2020年9月6日日曜日

Wonder Woman (2016-) Vol. 6: Children of the Gods 感想

※このシリーズの各巻感想はこちらをご覧ください。


  2016年から始まったWonder Woman誌の第6巻を読みました。ワンダーウーマンの物語はこの巻から新章に突入していきます。

 

【基本情報】

Written by: James Robinson
Art by: Various, Emanuela Lupacchino, Sergio Davila, Carlo Pagulayan
Cover by: Jenny Frison
発行年 2018年

公式サイトはこちら。


 誰かがギリシア神話の大神であるゼウスの子供たちを殺している――というところから物語は始まります。Wonder Woman (ワンダーウーマン、ダイアナ)はアマゾン族の女王であるヒッポリタ女王とゼウスの子ですので、他人事ではありません。

 ゼウスの子供の一人でありギリシア神話最大の英雄でもあるヘラクレスもついに殺され、彼はダイアナに自らの遺産を託します。そしてダイアナに、双子の弟Jason(イアソン)がいることを告げるのでした。

 実はヒッポリタ女王はダイアナとJasonの二人を妊娠していたのですが、ゼウスの正妻であるヘラの嫉妬から子供を隠すため――ダイアナは女の子なのでアマゾン族の島にいても目立ちませんが、男の子は島にいればいやでも目立つということから――生まれたばかりの彼を人間世界に送り、ギリシア神話の世界でアルゴ船の冒険に参加した英雄、Glaucusに託したのでした。

 実はゼウスの子供たちを倒していたのはDCコミックス界でも最強レベルの悪役Darkseidの娘、Grail(グレイル)であり、Justice Leagueとの戦いで幼児になってしまった父を元のように成長させるために古い神――ゼウスのエネルギーを必要としていたことが明らかになります。

 ワンダーウーマンはJasonと協力してグレイルを倒そうとするのだが――というのがあらすじになっています。

 

 と、この巻ではJasonという人物の存在をワンダーウーマンに知らせ、彼の半生を語るというのが主な内容になっています。

 セミッシラ島で生まれた男の子の話としては、New52期 Wonder Woman誌 (感想はこちら)で語られたアマゾン族の闇の話があります。アマゾン族は娘たちと息子たちを産んでいたのだが、息子たちはヘパイストス神のもとへと追い出し娘たちだけを島に残したという話です。どうも、2016年からRebirth期が始まるに伴いなかったことになっている模様です。確かにあの話は、後のライターが処理に困りそうな話ではありました。

 

 ……ということは、Donna Troy (ドナ・トロイ)がNew52期に犯した最大の罪もなくなっていそうですね。

 

 

 さて。

 

 この巻の一番の見どころは、Jasonの屈折した心理だと思います。

 そもそも今、世界中に英雄(ヒーロー)としてその名をとどろかせているゼウスの子はダイアナのみです。かつての英雄、ヘラクレスですら過去の行いに恥じるところがあると言って人目を避けた暮らしをしています。


 Jasonは養父であるGlaucusから、自分の出自を隠してひっそりと暮らすように教えられました。それはJason自身を守るためです。しかし、一方では自分の姉妹が華々しく活躍しているわけです。Jason自身が自分のことを「日陰の身」と思ったとしても、それはやむを得ないでしょう。

 古今東西の様々な物語で描かれてきた、正妻の子と浮気相手の子の関係をダイアナとJasonの関係に重ねて見ることもできます。もちろん、二人の場合は両親が同じ双子なのですが、一人は堂々と暮らしているのに対しもう一人はひっそりと生きているという点で。

 

 そんなJasonの前に初めてダイアナが現れた時、果たして素直に家族の再会を受け入れられるものなのか? 堂々と生きている姉妹に対して悪感情を抱くことはないのか、むしろそれが普通ではないのか――といったところが見どころになっています。