※このシリーズの各巻感想はこちらをご覧ください。
2016年からのWonder Woman誌の第8巻を読みました。6巻以降メインライターを務めてきたJames Robinson氏の物語はここで終わります。Wonder Woman (ワンダーウーマン、ダイアナ)の双子の弟、Jason (イアソン)が登場するエピソードも一旦終了です。
Written by: James Robinson
Art by: Emanuela Lupacchino, Jesús Merino, Stephen Segovia
Cover by: Jenny Frison
発行年 2019年
他誌のイベントで、神が地球に戻るようにと願ったらしいワンダーウーマン。もちろんギリシア神話の神のことを願っていたのだが、そんな彼女の願いが地球にDark Godsを呼び寄せてしまう。ワンダーウーマンは弟のJason、そしてJustice Leagueと共にDark Godsと戦うのだが――というのがあらすじです。
あらすじにするととてもシンプルなお話なのですが、実際にはワンダーウーマンがStar Sapphireたちの星であるZamaron星に行ったり、冒頭ではチーターやVeronica Caleといったワンダーウーマンの宿敵たちが登場したりと幅広い展開を見せます。
特にチーターは、Gerg Rucka氏のエピソード(Vol. 1-4)の後どうなったのか良く分からないでいたのですが、相変わらず可哀想な境遇だったことが判明しました。早く何とかしてあげてください……というか、それこそギリシアの神々の力でどうにかならないものなのでしょうか。
本筋であるDark Godsとの戦いではJasonがいいところを見せました。以下、ネタバレを含む感想です。
***ここからネタバレ***
前巻でJasonは謎の鎧を手に入れパワーアップしたのですが、実はそれはダイアナに渡すべき「ギリシアの神々の力を集めた鎧」であったことが明らかになります。しかしもう鎧はJasonの魂と結びついてしまっているので、ダイアナに返すこともできずJasonは鎧の力をフルに使いながらDark Godsと戦うことになります。
ということで、期せずしてダイアナと共に正義のために戦う機会を得たJason。
正直な話、この展開はちょっと残念でした。Jasonには自分の力で成長していって欲しかったと思います。ゆっくりで構わないので。
ギリシアの神々の力を使える鎧、というのも非常に安直なパワーアップのように思えました。
終盤、Jasonはヒーローらしく自己犠牲の精神を発揮します。しかしそれすらも、鎧の効果として見えてしまいます。便利アイテムでスーパーパワーを発揮できる展開なら、前巻でお母さんから貰った槍をフル活用してくれる方が良かったなと思うのでした。
さらに言うと、Star Sapphireたちと共にダイアナが戦った敵は「愛の中に不純な要素があればそこを突いて攻撃する」という敵です。
そのため、前巻のSilver Swanのエピソードを踏まえて「ダイアナが愛と思っているものは本当に愛なのか?」という問題に切り込んでくれるのかと思ったのですがこのお話の中でそこまで踏み込むことはありませんでした。ごく普通に、ダイアナの愛の力で勝てていました。
全体として、面白くなりそうな種がたくさんばらまかれているのに無難にまとめてしまった勿体ないお話、という印象の1冊になりました。