2022年3月6日日曜日

Wonder Woman (2016-) Vol. 4: The Four Horsewomen 感想その1 -シリーズの総まとめ-

 ※このシリーズの各巻感想はこちらをご覧ください。


 Rebirth期Wonder WomanのVol.4(実質Vol.13)を読みました。このシリーズ、Vol.9まで進んだところで巻数を1にリセットして再スタートということをしているので本作は実質 Vol. 13です。13巻の長きにわたって連載されていたシリーズだけに、色々ともやもやしていた点もあったのですが、この本に収録されていたエピソードでかなりの部分すっきり解消したように思います!

 なお、公式サイトやAmazonの説明ではいかにもこの本にWonder Woman #750 (感想はこちら)の750号記念作品がすべて収録されているように書かれています。しかし実際にこの本に収録されているのはWonder Woman #750のごく一部ですので、#750を購入した人も安心してこの単行本を購入して大丈夫です。逆に言うと、750号記念作品を読みたい方は#750を買う必要があります。

 

【基本情報】
Writer: Steve Orlando
Pencillers: Jesús Merino, V. Ken Marion, Kieran McKeown, Jan Duursema, Max Raynor, Gleb Melnikov, Emanuela Lupacchino, Jack Herbert, Jheremy Raapack, Miguel Mendonca
Inkers: Vincente Cifuentes, Sandu Florea, Scott Hanna, Jan Duursema, Max Raynor, Gleb Melnikov, Ray McCarthy, Jack Herbert, Norm Rapmund, Miguel Mendonca
Colorists: Romulo Fajardo Jr, Hi-Fi, Gabe Etlaeb
Letterer: Pat Brosseau
Collection Cover Artists: Robson Rocha, Danny Miki, Brad Anderson
発行年 2021年


公式サイトはこちら。


 

この単行本に描かれたストーリーには3つの柱があると思っています。

(1) Cheetah (チーター、バーバラ・アン・ミネルバ)のキャラクターの再構築

(2) 真実を隠された人としてのPaula von GuntherとDonna Troy (ドナ・トロイ)

(3) アマゾン族自身の変化


 です。いずれについても感想を書きたいのですが、長くなるのでこの記事では(1)と(3)を取り上げ、(2)については次の記事に回したいと思います

 

(1) Cheetah (チーター、バーバラ・アン・ミネルバ)のキャラクターの再構築

 Rebirth期Wonder Woman誌では、チーターはGreg Rucka氏が手掛けたVol. 1-Vol. 4 (感想はこちら)の中で初登場します。

 初めはセミッシラを離れたWonder Woman (ワンダーウーマン、ダイアナ)の初めての友達であり、よき理解者でした。それが神々に翻弄される中でチーターの姿になってしまうわけで、筆者としては彼女の運命には同情しかありません。ダイアナは他のことにかまけていないで早くチーターを何とかしてあげるべき、とはずっと思っていました。

 

 一方、歴史的に見れば「チーター」というキャラクターはダイアナの敵として有名な存在でもあるわけで。Rebirth期Justice League誌(感想はこちら)では他のヴィランたちと混ざってノリノリでヒーロー打倒のために活動しているわけです。

 

 多くのDCコミックスファンが「チーター」に求めるものはヴィランとしてのチーターなんでしょうし、仕方がない……と思いつつも実になんとも、二つのチーター像がつながらないように感じていたのも事実です。

 

 このVol. 4でライターのSteve Orlandが提示したのは、「神を捨てた人であり、いまだに神を信仰するダイアナを目覚めさせようとしている」存在として再構築されたチーターの姿でした。

 なるほど、これなら当初ダイアナと友情を深めていたバーバラ・アンとダイアナを付け狙うチーターのキャラクターがそんなに違和感なく繋がります。

 

 ダイアナもまた、チーターを完全には否定しません。必ずしも神に従う必要はない、と考えているようです。二人が昔築いた友情が形を変えて微かに続いているようで、読んでいて嬉しくなりました。

 

 

(3) アマゾン族自身の変化

 この本の最終盤で描かれる出来事は、2022年3月のイベントTrial of the Amazonsにも深く関わってきそうです。このイベントに関して、DCコミックス社関連の公式アカウントのツイートがこちら。

 

 まず、これまでアマゾン族には地中海に浮かぶセミッシラ島に住むアマゾン族と、島を出て放浪を続けるBana-Mighdall (バナ・マイダル)と呼ばれるアマゾン族の二つの部族が存在することになっていました。

 もともとセミッシラ島にいたアマゾンの一部が女王ヒッポリタの統治に納得できずに島を出たという経緯があるらしく二つの部族は歴史的に仲が悪いのですが、更に第三の部族がいることが明らかになる――というのがこの本の終盤のエピソードです。

 

 さらにその過程でセミッシラのアマゾン族がバナ・マイダルのアマゾン族と和解を果たします。バナ・マイダルの女王であるFaruka IIが急にいい人化したような気がするのですが、まあ皆から女王に推されるような人ですから元からカリスマもあってバナ・マイダルのためにベストな方法を探れる人なのでしょう。たぶん。

 

 この和解に加え、アマゾン族自体が人間世界との行き来を認めるようになり、アメリカの東海岸、ニューイングランドにはアマゾン族の大使館も作られます。このあたりは2002年頃のWonder Woman by Greg Rucka (感想はこちら)での設定を思い起こさせますね。

 

 2002年頃に描かれていたアマゾン族の姿はダイアナとアマゾン族の黄金期ともいえるようなものでしたが、果たしてそのような時代が再び訪れるのでしょうか。



 なお、これまで書いてきた感想とは全く関係のない話ですがボストンに引っ越したダイアナの部屋が描かれているシーンがあります。スティーブ・トレバーやドナ、キャシー・サンズマークと連絡を取っていないことを反省するダイアナの姿が描かれているのですが、壁に大きく飾ってあるのがBatwoman (バットウーマン、ケイト・ケイン)の写真(絵でしょうか)に見えます。

 


 

 New52期Batwoman誌 (感想はこちら)で共闘した二人ですから友達になっていておかしくありませんが、なんでまたこんなに大きな写真を飾っているのでしょうね。筆者のようなバットウーマンファンへのサービスでしょうか。


※感想その2はこちらをご覧ください。