2020年8月19日水曜日

Supergirl (2005-2011) Vol. 4: Daughter of New Krypton 感想

※このシリーズの各巻感想はこちらをご覧ください。

 2005-2011年に連載されていたSupergirl誌オムニバス版の第4巻を読みました。この頃、Action Comics誌などスーパーマン関係の雑誌全体を揺るがす一大イベントが起きていたらしく、Supergirl誌もそのイベントに巻き込まれていきます。

 

【基本情報】
Written by: Sterling Gates
Art by: Various, Jonathan Sibal, Keith Champagne, Jamal Igle
Cover by: Joshua Middleton
発行年 2018年 (連載されていたのは2008-2009年頃)

公式サイトはこちら。



 物語はデイリー・プラネット社の記者、Cat Grantがスーパーガールのネガティブキャンペーンを張るところから始まります。当然ショックを受けるスーパーガール(カーラ・ゾー・エル)ですが、周りのみんなのアドバイスを受けてしばらくの間一地球人として暮らすことを考えるようになります。……って、1巻でも地球人として学校に行ってうまくいかないという展開になっていませんでしたっけ……と思っていたら。

 

 今回はスーパーマンの幼馴染、Lana Lang(ラナ・ラング)の姪、Linda Lang(リンダ・ラング)という人物になり、特に学校には行きませんでした。学校に行くどころではない大変な事態になってしまいました。

 

 これまでの話でずっと、カーラとスーパーマン(カル・エル)の出身地であるクリプトン星は滅ぼされ、クリプトン星の人々も二人を残して死んだとされていました。しかし、実は人々は生き延びていたのだ――という展開が描かれます。

 連載当時、一大イベントだったのは良く分かるのですが、これまでのSupergirl誌のストーリーと辻褄を合わせるために「実はカーラの父がスーパーマンを殺すように言ったのはカーラが見た幻覚だったのだ」といった展開になってしまったのは正直残念です。そこは何とか、「お父さんは本当に言ったのだけれど実はそれにはこういう真意があって……」という展開にしてほしかったものです。

 

 ともあれ、クリプトン星人たちは地球で暮らし始めます。リーダーはカーラのお父さんです。しかし地球人との間に軋轢が起こり、戦いの中でカーラのお父さんが殺されます。クリプトン星人たちは地球を去り、地球の近くの別の星に移住するのですが新たにリーダーとなったカーラのお母さんAluraは地球への敵意をむき出しにしてカーラを戸惑わせるのでした――という流れになっています。

 

 地球とクリプトン星の板ばさみになって悩むカーラの姿が意外でした。正直これまでの巻を見ていて、カーラが地球に馴染んでいたとは言い難かったため(一応ワンダーガールは友達ですが)、クリプトン星と地球が揉めたら迷わずクリプトン星につくような気がしていました。


 今回、ラナ・ラングがカーラにとってはシェルターのような存在になっていて精神的にも何かと助けてくれます。なるほどこういう人がいれば地球に愛着も湧くか――とも思うものの、ラナ・ラングとの関係はこの巻になって始まったものです。もう少し前から時間をかけてじっくり人間関係を築いてほしかったと思います。

 

 さて、この巻でもっとも印象的なのは覆面で顔を覆った謎のヒーロー、Superwoman(スーパーウーマン)が登場することです。彼女については以下のネタバレを含む感想に書きたいと思います。話の核心までネタバレしています。


 

***ここからネタバレ***



 スーパーウーマンは最初から「あなたの友達ですよ」という顔をしてカーラに近づいてきます。このシリーズでは一貫して「最初から友達顔で近づいてくる人は怪しい」ということが描かれているのですがスーパーウーマンもこの例に漏れません。カーラはこれまでに何回、友達顔で近づいてくる人に騙されたのでしょう……。

 

 スーパーウーマンは一見したところ「覆面で顔を隠しているクリプトン星人」に見えます。しかし実際は地球人で、クリプトン星人を排除するためにカーラに近づいたのでした――カーラの父が殺されたのもスーパーウーマンの力があってのことでした――ということが語られます。


 そしてその正体は! スーパーマンの妻、Lois Lane(ロイス・レーン)の妹であるLucy Lane(ルーシー・レーン)であることが終盤に明らかになります。

 ……え、ルーシー・レーンってSuperman: Lois Lane(感想はこちら)に登場した、優秀な姉と比べるとちょっと劣ってしまう妹ですよね……と思ったのですが。この作品では、軍人のお父さんと共に戦うことを目指した様子。クリプトン星人と同等の力を得るスーツを身に着け、戦っています。

 

 前述したように彼女はカーラのお父さんを殺すのに関与しました。それが露見し、怒ったカーラに殺されることになります。

 つまり、スーパーマンを中心に考えると妻の妹(ルーシー・レーン)がおじさん(カーラの父)を殺し、従妹(カーラ)が妻の妹を殺したという展開になっています。いつの間にか親戚内が血で血を洗う関係になってしまいました。

 カーラとロイス・レーンの関係はこの巻でもすでに厄介なことになっていますが、今後も厄介なままになりそうです。スーパーマンがどんなかじ取りを見せるのか、描かれることに期待したいです。とりあえず簡単な対策としては、「二人を会わせないようにする」でしょうけど。