2019年12月31日火曜日

Batman Eternal (2014-2015) Vol. 1 - Vol. 3感想

 DCコミックスが2011年に大規模な設定リセットを行い始まったNew52期ですが、この時期のSpoiler (スポイラー、ステファニー・ブラウン)の初登場がこのBatman Eternalらしいので読んでみました。そうしたら、スポイラーに限らず魅力的な女性ヒーローの活躍にあふれた作品でした。

【基本情報】
Writers: Tim Seeley, Kyle Higgins, John Layman, Ray Fawkes, James T Tynion IV, Scott Snyder
Artists: Various, Mikel Janin, Ian Bertram, Riccardo Burchielli, Guillem March, Emanuel Simeoni, Trevor McCarthy, Andy Clarke, Derek Fridolfs, Dustin Nguyen, Jason Fabok, Fernando Pasarin, R.M. Guera, Joseph A Quinones Jr., Andrea Mutti
Cover by: Jason Fabok, Clay Mann, Cliff Chiang
発行年 2014年-2015年

公式サイトはこちら。



ゴッサム市警本部長、James Gordon(ジェームズ・ゴードン)は幻覚を見せられたことで無抵抗の人間に発砲し、さらに地下鉄のコントロールを破壊することで死者多数の事故を引き起こす。そのため逮捕されたゴードンは有罪となり、地獄として悪名高いブラックゲート刑務所に収監されるのだった。
実はゴッサム市長と、ゴードンの後を継いだ新しいゴッサム市警本部長は5年前に追放されたはずのゴッサム市裏社会のかつてのボス、Carmine Falconeとつながっており、ゴッサム市は裏社会を牛耳ろうとする者たちのgang warの戦場と化すのだった――というのがあらすじです。

何が面白いと言って、読者がイメージする「事件の全体像」が全三巻の中で何度も変わるところです。ミスリーディングに気持ちよく騙されるタイプの作品です。
ゴッサム市では様々な事件が同時多発的に発生し、スケール間の大きな物語になっています。

長大なストーリーなだけに、様々な角度から見ることができる作品だと思いますが、筆者の印象に残ったのは「ゴッサム市は誰のものか?」という問いでした。ギャング団のボスたちがそれぞれに
"This is my city."
という意味のフレーズを口にします。
一方、最終的に語られるのは
"Gotham needs you."
というセリフであるわけです。ゴッサム市、ゴッサム市民は誰を必要としているのか。非常にきれいな回答をつけた作品だと思いました。

以下、印象的な女性ヒーローの活躍についてネタバレを含む感想です。




Spoiler(スポイラー、ステファニー・ブラウン)

上にも書いたようにこれがNew52期初登場作品でした。犯罪者の父が立てた計画を知ってしまい、父の仲間たちにつけ狙われる状態になります。そんな状態でも父の計画を阻止しようと苦慮する彼女の姿は、読んでいて可哀そうになってくるほどでした。
彼女の設定はNew52期以前と基本的に同じのようでいて、

  •  父が本当に危険な存在に(New52以前のお父さんはやや間抜け感がありました)
  •  母も信頼できない(New52以前のお母さんは娘のことを一番に考えてくれる人でした)
  •  バットファミリーや警察にも頼れない

という、かなりハードな状態になっています。結果として、彼女の笑顔は作品を通してほぼ見られない状態になっています。最終的に彼女はバットファミリーと思いを共有できるのか、一つの見どころだと思います。

Batgirl (バットガール、バーバラ・ゴードン)

あらすじにも書いた通り、本作は「ゴードン本部長が逮捕される」というとこから始まる物語です。娘であるバーバラ・ゴードンは父が逮捕されたことに激怒し、父を信じ、助けようとします。結果として、普段の冷静さを失い大暴走する展開に。
この時期、ディック・グレイソンやダミアンはいないらしく、彼女を止めるためにBatman (バットマン、ブルース・ウェイン)が派遣したのがRed Hood (レッドフード、ジェイソン・トッド)になります。普段ですと暴走するジェイソンをバーバラが止めるというパターンの方がしっくりくるように思うのですが、この作品では逆になっています。この二人のやり取りは、姉弟げんかという雰囲気があって微笑ましいです。

Batwoman (バットウーマン、ケイト・ケイン)

登場はほぼVol. 1に限られているのですが、印象的でした。2016年に始まったRebirth期以降はバットファミリーの一員としてカウントされているバットウーマンですが、この時期は

  • ・ヒーローであると認められている
  • ・実力も十分認められている
  • ・しかしバットファミリーではない

という立場のようです。上述したバットガールとレッドフードのごたごたの場面に偶然居合わせ、
「バットウーマンはファミリーの一員じゃないから客観的に判断できるはず」と裁定を依頼される展開に。
正直、姉弟げんかに巻き込まれて「勝手にやってろ」と投げ出さなかっただけ偉いと思います。この頃まだファミリーでないという特性をうまく逆手に取った展開だなと思いました。