2005-2011年に連載されていたSupergirl誌オムニバス版の第三巻を読みました。この巻ではこれまでとは違う新しい展開を読むことができました。
Written by: Fabian Nicieza, Kurt Busiek, Kelley Puckett, Geoff Johns
Art by: Renato Guedes, Lee Ferguson, Ray Snyder, Drew Johnson
Cover by: Ray Snyder, Drew Johnson
発行年 2017年 (連載されていたのは2007年頃)
公式サイトはこちら。
Vol. 1、Vol. 2で描かれていたのはクリプトン星から脱出し地球に到着したSupergirl (スーパーガール、カーラ・ゾー・エル)が居場所を見つけよう、友達を作ろうとしてなかなかうまくいかない姿でした。
Vol. 2のラストで若手ヒーローチームTeen Titansがカーラに協力を求めに来た場面が描かれていましたので、このVol. 3はTeen Titansと一緒に戦うエピソードから始まるんだ……と思い込んで読み始めたところ。
なぜか未来のヒーローチーム、Legion of Super Heroesと一緒にいる場面から始まりました。どうも、この時期連載されていたTeen Titans誌にスーパーガールがゲスト出演したことがあったようで、Vol. 2のラストはその前振りだったようです。
少しがっかりしながらも気を取り直して読み進めたところ、Vol. 2で多少スーパーマンとの関係が良くなったと思っていたのにまた彼に反発するスーパーガール像に戻っていて、さすがにこれは同じところをぐるぐる回りすぎているのでは……と思い始めたところで、新機軸となるエピソードが入ってきました。
この巻で大事なエピソードは、
・スーパーガールがクリプトン星を脱出した時の様子が明らかになる
・スーパーガールがある一人の男の子の命を助けるために絶望的な挑戦をする
という二つだと思います。
まず最初の方ですが、スーパーガールがクリプトン星を脱出した時の話はある意味おなじみのものです。しかしそれが改めて語られることで、読者に強い印象を与えるものとなっていました。
スーパーマンは、赤ん坊の時に両親に宇宙船に乗せられ、クリプトン星を脱出しました。
一方、スーパーガールは高校生くらいの時に両親に宇宙船に乗せられ、クリプトン星を脱出しました。
さて、どちらがましでしょう。どちらがよりハードな経験と言えるでしょう。
……Supergirl誌を読んだから、ではありますが、スーパーガールの方がハードな経験をしたのではないかなと思いました。高校生ともなれば、両親が死ぬことも分かるわけで、当然「残って両親と一緒に死にたい」という発想だって出てきます。また、両親が期待する「クリプトン星の何たるかを残していってほしい」という期待はカーラに重くのしかかってくるわけです。右も左も分からないうちに地球に到着していたスーパーマンより、スーパーガールの方がしんどい思いをしていたのではないか、という気がしました。
また、この作品の中でスーパーガールがバットマンにその思いを少し打ち明ける場面があります。意外なシーンですが、確かに、目の前で両親と別れてしまったという経験はスーパーマンよりもバットマンの方が共感できそうです。
さて、こんな風に改めてスーパーガールの人生の過酷さを読者に印象付けたところで物語はある一人の少年へと移っていきます。彼はある事件の際にスーパーガールに助けられ、その時に「あなたは死なない」と言われたことで希望を持ちます。ところが実は彼は末期の癌を患っておりスーパーガールは両親から「息子に余計なことを言った」と責められることになるのでした――というエピソードです。
半分意地で、少年を助けるために奔走するスーパーガール。はっきり言ってそのやり方は賢明とは言えないのですが、一人の子供とその両親を救うために頑張るスーパーガールの姿は胸に刺さります。そんなスーパーガールの行動を、スーパーマンが優しく受け止めるのもいいな、と思いました。
スーパーガールは空を飛べたり怪力を使えたりするだけに、見せ場を作ろうとすると関わる事件はどうしても大きなものになりがちだと思いますが、ほんのわずかな人たちのために頑張る姿も魅力的です。
この本では一度両親との別れの場面に立ち返ることで、一人の人間としてのスーパーガールの魅力を描くことに成功したような気がします。
さて、こうした流れを踏まえてVol. 4以降はどのように展開していくのか。楽しみにしたいと思います。