2020年8月1日土曜日

Young Justice Book One 感想

 最近Wonder Girl(ワンダーガール、キャシー・サンズマーク)の登場するコミックを読んでいます。彼女の所属するヒーローチームと言えばTeen Titans...と思っていたら、最初に所属したチームの名前はYoung Justiceだったらしいので1巻を読んでみました。
 なお同名のアニメシリーズがありますが、2010年から放映が始まっているようなのでコミックの方が先だったようですね。
 
 
【基本情報】
Writers: Various, Daniel Curtis Johnson, Todd Dezago, Peter David
Artists: Todd Nauck, , Craig Rousseau, Alé Garza, Mike McKone, Humberto Ramos
Cover by: Lary Stucker, Todd Nauck
発行年 2017年 (連載されていたのは1998年-1999年頃)

公式サイトはこちら。



 1巻ということもあり、チームの成り立ちから説明してくれます。チームの基礎になるのはRobin(ロビン、ティム・ドレイク)、Superboy(スーパーボーイ、コナー・ケント)、Impulse(インパルス、バート・アレン)の3人です。このメンバー、Teen Titans by Geoff Johns (感想はこちら)やNew52期のTeen Titans (感想はこちら)を思い出させるものがありますね。ここにワンダーガールも加わっていくわけですが、DCコミックスの世界ではこの辺りは割といつも同世代っぽい設定なのかな? と思います。
 
 まず初めに、大人が住む世界と子供が住む世界が分かれてしまった――というところから物語は始まります。事態の真相がつかめないまま、大人ヒーローであるJustice League、若手ヒーローであるロビンとスーパーボーイとインパルスの三人組がそれぞれの世界で解決策を探っていきます。
 
 この時の三人の活躍が素晴らしかった、というわけで事件が解決したのちに三人はチームを組んで行動することをバットマンたちから認められます。なおチーム名はJustice League Juniorという案がありましたが、Young Justiceに落ち着きます。Juniorよりこちらの方が格好いいのでしょうか。
 
 さて3人で活躍をつづけた後、女の子のメンバー(ワンダーガールやArrowette)を加えて活躍の場は広がっていきます。ワンダーガール達が加わる前には彼女たちのオリジンの説明も入る親切設計です。ちなみにワンダーガールのオリジンは、Wonder Woman by John Byrne (感想はこちら)のエピソードをベースにしているようです。
 
 随所で描かれる、「ワンダーガールはワンダーウーマン(ダイアナ)や初代ワンダーガール(ドナ・トロイ)のことを尊敬している」という場面がとてもよかったです。この頃ワンダーガールはドナ・トロイから彼女が昔身に着けていたコスチュームを譲り受けているのですが、「汚しそうで着れない、私自身がもっとこのコスチュームにふさわしくなってからでないと」と言っていたりします。
 読んでいて、どうしてNew52期からはドナ・トロイとワンダーガールの関係がなくなってしまったんだ――という気持ちになりました。
 
 また子供ヒーローたちの話ということを生かしてか、メンバーの保護者達による保護者会も開催される(※本当です)など、楽しく読むことができました。
 
 そんな中、非常に強く印象に残ったのは彼らと同世代の犯罪者、Harmが登場するエピソードです。以下、ネタバレを含む感想です。エピソードの最後までネタバレしています。

 

 ***ここからネタバレ***


 
 Harmは17歳ですが、昔から乱暴だったらしく最近は両親も手に負えなくなっているという設定で登場します。彼と同じ家に暮らす両親が彼におびえている様が非常にリアルでした。警察に突き出せば、というのも考えるところですが、彼は「すぐに脱獄する」と主張しますしアメコミの犯罪者たちはわりとすぐ脱獄しているので説得力はあります。
 
 彼はヒーローたちの能力を調べ上げ、Young Justiceと対決、一人で互角と言っていいほどに渡り合いますが戦いの中で爆発が起き行方が分からなくなります。チームのメンバーはとりあえず引き上げますが、読者としては「まあどうせHarmは生きていてまた登場するんだろう」と思うことになります。
 
 確かに彼は生きていて、すぐにその姿は描かれます。彼は自分の家に帰るのですが、そこで覚悟を決めた父親に撃たれ、殺されることになります。
 思いつめた父親の顔と、困惑するHarmの顔が印象的でした。
 そしてこの場面を読んだとき、「どのヒーローもこの家族を救うことはできなかったのだな……」という気持ちになりました。
 
 このYoung Justiceは若手ヒーローを中心にしていますし、スーパーボーイやインパルスの性格のおかげもあって全体的に陽気なお話です。それでもこのHarmのエピソードだけは、ずっしりとした読後感がありました。 またHarmのエピソードの結末にヒーローは誰も関わっていません。リアルな世界からやってきたHarmが、フィクションの世界のヒーローたちと少しだけ関わった後にまたリアルな世界で死んでいったと、そんな印象のエピソードでした。