2019年12月28日土曜日

Wonder Woman Odyssey Vol. 1-2 感想

※Wonder Woman (2006-2011)の各シリーズの感想はこちらをご覧ください。

Wonder Woman Odysseyというシリーズを読みました。さまざまな事情でセミッシラを離れざるを得なかったWonder Woman(ワンダーウーマン、ダイアナ)が敵と戦い、元のセミッシラへの帰還を目指す――という物語です。
 
【基本情報】
Writers: J. Michael Straczynski, Phil Hester
Artists: Don Kramer, Daniel Horn, Eduardo Pansica, Allan Goldman, Eber Ferreira, Michael Babinski, Ruy Jose, Scott Koblish, Jay Leisten, Wayne Faucher, Marlo Alquiza, Alex Sinclair, J.H. Williams, III, Alex Garner, Michael Babinski, Travis Lanham, Travis Moore, Geraldo Borges
Color Cover by: Hi-Fi , Dave Stewart, Alex Sinclair, Alex Garner
発行年 2011-2013年

公式サイトはこちら。



 かなり異色な設定の物語です。簡単にまとめますと、
 
・ダイアナはアマゾン族の島、セミッシラのプリンセス。しかし幼いころにセミッシラに敵が襲来、ダイアナは島を離れて身を隠した。

・敵の襲撃時にダイアナの母、女王ヒッポリタと多くのアマゾン族は死亡

・成長したダイアナは敵を倒し、散り散りになったアマゾン族と共に故郷に帰るための戦いを始める

 という設定になっています。この作品が楽しめるかどうかは、上記の設定が受け入れられるかどうかがすべてという気がします。筆者は受け入れられましたので、セミッシラを襲撃した敵の謎が解明されたり、ダイアナの力が育っていく様子をわくわくしながら読むことができました。
 
 セミッシラ襲撃時に死んだはずのアマゾン族の一人、アルテミスが敵の手により甦ってダイアナを討とうとする――という展開も熱いです。果たしてダイアナは彼女を倒すことができるのか、見所になっていると思います。
 
 以下、ネタバレを含む感想です。
 

 

 この作品は上記のように設定が特殊なのですが、作中で「ダイアナという人物が経験しうる多種多様の人生の一つに過ぎない」と説明されているのが印象的でした。そして、その中から自分の人生を選び取っていくダイアナの姿も。
 ちなみにこの数々の人生についての説明をしてくれるのはDr. Psycho(ドクター・サイコ)で、ダイアナを助けるときにこうした話をしてくれます。通常の設定ではダイアナの敵として登場する彼ですが、本作のダイアナにはドクター・サイコが敵だった記憶がありません。どうして自分たちは敵だったのかと尋ねられた時に彼はこう答えます。
 

"BECAUSE THEN I... I WAS SOME SMALL PART OF YOUR LIFE. BECAUSE THAT WAY I... I COULD BE CLOSE TO YOU."


「そうすれば私は……あなたの人生の一部になれたから。そうすることで私は……あなたに近づけたから」
  
 これは恋というのでは……。スーパーヒーローに何度も絡んでいく敵の皆さんは、やはり歪んだファンと解釈したほうがいいのでしょうか。
 
 ともあれ、「ダイアナが経験し得る多種多様の人生」においてやはりダイアナはダイアナであるらしく、
 

"ALL YOUR LIFE YOU'VE BEEN TOLD YOU WERE MEANT FOR GREATNESS."

「すべての人生において、あなたはいつも偉大だった」 

 のだそうです。
 物語を最後まで読むと、ダイアナがこうした偉大さを持っているのは「女王ヒッポリタやアマゾン族の皆に育てられたから」ということを感じさせます。なるほど、確かに幼少期の教育がダイアナのバックボーンかもしれない……と思うと同時に、生まれたばかりのダイアナがアマゾン族とは全く関係のないところで育った場合の話も読んでみたいな、と思うのでした。もう既にそうした作品はあるのかもしれません。