2021年11月7日日曜日

JSA by Geoff Johns Book One- Book Two 感想 -運命の恋は厄介-

  Kendora Saunders (ケンドラ・ソーンダーズ)がヒーローHawkgirl (ホークガール)として活躍した最初のヒーローチームはJSAだそうです。1999年頃から連載されていたJSA誌にケンドラがホークガールになった経緯やチーム内での様子が描かれているようなので読んでみました。

 

【基本情報】
Writers: Various, David S. Goyer, Geoff Johns
Artists: Michael Bair, Stephen Sadowski, Marcos Martín, Jesús Merino, Carlos Pacheco, Various
Cover by:Mark Farmer, Alan Davis
発行年 2017-2018年 (単行本の発行年。連載は1999-2001年頃)


公式サイトはこちら (Book One)。


 JSA (Justice Society of America)というチームはDCコミックスの最初期に存在したチームのようなのですが、それをリバイバルしようというコミックになっています。ということで復活したJSAには、昔からのヒーローが高齢ヒーローとして参加しているパターンと、昔のヒーローの子供など関係者が参加しているパターンがあります。Black Canary (ブラックキャナリー、ダイナ・ランス)も参加していますが、彼女は元々のブラックキャナリーの娘というポジションでの参加になります。

 

 肝心のホークガール、ケンドラの設定ですがこれは相当にややこしいですね。以下、簡単にまとめます。まずは系図です。画像はクリックで拡大します。

 


 

 系図の左上の方にいるSpeed Saundersという人がケンドラの祖父にあたり、ヒーローたちとも友人でした。ケンドラの両親は殺され、ケンドラは自殺を考えるようになります。ある日ケンドラは自殺を図り死んだと思われましたが、息を吹き返します。生き返った彼女には祖父のいとこであるShiera Sanders、最初のホークガールの力が宿っておりケンドラはホークガールになったのでした――というのが基本設定です。ホークガールになったケンドラをJSAに紹介したのが祖父であるSpeedということになります。

 

 ちなみに初代ホークガールであるShiera SandersとHawkman (Carter Hall)の間の子、Hector Hallは魔術師Dr. FateとなってJSAにも参加しています。血縁関係がややこしいですね。

 さらに、もともとCarter HallとShiera Sandersはエジプトのクフ王と姫 (Chay-Ara)の生まれ変わりであり、エジプトの高僧Hath-Setに惑星サナガー由来のNth Metalのナイフで殺されたことで呪いがかかり魂が何度も何度も生まれ変わるようになったそうです。

 

 というところまでがBOOK ONEで明かされるのですが、さらにBOOK TWOで衝撃の事実が明かされます。

 

 実はケンドラは「死にかけたけれど生き返った」のではなく、「死んでしまってその体にShiera (元をたどればChay-Ara)の魂が入ってきた」そうです。今のケンドラは、ケンドラの記憶を持っていて自分がケンドラだと思っていますが実際はShieraで、Shieraの記憶がだんだん蘇ってきている段階のようです。

 

 うーむ。身体がケンドラでケンドラの記憶もあるなら、ケンドラは生きているのでは。ケンドラとシエラの魂が合体したということでいいんじゃないの? と筆者は思いますが、あくまでケンドラは死んでいるようです。ケンドラの自殺の前後で瞳の色が緑から茶色に変わったのは、目が魂を表す窓だからだそうで。

 

 さらにBOOK TWOの中盤でホークマンがチームに加入したことから、事態はややこしさを増します。ホークマンは現在のケンドラ=シエラだと信じているので、事情は理解しつつもケンドラに殴られて「いつも右パンチが素晴らしいな」とにやにやしたり、ヒーローの一人がケンドラと、

 

"YOU'RE LUCKY TO HAVE A GUY LIKE THAT, HAWKGIRL"

"HE'S NOT MINE."

「あんな人(ホークマンのこと)があなたのなんてラッキーね、ホークガール」

「私のじゃない」


と会話しているのを聞いて

"ALL YOURS, KID."

「君のだよ」

と言ってしまったりするわけです。


 自分は相手のことをそんなに思っていないのに、周りの人たちがやたら「カップル成立!」と盛り上がっている感じで正直言って面倒くさそうだなあ、と思いました。

 前世からの運命の恋人という設定が出てくる物語はそんなに珍しいものではないと思うのですが、まず現世でお互いの正体を知らないうちから惹かれあい、後々前世のことが分かる――という順番だから「前世からの運命だったんだ!」とロマンチックになれるのだなと思います。

 

 個人的には、ケンドラにはホークマン以外の人と恋愛をして結ばれてほしいものだと思いました。なんかもう、ホークマンとの運命を断ち切ってほしいです。とはいえ、Justice League of America(感想はこちら)でのロイ・ハーパーとの恋愛模様を見ていると、なかなか難しいのでしょうか……。