2021年11月20日土曜日

Green Lanterns (2016-) Vol. 6: A World of Our Own 感想 -それは地球の姿-

※このシリーズの各巻感想はこちらをご覧ください。

 Jessca Cruz (ジェシカ・クルズ)とSimon Baz (サイモン・バズ)、二人の新人グリーンランタンが活躍するシリーズの第6巻を読みました。これまでは地球周辺で戦っていた二人でしたが、地球を含むセクター2814全体の平和を守るための活動に入っていきます。

 

【基本情報】
Written by: Tim Seeley
Art by: Various, German Peralta, Carlo Barberi, Ronan Cliquet, Eduardo Pansica
Cover by: Brandon Peterson
発行年 2018年


公式サイトはこちら。



 いくつかのエピソードが絡み合って進行する物語になっているのですが、主軸となっているのは惑星Molと惑星の話です。惑星Molはその太陽が超新星となり、そのままでは住民たちがすべて死んでしまうため、ジェシカとサイモンは住民たちを惑星Ungaraへと避難させます。これは惑星Ungaraの指導者が自ら申し出たことだったのですが、Molの住民たちを難民として受け入れたUngaraでは難民の排斥運動が起きるようになります。

 

 彼らが唱えるのは"Anti-Universalism"です。Green Lanternは多くの星の平和を守るために活動し、一つの星の人々を助けるために他の星の人々に協力を依頼することもあるようなのですが、これは"Universalism"と呼ばれているようです。難民の排斥を求める人々は、「Ungara人のためのUngaraを」と"Anti-Universalism"を唱えるのでした。

 

 ――とまあ、コミックではありますが現実世界の問題をダイレクトに下敷きにして描いていることが良く分かる展開になっています。

 一方でジェシカとサイモンの就職活動の様子も描かれ、ジェシカは履歴書に4年間の空白があること、サイモンはテロリスト容疑での逮捕歴があることでうまくいかない様子が描かれています。

 ……これは余談ですが、アメリカでも履歴書に空白があると問題になるのですね。初めて知りました。履歴書の空白を気にするのは日本ならではの問題なのかと思っていました。

 

 それはともかく、Ungaraで難民排斥運動が起きていることを知ったジェシカは、介入するのをやめようとサイモンに告げます。状況が複雑すぎて、パワーで解決できる問題ではないからと。一方、サイモンはこう答えます。

"BACK HOME, PEOPLE DON'T TRUST US BECAUSE WE'RE TWO BROWN PEOPLE WITH BAD RESUMES."

"BUT OUT HERE? WE'VE BEEN ENTRUSTED TO WIELD THESE RINGS. WE CAN MAKE UNGARA A BETTER PLACE. WE CAN MAKE SURE THE MOLTIES DON'T DEAL WITH THE CRAP PEOPLE LIKE US DO ON EARTH." 


「家に帰ったら、みんな僕たちのことを信用してくれない。僕たちは褐色の肌で、履歴書が汚いから。」

「でもここではどうだ? 僕たちはこの指輪を託されているんだ。僕たちはウンガラをもっといい場所にできる。僕たちは地球で僕たちがやっているみたいに、モルの人たちが糞ったれなやつらに対応しなくてもいいようにできるはずなんだ」


 ということでサイモンはUngaraの問題に対応しようとし、成り行きでジェシカも残るのですが、正直この言い分はもやもやするなと思いました。なんだか、地球で自分たちが抱えている問題をUngaraとMolに勝手に投影しているように見えるのですよね。いや、確かにUngaraとMolの問題は地球で起きている問題を思い起こさせるのですが(そうなるようにライターが描いているのですが)、地球の問題は解決できないけどここでなら指輪の権威もあるし解決できるぞ! というように聞こえるのですよ。

 

 たとえば、Molの人たちを地球で受け入れるという選択肢はないのだろうか……と疑問です。きっと地球でも難民排斥運動が起きるでしょうが、地球出身のグリーンランタンが難民を受け入れるよう地球人を説得するほうが話としては筋が通っています。

 UngaraとMolに理想(しかも自分たちでも実現できていない)を体よく押し付けているのでは? と疑問です。

 せめて地球に戻ってから自分たちの就職問題を解決するために動いていれば良いのですが、UngaraとMolの問題を解決したところでこの巻は終わってしまいます。

 

 そのため、Green Lanternの権威が通じる他所の星では行動できるけど、正体を明かせないため権威が通じない自分の星では行動できないのでは――それはヒーローとしてはとても格好悪いのでは――という疑念が拭えません。

 

 Green Lanternsのシリーズ自体はまだ続くので、この後の巻でまたこの難民の問題が取り上げられるのかもしれないですが。

 

 なお、本筋と関係ないところで気になったのはサイモンが「ヒーロー専用デートアプリ」というのを使って女性と出会っていたことです。何なんだそのアプリ。誰が作ったんだ。