強かった)のは

 ・Swamp Thing #49-#50 (感想はこちら)における父ザターラの死

 ・Identity Crisis (感想はこちら), JLA #115-#119 (感想はこちら) で描かれた記憶改変事件

 

 の2つです。ただし2011年のNew52期開始に伴う設定変更以降、Identity Crisisの件はなかったことになっているのかコミックの中で取り上げられることがないので、2020年現在、ザターナについて昔のネタを引っ張り出して描こうとすると大体ザターラの死の話になってしまう、という傾向になっているように思います。

 

 

 Swamp Thing #49-#50で描かれたザターラの死は、ザターナにとっては悪夢のような出来事でした。というのも、

 

 ・当時ザターナが付き合っていたJohn Constantine (ジョン・コンスタンティン)が厄介な仕事を手伝ってほしいと言いに来る

 ・父ザターラはザターナが手伝うことを反対する

 ・ザターナは父に反発し、コンスタンティンを手伝うことを決める

 ・仕方ないので父もついてくる

 ・厄介な仕事の中で、ザターナの命が危機にさらされる

 ・父ザターラがザターナの身代わりになって死ぬ

 

 という流れだからです。ザターナにとっては、自分が軽率なことをしなければ良かったという後悔しか生まれない展開です。この作品以降、ザターナの無邪気さがやや減ったような気がしています。

 

 ――とは、いうものの。

 2011年の設定変更前やコメディでは、ザターナは結構気軽に魔法関係のアドバイスを求めて父ザターラの幽霊を呼び出していて、呼び出されたパパも結構楽しそうだったりします。たとえばBlack Canary and Zatanna: Bloodspellでの一場面はこんな感じです(下図)。

 

 (Black Canary and Zatanna: Bloodspellより。左が父ザターラ、右が呼び出したザターナ。Writer: Paul Dini, Artist: Joseph A Quinones Jr., DC Comics)


 とはいえ、Justice League Darkなどのシリアス寄りの作品では父ザターラの死はやはりザターナ(とコンスタンティン)に重くのしかかっています。たとえばNew52期 Justice League Dark (感想はこちら)では、コンスタンティンとザターナが付き合えない理由として「コンスタンティンが父ザターラを殺したようなものだから」というのが挙げられています。これ自体は、それはそうだろうなと思えますね。

 

 2018年から始まったRebirth期Justice League Darkは、父ザターラの死にまた新しい解釈を一つ加えました。それは、「実はコンスタンティンはずっと父ザターラの手ごまとして動いていて、死の原因となった『厄介な仕事』ですらザターラが仕組んだことだった」というものです。

 これで一気に、事態の印象は変わります。

 

 ザターラは、自分が「厄介な事件」の中で死ぬことも、そして遺された娘ザターナが自分を探すために頑張ってヒーローとして成長して、最終的に「厄介な事件」の張本人であるUpside-Down Manを倒すまでになるだろう……ということもすべて計算していたのかもしれません。

 

 いや、そこまで将来のことは計算しきれないんじゃない? と思うものの。Justice League Dark #28で、最終的な強さは結局"Will"や"Faith"である、という結論に落ち着いたところを見ると、父ザターラの娘に対する信頼が最終的な勝利のカギだったということになるのかもしれません。

 

 ザターナという一人の人のことを考えると、父親が自分に黙って勝手にいろいろな計画を立てて死んでしまった――というのはショックでしかないだろうと思いますし怒っていいと思います。

 ただ、Upside-Down Manを倒した後に父娘でゆっくり話し合う時間を持つことができ、成長した姿をお父さんに見せることができたというのはこれまで頑張ってきた大きなご褒美をお父さんから貰ったようにも思います。

 

 #28のラストで成仏――というか、死者の魂が行くしかるべきところに向かったと思われる父ザターラですが、ザターナはこれからどうするのか、というのがファンとしては気になるところです。

 胸に引っかかっていた大きな罪悪感がなくなったことで、ヒーローとしてどんな道を歩んでいくのか。ザターナ自身、最初から「娘」ポジションで登場したためか、ヒーローチームに参加していると何となく「妹分」といった印象が拭えないのですが、たとえば若手のヒーローと接することでまた違う面を見せることができるのではないか――と思うのです。

 

 また、コンスタンティンとお付き合いすることへの心理的なハードルはだいぶ低くなったはずなので二人の関係が一気に結婚まで突き進んでいく可能性もありますね。問題はコンスタンティンの素行だけです。