※このシリーズの各巻感想はこちらをご覧ください。
DCコミックス世界の若手ヒーローの活躍を描くコミック、Young Justice のVol. 3を読みました。若者たちが次々にチームに集まってきます。
Writers: Brian Michael Bendis, David F. Walker
Artists: John Timms, Scott Godlewski, Michael Avon Oeming, Mike Grell
Colorist: Gabe Eltaeb
Letterer: Wes Abbott
Cover by: John Timms, Gabe Eltaeb
発行年 2021年
Vol. 2でS.T.A.R. Labsの科学者の陰謀により別の世界に飛ばされてしまったSuperboy (スーパーボーイ、コナー・ケント)を助けるため若手ヒーローが集結してみんなで戦うよ! というのがメインのお話になっています。このほかに、Spoiler (スポイラー、ステファニー・ブラウン)、Wonder Girl (ワンダーガール、キャシー・サンズマーク)、Teen Lantern (ティーンランタン、Keli Quintela)をメインにしたエピソードがひとつずつ収録されています。
ワンダーガールについてのエピソードは後で語るとして、まずはメインのエピソードについて。
S.T.A.R. Labsの陰謀に対抗しスーパーボーイを助けるため、Impulse (インパルス、バート・アレン)が世界各地を駆け回って若手ヒーローの仲間たちを集めてきます。初期のYoung Justice (感想はこちら)でメンバーだったArrowetteもいます! 同じく初期メンバーだったSecretがいないのはちょっと残念ですが。何か事情があるんですかね。
さらに、31世紀の未来から来たインパルスの説明によりYoung Justiceの秘密も明らかになっていきます。これは、過去の世界に存在した初期のYoung Justiceは確かに存在したが、世界の変動により歴史が変わってしまった。それによりYoung Justiceというチームは消滅し、またスーパーボーイは別の世界へと囚われ存在が消えてしまったのだ――というものです。
この辺り、DCコミックスの歴史に伴うスーパーボーイの変遷については「アメコミ読書録」さんのこちらの記事に詳しいので、興味のある方はご一読ください。
一方、未来世界から来たバートは消えたYoung Justiceを探し回ってこの世界のこの時代に到着したということになっているんだと思います……たぶん。ちょっと設定が分かりにくいのですが……。
ともあれ、バートに呼ばれて集まって、ごく単純に「友達」になれる(※褒めています)若者たちの姿が爽やかでいいですね。おそらくライター陣は「これまで登場機会が限られていた若手ヒーローをとにかく出演させる」ということに注力したのだろうと思います。その結果として、登場してはいるものの影が薄いキャラクターがいるのは残念です。
もっとシリーズが続けば、様々なキャラクターにスポットライトを当てたエピソードが描けただろうと思うのですが。
そんななか、主役エピソードをもらっているワンダーガール。おじいちゃんであるゼウスに望まれていたPantheon (神々の殿堂)に入るのを断るため、仲間と一緒に古代の神と戦います。
なぜ彼女がPantheon行きを断るのかと言えば、本人によると
"WHY WOULD I BE PART OF SOMETHING SO NOT REAL OR HELPFUL TO OTHERS IN A WORLD FILLED WITH REAL STRUGGLES?"
「何で私がさほどリアルなものでもなく、この苦闘に満ちた世界で他の人の助けになるわけでもない何かになるの?」
というわけで、古代の神々の仲間になるよりはヒーローでいる方が人の役に立てると判断してのことのようです。ドライというか合理的というか。
2016年から始まったリバース期で彼女は割と出番が少なかったため、ワンダーガールが自分の出自をどう思っているかということについてここで初めて読者に示されたような気がします。以前にもあったのかもしれませんが。
そしてこんな風に彼女の気持ちを描かれると、ワンダーガールの母であるヘレナさんは神々の世界との関りについてどう思っているのか気になるところですね。考古学者でもあり、半神(ゼウスの息子)との間に娘を産んだというかなり珍しい人生を送っているので、古代の神々について思うところは多々あると予想できます。
1995年頃のワンダーウーマン誌 (感想はこちら)によく登場していたヘレナさん、今後登場してほしいものです。