DCコミックス界における魔法を使うヒーローたちの活躍を中心に描くJustice League Darkは、Otherkindsと呼ばれる古来の魔法の使い手の襲来と彼らとの戦いを描いています。Otherkindsの代表的な存在であるUpside-Down Manとの戦いがついに決着の時を迎えました。
Written by: Ram V.
Art by: Amancay Nahuelpan
発行年 2020年
公式サイトはこちら。
Otherkindsの襲撃により混乱した魔法の世界の秩序を少しずつ立て直していったJustice League Dark。同時に、Zatanna (ザターナ)にはやらなければならないことがあった。それは、死後Upside-Down Manに囚われ拷問を受けているはずの父ザターラを助け出すことだった。研究を重ね、Upside-Down Manのもとに行こうとする彼女にWonder Woman (ワンダーウーマン、ダイアナ)をはじめとするJustice League Darkのメンバーは協力する。そしてついにUpside-Down ManとJustice League Darkとの対決の時を迎えるのだった――というのがあらすじです。
あらすじを読めばわかる通り、ザターナとその父ザターラの関係にスポットライトが当たったエピソードでもありますので、大いに語りたいところですが長くなりそうなのでザターナと父ザターラについては別記事にしました。こちらもぜひお読みください。
さて。
このRebirth期のJustice League Darkの物語は、メインライターにTynion IV氏を据えて始まり、#20からはRam V氏がメインライターとなっています。筆者はRebirth期Detective ComicsでのTynion氏の物語(感想はこちら)が大好きでしたし、Detective ComicsがそうであったようにJustice League Darkもきれいに大団円になるといいなと思っていました。途中でRam V氏にライターが交代した際、あまり馴染みがなかったこともあって少し心配になってしまっていたのですが心配は無用でした。見事な大団円を見せてくれました。Tynion氏が良いスタートを切らせた物語を、見事に深化させてゴールにたどり着いたという印象です。
ラスト付近については下の方のネタバレを含む感想で書きますが、とにかくメンバーみんなが頑張った! という感想になるエピソードでした。
また、このJustice League Darkでは、Otherkindsの襲来をきっかけに秩序の壊れる魔法の世界を描くことで、逆に「DCコミックにおける魔法の世界とは」ということを描こうとした物語だと思うのですが、終わってみると「これまでの秩序が崩壊することで様々な勢力が自分の利益を得ようと動く話(そしてそれをなんとか落ち着かせるJustice League Dark)」という、戦国時代のような話として読むこともできるのだなと思いました。
そう思うと、腹に一物あってOtherkindsを積極的にこの世界に招き入れたDr. Fateをはじめ、CirceさんやRotなどそれぞれの事情や野望が描かれていた群像ものの作品だったと言えるのかもしれません。
以下、ネタバレを含む感想です。主に#28(最終話)について。
魔法とは何か? と#19(感想はこちら)で聞かれたとき、ダイアナはこう答えたのでした。
"MAGIC IS WONDER. MAGIC IS HORROR. MAGIC IS EVERYTHING AND NOTHING. IT IS WHAT YOU WILL IT TO BE. IT IS WHAT IT WIILS YOU TO BE."
「魔法は、驚異。魔法は、恐怖。魔法は全であり無。魔法はあなたが望むものになるし、魔法があなたのことをこうあってほしいと望む姿」
何となくわかったような気になる答えなのですが、#28ではもっとストレートにわかりやすく、「魔法とは意志である」ということが表明されます。
#28でザターナはこういいます。
"NO...THE TRUE MAGIC IS IN HOLDING THE CORPSE AND WILLING ITS HEART TO BEAT AGAIN."
"TO POUR BELIEF INTO THE WORDS."
「いいえ……本当の魔法とは死体を抱いて、その心臓がまた動き始めるように願うこと」
「信じることを言葉の中に込めること」
すなわち、魔法とはそのものずばり「こうあってほしいと強く願うこと、こうあるはずだと信じること」だと表現しています。Upside-Down Manは強大すぎてとても普通では太刀打ちできない……と思われていましたが、事ここに至って意志の力でUpside-Down Manを倒せるかも、という非常に王道的な展開になっていきます。
ザターナの言葉を裏付けるように、Justice League Darkのメンバーもそれぞれのやり方で全力を尽くし、最終的にUpside-Down Manは封じられるのでした……という展開になっていきます。
魔法での戦いですと機転を利かせた方が勝ち、みたいなことになることもあるのですが(このシリーズでもたとえばvsヘカテ戦はそうでした)、大変爽快なラストでした。
さて、この作品を読んだザターナファンは当然ザターナと父ザターラに注目せずにはいられません。それについてはこちらの記事をご覧ください。