※このシリーズの各巻感想はこちらをご覧ください。
2016年から始まったWonder Woman誌のVol. 3を読みました。このシリーズ、Vol. 1-9まで続いた後巻数をいったんリセットしてまたVol. 1から始めたので今回のVol. 3は実際には12巻目ということになります。
2016年に始まったVol. 1からの中で展開されてきた様々な要素を取り入れた、集大成と言えるような一冊になっていました。
Writer: G. Willow Wilson
Artists: Jusus Merino, Tom Derenick, Xermanico
Colorist: Romuo Falardo Jr.
Letterer: Pat Brossearu
Collection Cover artists: Jusus Merino and Romuo Falardo Jr.
発行年 2020年
公式サイトはこちら。
この巻に収録されているエピソードは大きく二つ、Wonder Woman (ワンダーウーマン、ダイアナ)がとうとうセミッシラに帰還しダークサイドの娘、Grailと再び対決する話と、神をも殺せる剣Godkillerを手にしたCheetah (チーター、バーバラ・アン・ミネルバ)とダイアナが戦う話に別れています。
そしてこの一冊を読む上で前提となる、これまでの巻で描かれてきたエピソードが以下のようなものになります。リンク先はこのブログの感想記事です。
・Vol.1- Vol.4 (Writer: Greg Rucka ): ダイアナはずっとアマゾン族の故郷であるセミッシラに帰れない状態が続いていた。ギリシア神話の戦神であるアレスはセミッシラの地下牢に永遠に幽閉されることになっている。ダイアナの友人であるバーバラ・アン・ミネルバは色々あってチーターへと変貌する一方、ダイアナの敵であるVereronica Cale (ヴェロニカ・ケイル)の娘Isadoreは神の呪いを受けセミッシラで暮らすことになった。
・Vol. 6-Vol.7 (Writer: James Robinson): DC世界のヒーローたちの最大の敵ともいえるDarkseidと、アマゾン族女性の間に生まれた娘であるGrail (グレイル)がセミッシラを襲うが撃退され、アレスと同じ場所に幽閉される。
・Vol. 1 (Writer: G. Willow Wilson): セミッシラの地下牢でグレイルがGodkillerという剣を見つけ、アレスを殺す。殺されたアレスは地下牢の外で再生するが、オリュンポスとセミッシラに激震が走り愛と美の女神アフロディテが良く分からないままに人間界にやって来る。
・Vol. 2 (Writer: G. Willow Wilson): セミッシラに起きた異変を探るべく、ダイアナはアフロディテの子供Atalantiadis (アトランティアディス)と、ウェイトレスのマギーと一緒に旅に出る。マギーは道中でダイアナのおばであるアンティオペの剣を見つけた。
……という流れの中、ダイアナたち一行はまずアンティオペと彼女についてきたアマゾン族たちに会い、さらに冒険を続けとうとうセミッシラにたどり着くとセミッシラはGodkillerを手にしたグレイルの支配下にあった。ダイアナの母である女王ヒッポリタは囚われの身となり、島に残るアマゾン族たちはグレイルに忠誠を誓っていたのだった――というのがこの巻の前半で描かれるエピソードになっています。
G. Willow Wilson氏がライターを務めている作品なので、同氏がライターを務めたVol. 1, Vol. 2の流れを継承しているのは当たり前です。が、その前のGreg Rucka氏やJames Robinson氏が描いたエピソードも可能な限り物語に取り込もうという熱意――もしかすると責任感かもしれません――を強く感じる一冊になっています。
さて、物語の鍵となるアイテムはGodkillerです。グレイルがセミッシラを簡単に支配できたのもこの剣の力が大きいと思われます。しかし、ダイアナとアンティオペが率いるアマゾン族たちとの戦いの中で剣は失われ、グレイルに忠誠を誓ったと思われたアマゾン・Nubia (ヌビア)の裏切りもありグレイルは王位を追われ、まだ彼女に従う少数の者たちと一緒に島のはずれに逃げのびることになります。
実はGodkillerはレックス・ルーサーの手によりチーターに渡されていたのでした――というのが物語の後半です。チーターは手始めに愛の女神アフロディテを殺し、世界を愛のない世界へと作り変えます。結果としてダイアナも戦いのモチベーションが弱まり、チーターに苦戦する展開となります。
キーアイテムがGodkillerなら、キーワードはサブタイトル通りLovelessなのだな、と思わせる一冊でした。アフロディテの死は単なる一人の死に留まらず、世界中の治安を一気に悪化させ(みんなに愛がなくなるから)、ダイアナとスティーブ・トレバーも別れることになります。ダイアナとスティーブに関してはここのところダイアナが忙しすぎ&スティーブを振り回しすぎで、アフロディテの死はきっかけに過ぎなかったような気もしますが……。
ダイアナのイメージに一番近くて、一番力を与えてくれそうなオリュンポスの女神はアテネだと今までずっと思っていたのですが、アフロディテの力も確かにダイアナには必要なのだなと思わせてくれる一冊でした。
そして、この巻でダイアナの敵となったチーターとグレイルはまた力を得て再登場しそうなところで、物語は次へと続いていきます。
なお、この巻はセミッシラとの行き来が可能になったことでベロニカ・ケイルにも再びスポットライトがあたった一冊でもありました。筆者は彼女のファンなので嬉しいのですが、彼女が能動的に動くというよりは利用されるポジションだったようなのが少し残念です。