2020年8月22日土曜日

Supergirl (2005-2011) Vol. 5: The Hunt for Reactron

※このシリーズの各巻感想はこちらをご覧ください。

  ずっと読んできた2005年-2011年のSupergirlシリーズですが、2020年8月時点でオムニバス版は5巻まで出版されています。というわけで5巻が最終巻に違いないと思っていたのですが、まだ続きがあるようです。通常の単行本の方でさらに続きが発売されています。今回読んだ、オムニバス版5巻は2019年に出版されたようですので今後さらに続きが出るのかもしれません。

 

【基本情報】
Written by: Sterling Gates, Greg Rucka
Art by: Matt Camp, Jamal Igle, Pere Perez, Various
Cover by: Michael Turner
発行年 2019年(連載されていたのは2009-2010年)

公式サイトはこちら。



 この巻に収録されているエピソードは次の3つに分かれます。Vol. 4のエピソードから直結して続いています。

 

・New Kryptonに住むクリプトン星人たちと地球人の確執

・Superwoman(スーパーウーマン)の復活

・Lana Lang(ラナ・ラング)の病気


 それぞれのエピソードに見どころがありますので、簡単に見ていきたいと思います。ネタバレもしています。


***ここからネタバレ***


・New Kryptonに住むクリプトン星人たちと地球人の確執

 Vol. 4に引き続き、スーパーガール(カーラ・ゾー・エル)はクリプトン星人と地球人の板ばさみになります。スーパーガールの幼馴染も登場し、穏やかだった少女時代が語られます。このシリーズではスーパーガールの穏やかな姿を見ることがあまりないため、微笑ましく読むことができました。

 とはいえ、現実は厳しく、スーパーガールは地球で殺人の汚名を着せられつつ父の仇を追うことになります。ここで協力してくれる地球人が、前巻からスーパーガールの保護者的に行動していたラナ・ラングと、スーパーマンの妻にしてジャーナリストのロイス・レーンです。

 ロイス・レーンは前巻でスーパーガールが殺してしまったスーパーウーマンの姉です。そのためスーパーガールに対しては複雑な思いを抱いているはずですが、比較的快く協力してくれます。レーン家の一員というよりも、ジャーナリストとしての行動が強く出ているのかもしれません。

 あるいは、クリプトン星人と地球人の対立に関しては彼女の父であるアメリカ軍の将軍、サム・レーンが暗躍しているのですがその姿に思うところがあるのかもしれません。


・スーパーウーマンの復活

 上述したように前巻でスーパーガールが殺したはずのスーパーウーマン(ルーシー・レーン)ですが、人知れず復活します。彼女は普通の人間で、特殊なスーツを着ることでクリプトン星人と同様のスーパーパワーを得ていたはずなのですが、クリプトン星人と同じ体質となって蘇ってきます。

 その過程で彼女が自分の半生を回想するシーンがあるのですが、これがひどい。

 ルーシー・レーンは姉と比べてそれほど優秀ではなく、常に姉の影に隠れていて父から見向きもされなかったようです。

 彼女が長じて軍に入隊してしばらくすると父はルーシーの「父に認められたい」という気持ちを利用して彼女をスーパーウーマンの任務に就かせます。彼は娘を利用することは考えていても愛してはいません。……すべて父であるサム・レーンが悪い、という気持ちになるエピソードです。

 ロイス・レーンは恐らくこうした真相に気づいていくことになると思いますので(それはSupergirl誌ではなくスーパーマンをメインにした雑誌で描かれたのかもしれません)いずれは父と対決するのだろうと思いますが……それにしてもひどい。アメコミの登場人物の親にまともな人はいないのか、という気持ちになるエピソードです。

 

・ラナ・ラングの病気

 ラナ・ラングは前巻からカーラと親しくなり、このシリーズでは彼女と心を通わせることのできた唯一の一般人(ヒーローではないという意味で)といえます。カーラがどんな目に遭おうとも、殺人の汚名を着せられようとも、彼女はカーラの味方であり続けました。

 そんな彼女ですが、しかし体調を崩すようになります。カーラがいろいろ大変な状況ですのでカーラには黙っていたのですが、実は彼女の身体はInsect Queenという敵に乗っ取られつつあったのでした……というエピソードがこの巻の最後で描かれます。

 実はInsect Queenの本当の目的はカーラであり、彼女に近づくためにラナを操ってカーラに優しく接するようにしたのだ、という話もInsect Queenからカーラに告げられます。カーラはそれを嘘だと一蹴し、他のヒーローたちと協力してラナを助けます。しかしラナが重大なことを秘密にしていたことに傷つき、ラナのそばを離れる決断をします。


 ……なんでだ、というのが読んでいて素直な感想でした。ラナが言う「カーラはいろいろ大変そうだから」というのは読者として非常に納得できる理由です。Vol. 4-Vol. 5と、カーラはずっと二つの星の板ばさみになっていたわけです。そんな状況にいるカーラに、自分の病気(しかもお医者さんにかかっても「良く分からない」という答えしか返ってこない)について話せるかというと、なかなか難しいと思うのです。

 ラナが病気のことを隠していたのはカーラへの思いやりだよ……と筆者は思うのですが、カーラは納得できない模様です。潔癖というのでしょうか。

 カーラがいなくなることでラナは本当に一人になってしまうようですし、こういう時こそラナのそばにいるべきでは……と思いますが。

 

 思えばこのシリーズでカーラはずっと迷走して、ずっと怒っていました。ラナという、絶対的にカーラの味方になってくれる人を得てようやくカーラも落ち着いたと思っていたのですが。一人になるカーラに、正直不安しか感じません。大丈夫でしょうか。